写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●スマートデバイス向けではフルHD以上の高精細タイプが約半分まで伸長するシャープは7月7日、スマートフォンやタブレット端末向けを想定した中小型ディスプレイへの取り組みについて、説明会を開催した。

説明会では、スマートフォン向けの小型・高精細液晶、低消費電力や低温での動作などが特徴のMEMSディスプレイのほか、2014年6月に開発発表をした「フリーフォームディスプレイ」についての説明が行われた。

関連記事シャープ、ウェアラブル端末に最適な円形など形状自由なディスプレイを開発(2014年6月18日)

はじめに、ディスプレイデバイス開発本部 開発戦略統括 今井明氏が登壇。シャープのディスプレイ事業における開発、生産体制、中小型液晶の需要などの市場動向について説明を行った。

中小型液晶の需要動向について今井氏は、2013年に3.9兆円だったスマートフォンやタブレット端末向けが2017年には6.8兆円に伸長し、2013年に5,600億円だった車載・IA市場向けが2017年には7,800億円に伸長するというデータを示した。特に伸び率の大きなスマートフォンやタブレット端末向けでは、「高精細」としてカテゴライズされるフルHD(1,920×1,080ドット)以上の表示画素数を備えたディスプレイの構成比が伸長するという。今井氏は、スマートフォン向けでは2013年に台数ベースで11%だった高精細タイプが2017年には44%へ、タブレット端末向けでは2013年に20%から2017年には56%へとそれぞれ増加するとの見込みを示した。

シャープでは、2014年6月に三重第3工場でWQHD(2,560×1,440ドット)の中小型パネルを生産開始。亀山第2工場でも7月よりフルHDの中小型パネルを生産開始する予定だという。なお、三重第3工場で生産しているWQHDパネルは、スマートフォン向けのパネルとしては現時点で最高レベルの高精細さとのことだ。

中小型パネル技術の特性について今井氏は、比較表を見せながら「低温ポリシリコン(CGS/LTPS)は、中型にカテゴライズされるPCやタブレット向けのサイズまで大型化するには限界があり、中型向けとしてはIGZO(酸化物半導体)が適している」と説明する。

●フリーフォームディスプレイはデザインの革新を促す続いて、ディスプレイ開発本部 表示モード開発センター 所長の伊藤康尚氏がフリーフォームディスプレイについて説明を行った。フリーフォームディスプレイは、IGZO技術を応用することで、従来のディスプレイで表示領域の外周部に配置されていたゲートドライバ(駆動用回路)を、表示領域内に分散配置することで、額縁を極細にすることができる技術。この額縁の極細化により、自由な形状でディスプレイを設計できるようになっている。

伊藤氏は、「ディスプレイの常識を打ち破り、デザインの革新と用途拡大を促す」と強調。 一定の額縁幅が必要だった。それに大使、今回開発されたフリーフォームディスプレイでは表示領域内にゲートドライバを分散配置。額縁を極細にして、自由な形状でディスプレイを設計できるようにした。

伊藤氏は、フリーフォームディスプレイの開発の経緯について「2年前、将来の液晶技術についてどのような訴求価値を追求するかを社として検討した」とした上で、「画質などの機能的な部分はいずれ飽和すると考えた」と説明。そこで、次なる付加価値の拠り所をデザインに求める意見に落ち着いたという。

フリーフォームディスプレイは、ゲートドライバを画素内に分散配置することで、形状の自由度が高い。伊藤氏は、この技術の応用例として車載用のインストルメントパネルやセンターインフォメーションディスプレイを挙げ、「さまざまなアプリケーションにデザインの革新を促す」と、デザイン面での訴求力を強調した。

(道田哲史)