LCB活用と調達購買のキャリアプラン/野町 直弘
重要なのはキャリアプランです。
昨年末のメルマガで私はこのような内容を書きました。
「最初の頃はまあそうは言っても日本企業のバイヤーの仕事がLCB活用に進むことはあまり現実的ではないと考えていましたが、ここ数年の状況を見てみますとLCB活用は従来考えていた以上に進んでいるようです。」
中国やインドなどのオフショアでのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の活用を各企業が取組み始めたのは2000年以降ではないかと記憶していますが、当初は本当に日本では考えられないような問題が多発していました。しかし近年オフショアBPOの活用を積極的に推進している企業さんのお話しをお伺いすると取組み当初のネガティブな反応が殆どないことがわかります。私が「LCB活用が益々進む」と考えたのはこのような背景があったからです。
それを証明するような新聞記事が先日、日本経済新聞の電子版に掲載されていました。「中国『人海入力』基地を見る 誤字率は0.01%以下」という記事です。詳細はWeb等で参照していただきたいのですが、内容としては中国のBPOでの作業は、その質や正確さは日本以上のものである。あるBPO企業での日本語読取業務の場合では誤字率がなんと1万字に1字(0.01%)以下であり、日本人の作業での誤字率(10%)に対して非常に正確である。日本企業の中国へのBPOはこれからは「間接業務」や「単純作業」を超えて拡大していくだろう。というもの。
この記事を読むと中国でのBPOが日本企業のコスト競争力を下支えしていることが分かります。現在はまだ調達購買関連業務はBPOの対象にしていない企業が多いものの今後は益々LCB活用が進展していくことでしょう。
このような状況下、日本のバイヤーは益々日本のバイヤーにしかできないことで
会社に付加価値をもたらさなければならない状況になっています。そうすると必ず出てくるのが「人材育成」です。多くの企業は「当社の人材育成はOJT主体です」とおっしゃいます。しかし、実態はOJTという名の下の「放し飼い」だったりするのです。前にも書きましたが、OJTは重要です。特に「関心を持たせる」「興味を持たせる」上ではOJTはとても効果的。しかし、それだけではいけません。
人材育成の方法は大きく4つだと言われています。?OJT?社内外でのオフJT
?自己研鑽?ジョブローテーション、しかし、ここには重要な視点が欠けています。
それはキャリアプランです。購買ネットワーク会の分科会である改革推進者勉強会でも指摘がありましたが、日本企業の場合調達・購買職を専門職として捉え入社時からずっと調達・購買部門に所属し、一時期他部門や海外で修行して、また調達・購買部門に戻る、と言ったキャリアの方と、そうでなく営業や生産部門、場合によっては技術部門から調達・購買部門に異動してきた、と言った所謂ゼネラリスト的なキャリアの方が同じ会社の中でも併存しているとのことです。(企業によっては他部門から不要な人材が集まってくる、なんて洒落にもならない企業もあるようですが。。)
ある調達関連の研究をなさっている方は業種や担当品目によってより専門的な知識が求められる調達人材とそうでなくゼネラルな知識や能力が求めれる調達人材に分かれる、という指摘をなさっていました。これもその通りだなと感じます。このように担当品目によっても求められる知識、スキルが異なるということも非常に興味深いです。
求められる知識、スキルが異なる人を育成するためにはそれにあったキャリアプランをいくつかのパターンで想定しておくことが必要となります。
例えば、各事業のCPO(チーフプロキュアメントオフィサー)候補には、専門職採用を行い、そこから何部門か経験させた上で、海外子会社の購買部長を経験させて、CPOを育成する。とか、より専門性が求められるバイヤーについては専門職採用でたたき上げる、もしくは、中途採用でエキスパートを求めていく、とか、ゼネラリストとして養成するのであれば、社内外での調整役としての能力を磨くために必ず若いうちに調達・購買部門の経験をさせる、等々。
何故ならキャリアが人を育てていく上で一番重要なことは間違いないからです。
その上でキャリアプランやキャリアを考える上で欠かせない視点はこういうこと。
「調達・購買業務遂行に必要な知識スキルとは何か」だけでなく「調達・購買業務を経験することで身に付けなければならない(身に付けられる)知識・スキルは何か」なのです。
拙著「はじめて読む知識 調達・モノを買う仕事」日刊工業新聞社の「はじめに」で私はこういうことを書いています。
『私の社会人生活のスタートはある自動車会社の原価・購買部門から始まりました。その当時は、毎日、業務に追われるだけであり「バイヤーがどうあるべきか?」など考える余裕もなかった。また、正直な話購買業務を面白いと感じたこともありませんでした。社内と社外に挟まれ、その調整に追いまくられる日々、コスト削減はしなければならないがネタもなければスキルもない、ウインーウイン等は言葉だけであり結局は利益配分の調整をしているだけ。たまにやりがいを感じることはありましたが、毎日追い詰められており、誰のために仕事をやっているのかわからない。これが実感です。
私は人と比べるとどんなことでも納得しないと前に進めない性格。諸先輩からは
「野町は要領が悪い!」と言われながらバイヤーの仕事をこなすのに一番必要なのは「要領の良さなのか?」とも思っていました。
その後、いくつかの会社で購買部門の立ち上げや購買関連のコンサルタントを経験していくうちに徐々にその考え方が間違っていたことに気がつきました。
調達・購買部門の仕事はビジネスパーソンとして必要な能力を育成するのに本当に役にたっていた、と感じる場面が多かったのです。社内外の調整役としての
コーディネーション能力、ファシリテーション能力、交渉力、バイヤーとしての
「モノ」や「会社」の「価値」を見極める目、これらの能力がバイヤーの経験を通じて知らず知らずのうちに育成されていたことに気がついたのです。 』
今読み返してみても全くその通りだなと感じます。
重要なのは何を身につけるか、なのです。
昨年末のメルマガで私はこのような内容を書きました。
「最初の頃はまあそうは言っても日本企業のバイヤーの仕事がLCB活用に進むことはあまり現実的ではないと考えていましたが、ここ数年の状況を見てみますとLCB活用は従来考えていた以上に進んでいるようです。」
中国やインドなどのオフショアでのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の活用を各企業が取組み始めたのは2000年以降ではないかと記憶していますが、当初は本当に日本では考えられないような問題が多発していました。しかし近年オフショアBPOの活用を積極的に推進している企業さんのお話しをお伺いすると取組み当初のネガティブな反応が殆どないことがわかります。私が「LCB活用が益々進む」と考えたのはこのような背景があったからです。
この記事を読むと中国でのBPOが日本企業のコスト競争力を下支えしていることが分かります。現在はまだ調達購買関連業務はBPOの対象にしていない企業が多いものの今後は益々LCB活用が進展していくことでしょう。
このような状況下、日本のバイヤーは益々日本のバイヤーにしかできないことで
会社に付加価値をもたらさなければならない状況になっています。そうすると必ず出てくるのが「人材育成」です。多くの企業は「当社の人材育成はOJT主体です」とおっしゃいます。しかし、実態はOJTという名の下の「放し飼い」だったりするのです。前にも書きましたが、OJTは重要です。特に「関心を持たせる」「興味を持たせる」上ではOJTはとても効果的。しかし、それだけではいけません。
人材育成の方法は大きく4つだと言われています。?OJT?社内外でのオフJT
?自己研鑽?ジョブローテーション、しかし、ここには重要な視点が欠けています。
それはキャリアプランです。購買ネットワーク会の分科会である改革推進者勉強会でも指摘がありましたが、日本企業の場合調達・購買職を専門職として捉え入社時からずっと調達・購買部門に所属し、一時期他部門や海外で修行して、また調達・購買部門に戻る、と言ったキャリアの方と、そうでなく営業や生産部門、場合によっては技術部門から調達・購買部門に異動してきた、と言った所謂ゼネラリスト的なキャリアの方が同じ会社の中でも併存しているとのことです。(企業によっては他部門から不要な人材が集まってくる、なんて洒落にもならない企業もあるようですが。。)
ある調達関連の研究をなさっている方は業種や担当品目によってより専門的な知識が求められる調達人材とそうでなくゼネラルな知識や能力が求めれる調達人材に分かれる、という指摘をなさっていました。これもその通りだなと感じます。このように担当品目によっても求められる知識、スキルが異なるということも非常に興味深いです。
求められる知識、スキルが異なる人を育成するためにはそれにあったキャリアプランをいくつかのパターンで想定しておくことが必要となります。
例えば、各事業のCPO(チーフプロキュアメントオフィサー)候補には、専門職採用を行い、そこから何部門か経験させた上で、海外子会社の購買部長を経験させて、CPOを育成する。とか、より専門性が求められるバイヤーについては専門職採用でたたき上げる、もしくは、中途採用でエキスパートを求めていく、とか、ゼネラリストとして養成するのであれば、社内外での調整役としての能力を磨くために必ず若いうちに調達・購買部門の経験をさせる、等々。
何故ならキャリアが人を育てていく上で一番重要なことは間違いないからです。
その上でキャリアプランやキャリアを考える上で欠かせない視点はこういうこと。
「調達・購買業務遂行に必要な知識スキルとは何か」だけでなく「調達・購買業務を経験することで身に付けなければならない(身に付けられる)知識・スキルは何か」なのです。
拙著「はじめて読む知識 調達・モノを買う仕事」日刊工業新聞社の「はじめに」で私はこういうことを書いています。
『私の社会人生活のスタートはある自動車会社の原価・購買部門から始まりました。その当時は、毎日、業務に追われるだけであり「バイヤーがどうあるべきか?」など考える余裕もなかった。また、正直な話購買業務を面白いと感じたこともありませんでした。社内と社外に挟まれ、その調整に追いまくられる日々、コスト削減はしなければならないがネタもなければスキルもない、ウインーウイン等は言葉だけであり結局は利益配分の調整をしているだけ。たまにやりがいを感じることはありましたが、毎日追い詰められており、誰のために仕事をやっているのかわからない。これが実感です。
私は人と比べるとどんなことでも納得しないと前に進めない性格。諸先輩からは
「野町は要領が悪い!」と言われながらバイヤーの仕事をこなすのに一番必要なのは「要領の良さなのか?」とも思っていました。
その後、いくつかの会社で購買部門の立ち上げや購買関連のコンサルタントを経験していくうちに徐々にその考え方が間違っていたことに気がつきました。
調達・購買部門の仕事はビジネスパーソンとして必要な能力を育成するのに本当に役にたっていた、と感じる場面が多かったのです。社内外の調整役としての
コーディネーション能力、ファシリテーション能力、交渉力、バイヤーとしての
「モノ」や「会社」の「価値」を見極める目、これらの能力がバイヤーの経験を通じて知らず知らずのうちに育成されていたことに気がついたのです。 』
今読み返してみても全くその通りだなと感じます。
重要なのは何を身につけるか、なのです。