●Android Wearに感じること「IoT」や「ウェアラブル」がBuzzワードとして注目を集めるなか、今年秋の発表が噂されるAppleの腕時計型デバイス「iWatch」に業界の熱視線が注がれている。新製品が登場しては爆発的な人気も見られず埋もれていくスマートウォッチの世界でなぜAppleに注目なのかを考えてみたい。

米Googleが今年6月下旬に開催された開発者会議のGoogle I/Oで「Android Wear」に対応したデバイス群を初お披露目した。壇上では対応デバイスを使った各種デモが紹介されたが、正直なところ既存製品と大きな違いがみられず、筆者としてはあまり魅力を感じなかった。

理由はシンプルで、これまで大手のソニーやSamsungといったメーカーが出荷してきたスマートウォッチ製品と大きな違いがみられず、利用シーンも想像を大きく逸脱するものではなかったからだ。アプリやサービス開発者的にはAPIが整備され、プラットフォームが共通化されることで参入障壁が下がるというメリットがあるだろう。

一方で、過去1年以上にわたって大手やベンチャーを含む各社からスマートウォッチがリリースされていたにもかかわらず、さほど大きなブームにならなかった点で、それらをそのまま踏襲して登場したAndroid Wearが市場を大きく開拓する勢力になるとも思えない。開発者にとっても、可能性がどちらの意味でも未知数の市場にリソースを傾けるのは依然リスクだ。ゆえに現状のままでのAndroid Wearでは大きくブレイクできないというのが筆者の意見だ。

●その気にさせるAppleそれとは逆に、「iWatch」などの名称で噂されるAppleのウェアラブル製品には期待を抱いている。未開拓な市場の場合、ユーザーに対して「こういうシーンで利用できると面白いんじゃないか?」「生活のちょっとしたスパイスになるかもしれない」「自分も使ってみようかな」と思わせるようなモチベーション喚起の用途提案が重要で、このあたりの盛り上げ方はAppleのほうがうまいと考えているからだ。

最終的にできることはAndroid Wearと大差なくても、生活提案も含めてパッケージをユーザーに提案することで「その気にさせる」というのは非常に重要なことだ。Googleはエコシステム整備を重視しているように見えるが、いまひとつブレイクしない分野での起爆剤としてはApple型の生活提案のほうが共感を得て大きな反響を生むように思える。もちろん製品としての出来も重要で、最初は厳しい意見も多かったiPhoneがあれだけブレイクしたのも、決して高性能ではないスペックの中でWeb技術をうまく取り込んで快適に操作が可能だったのが大きいと考える。

新分野の開拓には「ちょっとしたハッタリ」や「煽り」、そして「確実な使いやすさ」の3つがポイントだ。その点で、今秋のAppleにはこの3つのスパイスを盛り込んだ新製品の発表を期待したい。

(Junya Suzuki)