シリーズ「営業フォーメーション変革」? CRM戦略とは/渡部 弘毅
企業戦略のパラダイムシフトにより、商品力の強化もさることながら、コミュニケーション力が企業の競争力の源泉として重要になってきました。そのコミュニケーション力を差別化することにより顧客を獲得・維持する戦略をCRM戦略といいます。
CRM(Customer Relationship Management)という言葉には様々な意味がこめられており、関与する立場によって解釈が違ってくるため、企業としてスコープが定まりにくい性質があります。事実、調査会社のレポートにおいてもCRM構築の半数以上は失敗に終わっているとも酷評されています。
しかしながら、CRMは戦略的にスコープを定めながら経営モデルとして導入すれば競争力を向上させることは間違いありません。
本投稿では、CRMを企業戦略の手法ととらまえてその意義を論じます。またそのCRM戦略の一環として本シリーズ投稿の主題である営業フォーメーション変革が含まれていることを解説します。
■ パラダイムシフト
従来、企業の戦略立案遂行にあたっては、事業戦略の立案、プロダクト戦略の立案、商品開発、マーケティング戦略立案、セールス、納入、サポートといった上流戦略から一連のプラン&アクチャルの繰り返しによる業務プロセスが遂行されてきました。そして、この一連の業務をいかに効率よくかつ効果的に実践できるかが競争優位の源泉でした。
本パラダイムにおいては、企業の優位性は商品の優位性によるところが大きく、いかに競争環境が少ない事業領域を早期に選択し、他社との差別化された商品を提供し、さらにマーケットシェア拡大と大量生産によるコスト削減効果狙っていくことが企業のおおきなテーマでした。
また、本パラダイムでは連続的な変化を前提とした先がよめる環境や市場を前提としており、いかに精緻なプランを立案しそれを確実に遂行に移し、実施進捗を管理していくかが焦点となっていました。本パラダイムをメイク&セル型パラダイムとも言います。
しかしながら、近年の市場変化を考慮すると、連続的かつ先をよめる環境および市場は少なくなってきており、一歩先が読めない不連続な変化が続く環境および市場が多くなってきています。そうした状況の中では、いかに先を読んだプランを立案するかの能力よりも状況の変化が生じた際に迅速に対応する能力が重要となってきます。本パラダイムのことをセンス&レスポンド型パラダイムと言います。
■ コミュニケーション力を企業競争力の源泉に
センス&レスポンド型パラダイムでは、商品力以外の競争力をつける必要があります。もちろんターゲットとする市場を決定して市場のニーズに合わせた商品を整備することは重要であり、必要な活動であることには違いありません。それだけでは競争力を維持することはできない、ということです。
その際の競争力の源泉は、コミュニケーション力です。商品の優位性でなく顧客とのコミュニケーション力によって商品を買い続けてもらうということです。もっと平たく言うと、商品が悪くても、プロモーション力や営業力や顧客サポート力等の顧客との接点において商品以外の価値を提供することによって買ってもらうということです。
スーパーマーケットや家電量販店等でポイントカードが盛んに発行されてます。これは、小売業における重要なコミュニケーション戦略です。
パソコンメーカーが顧客サポートセンターを強化するのもコミュニケーション力の強化です。耐久消費財は、購入時のみならず購入後のアフターサービスの質により、リピート購入に大きく左右します。また、サポートによい印象を持った顧客は口コミにより他の顧客にも好影響を与えます。最近のビジネス誌等でも、各社の顧客サポートのランキング特集企画もよく掲載され、ますます顧客サポート力が商品の売れ行きを左右するようになってきました。
ブランド力を向上させることも、コミュニケーション力の向上と言えるでしょう。コマーシャルによる認知度向上をはかったり、有名人の利用による信頼度の向上を図ったり、CSR活動によって企業信頼度のアピールなどです。はたまた、品薄状態をつくり乱売しないことで高級感を演出するなど、顧客とのコミュニケーション施策によって、顧客に商品の品質等の客観的な価値ではない主観的な価値を向上させ、企業や企業の商品を選択し続けたいという気持ちを高めます。
企業にとって、市場の変化により商品は変わっていきますが、顧客は変わりません。したがって顧客とのコミュニケーション力を向上させ、それを他社に対し差別化された競争優位の源泉にすることは、商品に左右されない普遍的な競争力を身につけることを意味するのです。
物あまりで、しかも顧客のニーズは千差万別化されそのニーズの変化が益々早くなり、良いものを作れば必ず売れるという時代が終焉した昨今では、コミュニケーション能力が重要になっているのです。
今まで説明した事例はいずれもコンシューマ相手のビジネスについての例となっています。これが法人ビジネスを実施している企業は、このコミュニケーション力があたりまえに重要なのです。営業力を強化するのは、コミュニケーション力を強化することにほかなりません。法人ビジネスの多くは、営業活動により顧客と直接コミュニケーション活動を実施しないことには、商談も生まれません。しかも一回ではなくいく度となく繰り返すコミュニケーションを通じてやっと商談がうまれます。その商談を醸成させて提案活動をしてようやく受注に至ります。受注して納品すれば終わりというわけではありません。納品後の顧客サポートは重要で、継続した受注を得るためにはお得意様としてのコミュニケーションを続ける必要があります。このコミュニケーション活動において顧客の満足度を得られない場合、競合他社の入り込む余地ができます。顧客とのコミュニケーションが蜜であれば競合他社の状況もすぐに察知でき、対抗措置がすぐにうてるのです。
このように、法人ビジネスの場合はコミュニケーション力の強化、すなわちCRM戦略の実践は、差別化というより生き残る上で必須といえます。法人営業の担当者に対して、「お客さまの関係構築を強化することは重要だ。もっとお客さまとのコミュニケーションを強化しろ」と唱えても、当たり前のことと思われるでしょう。
したがって、他社との差別化されたコミュニケーション力の向上とは、費用対効果の高いコミュニケーション力をつけることです。法人営業力の強化で早い手段は営業要員の増員です。営業マンを増員して顧客とのコミュニケーションの密度を上げることはできますが、差別化した競争力になっているとはいえません。競合他社と同じ営業要員で2倍のコミュニケーション力を養ってこそ、差別化された営業力と言えるでしょう。
■ まとめ
企業戦略のパラダイムシフトにより、商品力の強化もさることながら、コミュニケーション力が企業の競争力の源泉として重要になってきました。そのコミュニケーション力を差別化することにより顧客を獲得・維持する戦略をCRM戦略といいます。これは特に法人ビジネスでは重要かつあたりまえの考えです。
CRM戦略の中の一つの施策として営業力の強化があります。営業力の差別化した向上とは、他社より費用対効果の高い営業力を身につけることです。本シリーズ投稿では費用対効果の高い営業力の強化を営業変革として解説しています。
CRM(Customer Relationship Management)という言葉には様々な意味がこめられており、関与する立場によって解釈が違ってくるため、企業としてスコープが定まりにくい性質があります。事実、調査会社のレポートにおいてもCRM構築の半数以上は失敗に終わっているとも酷評されています。
本投稿では、CRMを企業戦略の手法ととらまえてその意義を論じます。またそのCRM戦略の一環として本シリーズ投稿の主題である営業フォーメーション変革が含まれていることを解説します。
■ パラダイムシフト
従来、企業の戦略立案遂行にあたっては、事業戦略の立案、プロダクト戦略の立案、商品開発、マーケティング戦略立案、セールス、納入、サポートといった上流戦略から一連のプラン&アクチャルの繰り返しによる業務プロセスが遂行されてきました。そして、この一連の業務をいかに効率よくかつ効果的に実践できるかが競争優位の源泉でした。
本パラダイムにおいては、企業の優位性は商品の優位性によるところが大きく、いかに競争環境が少ない事業領域を早期に選択し、他社との差別化された商品を提供し、さらにマーケットシェア拡大と大量生産によるコスト削減効果狙っていくことが企業のおおきなテーマでした。
また、本パラダイムでは連続的な変化を前提とした先がよめる環境や市場を前提としており、いかに精緻なプランを立案しそれを確実に遂行に移し、実施進捗を管理していくかが焦点となっていました。本パラダイムをメイク&セル型パラダイムとも言います。
しかしながら、近年の市場変化を考慮すると、連続的かつ先をよめる環境および市場は少なくなってきており、一歩先が読めない不連続な変化が続く環境および市場が多くなってきています。そうした状況の中では、いかに先を読んだプランを立案するかの能力よりも状況の変化が生じた際に迅速に対応する能力が重要となってきます。本パラダイムのことをセンス&レスポンド型パラダイムと言います。
■ コミュニケーション力を企業競争力の源泉に
センス&レスポンド型パラダイムでは、商品力以外の競争力をつける必要があります。もちろんターゲットとする市場を決定して市場のニーズに合わせた商品を整備することは重要であり、必要な活動であることには違いありません。それだけでは競争力を維持することはできない、ということです。
その際の競争力の源泉は、コミュニケーション力です。商品の優位性でなく顧客とのコミュニケーション力によって商品を買い続けてもらうということです。もっと平たく言うと、商品が悪くても、プロモーション力や営業力や顧客サポート力等の顧客との接点において商品以外の価値を提供することによって買ってもらうということです。
スーパーマーケットや家電量販店等でポイントカードが盛んに発行されてます。これは、小売業における重要なコミュニケーション戦略です。
パソコンメーカーが顧客サポートセンターを強化するのもコミュニケーション力の強化です。耐久消費財は、購入時のみならず購入後のアフターサービスの質により、リピート購入に大きく左右します。また、サポートによい印象を持った顧客は口コミにより他の顧客にも好影響を与えます。最近のビジネス誌等でも、各社の顧客サポートのランキング特集企画もよく掲載され、ますます顧客サポート力が商品の売れ行きを左右するようになってきました。
ブランド力を向上させることも、コミュニケーション力の向上と言えるでしょう。コマーシャルによる認知度向上をはかったり、有名人の利用による信頼度の向上を図ったり、CSR活動によって企業信頼度のアピールなどです。はたまた、品薄状態をつくり乱売しないことで高級感を演出するなど、顧客とのコミュニケーション施策によって、顧客に商品の品質等の客観的な価値ではない主観的な価値を向上させ、企業や企業の商品を選択し続けたいという気持ちを高めます。
企業にとって、市場の変化により商品は変わっていきますが、顧客は変わりません。したがって顧客とのコミュニケーション力を向上させ、それを他社に対し差別化された競争優位の源泉にすることは、商品に左右されない普遍的な競争力を身につけることを意味するのです。
物あまりで、しかも顧客のニーズは千差万別化されそのニーズの変化が益々早くなり、良いものを作れば必ず売れるという時代が終焉した昨今では、コミュニケーション能力が重要になっているのです。
今まで説明した事例はいずれもコンシューマ相手のビジネスについての例となっています。これが法人ビジネスを実施している企業は、このコミュニケーション力があたりまえに重要なのです。営業力を強化するのは、コミュニケーション力を強化することにほかなりません。法人ビジネスの多くは、営業活動により顧客と直接コミュニケーション活動を実施しないことには、商談も生まれません。しかも一回ではなくいく度となく繰り返すコミュニケーションを通じてやっと商談がうまれます。その商談を醸成させて提案活動をしてようやく受注に至ります。受注して納品すれば終わりというわけではありません。納品後の顧客サポートは重要で、継続した受注を得るためにはお得意様としてのコミュニケーションを続ける必要があります。このコミュニケーション活動において顧客の満足度を得られない場合、競合他社の入り込む余地ができます。顧客とのコミュニケーションが蜜であれば競合他社の状況もすぐに察知でき、対抗措置がすぐにうてるのです。
このように、法人ビジネスの場合はコミュニケーション力の強化、すなわちCRM戦略の実践は、差別化というより生き残る上で必須といえます。法人営業の担当者に対して、「お客さまの関係構築を強化することは重要だ。もっとお客さまとのコミュニケーションを強化しろ」と唱えても、当たり前のことと思われるでしょう。
したがって、他社との差別化されたコミュニケーション力の向上とは、費用対効果の高いコミュニケーション力をつけることです。法人営業力の強化で早い手段は営業要員の増員です。営業マンを増員して顧客とのコミュニケーションの密度を上げることはできますが、差別化した競争力になっているとはいえません。競合他社と同じ営業要員で2倍のコミュニケーション力を養ってこそ、差別化された営業力と言えるでしょう。
■ まとめ
企業戦略のパラダイムシフトにより、商品力の強化もさることながら、コミュニケーション力が企業の競争力の源泉として重要になってきました。そのコミュニケーション力を差別化することにより顧客を獲得・維持する戦略をCRM戦略といいます。これは特に法人ビジネスでは重要かつあたりまえの考えです。
CRM戦略の中の一つの施策として営業力の強化があります。営業力の差別化した向上とは、他社より費用対効果の高い営業力を身につけることです。本シリーズ投稿では費用対効果の高い営業力の強化を営業変革として解説しています。