決勝本塁打を放ったマイク・ナポリ【写真:Getty Images】

田中の判断ミスがヤンキースの1戦を犠牲にした

 ヤンキースの田中将大投手は28日(日本時間29日)のレッドソックス戦で9回2失点と力投したが、1-2で今季2敗目を喫した。この一戦で、決勝ホームランを打った相手のマイク・ナポリ内野手に酷い侮辱を受けたことが分かった。ESPNが「田中の判断ミスがヤンキースの1戦を犠牲にした」という見出しで特集している。

「マサヒロタナカにとって、成長曲線はまだ先がある。そして、適応期間はまだまだ終わったとは言えない。11勝3敗で防御率2・10。ア・リーグ新人王最有力候補でサイ・ヤング賞候補だが、土曜夜のヤンキースタジアムで、素晴らしいパフォーマンスはたった1球、たったの1つの決断で台無しになってしまった」。

 特集では田中の投じた一球にスポットライトを当て、こう記している。

 田中は9回2死走者なしで打席にナポリを迎えた。6年連続でホームラン20本以上を打っている強打者だが、2回に四球を選んだ以降の2打席は田中のスプリットに全くタイミングがあわずに空振り三振を喫していた。しかし、ルーキー右腕が勝負所で選択したのは、その“宝刀”ではなく、結果として痛恨の決勝ソロを食らった。

「前の2打席でマイク・ナポリを嘲笑っていたスプリットを投げることを控え、ファストボールを投げた田中の決断がヤンキースの試合を犠牲にした」

 記事では、その配球をを厳しく批判している。

 ナポリに痛打されたのは4球目。ブライアン・マッキャン捕手は1ボール2ストライクと追い込んでから真っ先にスプリットを要求したが、エースは首を横に振った。女房役は次にスライダーを要求したが、これにも田中は賛同せず、ファストボールを選んだ。だが、ナポリも速球を待っていた。この日最速となる154キロの高めへの速球を強烈なライナーで右翼スタンドに運ばれた。

ナポリ「オレに速球を投げてきた。なんて愚かだ!」

 田中にとっては痛恨の一球。決勝弾を放ったナポリは自軍のダグアウトに戻るとこう叫んだという。

「何て愚かなんだ。オレに速球を投げてきた。なんて愚かだ」

 ヤンキースの新たなエースに対して「idiot(愚か)」という侮蔑文句を2度も使い、勝ち誇っていたという。ヤンキースとレッドソックスは不倶戴天のライバルだけに、ア・リーグでトップクラスの成績を残している田中からホームランを打った喜びも加わったのかも知れない。

「ナポリの言葉は不快だろうが、彼の判断は正しい。たとえ、田中にとっては狙い通り外角高めへのピッチングだったとしても、あそこでファストボールを投げる根拠はない。ナポリにこの夜、2度も効力を発揮したボール(スプリット)を避ける理由はどこにもない」

 記事では田中の判断を激しく責めている。

 また、ジョー・ジラルディ監督は「彼はスプリットで多大な成果を収めてきた。だから、私には彼がどこに投げようとしたのか分からない。コントロールが甘くなるミスを犯した。それを受け入れるしかない。そこから学んで、成長すればいい」と、3人の先発投手が負傷離脱して危機的状況に陥る名門を救っている田中をかばっている。一方で、女房役のマッキャンは「田中のボールは常に狙い通りだった」とコントロールミスではないことを明らかにしたという。

 9回7安打1四球8奪三振。ソロホームラン2本を打たれたが、116球を投げ、ストライクは86球と制球も抜群だった。2連敗となったが、11勝3敗、防御率は2・0でともにア・リーグトップ。この日の力投で開幕から16試合連続でクオリティ・スタート(6回以上を自責3点以内)となり、1973年にスティーブ・ロジャース投手(元エクスポズ)が達成したデビューからのメジャー記録に並んだ。

 しかし、ヤンキースを救い、絶大な成績を残している田中ですら、わずか1球で厳しく批判される。地元紙ニューヨーク・デイリーニュースも「マサヒロ タナカはマイク・ナポリに1つの致命的なミスを犯し、ヤンキースのエースは愚か者と呼ばれる」と大見出しで、この1球を巡るドラマを特集している。順風満帆の“神の子”が辛辣なニューヨークのメディアと宿敵ボストンから浴びせられた初めての洗礼と言えるかもしれない。