【NPO広報事例】“プロボノ”のススメ/小槻 博文
従来の募金や寄付など金銭的な社会貢献とは異なる、新しい社会貢献の形として“プロボノ”という言葉を最近よく耳にする。実際筆者自身も今までに東日本大震災関連案件にプロボノとして参画したほか、現在も過疎化対策案件等にプロボノとして参画している。
そこで今回は“プロボノ”とNPOをマッチングする特定非営利活動法人サービスグラントについて紹介することにしよう。

“プロボノ”って何!?

“プロボノ”とは、一般企業に勤めている人や個人事業主などが仕事を通じて身につけたスキルや経験をいかして社会貢献をすることを指す。以前から米国を中心に海外では一般的だったが、この数年で日本国内でもプロボノに対する社会的関心は急速に高まりを見せており、新しい社会貢献のあり方として注目を集めている。

そしてサービスグラントではそんな“プロボノ”として取り組みたい人と、専門的なスキルや経験を求めているNPOとのマッチングを行っており、現在登録しているプロボノワーカーは約2,000名、支援先は約150団体にのぼる。

その内容はWEBやパンフレットの制作から、ファンドレイジングに際する資金調達や資金管理だったり、事業計画の立案だったりなど現在8種類のプログラムが用意されており、したがって登録している人たちもプロジェクトマネジメントから調査、マーケティング、デザイン、そしてシステム関連に至るまで多岐にわたる。そしてプログラム内容や支援先に応じて5〜6名の“チーム”を編成し、6か月間にわたってプロジェクトを遂行することとなる。



個別団体の話では振り向いてもらえない

今でこそ“プロボノ”という言葉が一般的になり、それに伴いサービスグラントを取り巻く人材や団体も増えてきた。しかし発足当初の2005年から2008年頃までは「サービスグラント」を前面に出した情報発信が中心だったが、正直あまり成果を生むことが出来なかったと語る。そうしたなかで、

「なかなか情報発信がうまくいかない中で、世の中の人にとっては個別団体の話ではなく、より普遍性のある“プロボノ”という概念や価値観を前面に出したほうが関心を持ってもらいやすく、広がりを生み出せるのではないかと考えるようになりました。」(代表理事 嵯峨生馬さん)

そこでNPO法人化した2009年以降は“プロボノ”という概念を世の中に広めることによって、結果的に「サービスグラント」へ還元される、そんな情報発信に切り替えることに。

その中心的な取り組みとなるのが「プロボノフォーラム」だ。同イベントでは毎回プロボノとして活躍している人たちをゲストに招き、自身のプロボノ体験談を語ってもらうことで、“プロボノ”という存在や意義を知ってもらい、そして関心を持ってもらうことを目的に2009年から毎年開催している。



第1回を開催した2009年当時は“プロボノ”という言葉はまだ一般的ではなかったが、それでも400名近い来場者を集めるとともに、参加者がその様子をSNSで投稿・拡散したりパブリシティを仕掛けたりすることで一定の成果をあげることが出来たそうだ。また当初は「プロボノって何?」というような人たちが多かったが、回を追うごとにプロボノ経験者も増えていき、現在では未経験者と経験者との交流の場にもなっているという。

こうしてまずは「プロボノフォーラム」などを通じて“プロボノ”に対する認知向上・関心喚起を図り、そのうえでWEBサイトや説明会など、実際に行動を促すための各種情報チャネル活動に取り組んでいる。

より多くの人が気軽に“プロボノ”として活躍できるように

こうした取り組みが功を奏して、発足当時は年に数件のプロジェクトだったのが、2012年度は約50件、2013年度は約80件と年々プロジェクト数は増えていき、そして2015年度には年間100件を目標として掲げるまでに至った。しかしそれでも日本全体のNPOの総数から見れば、まだまだ一握りの団体しか支援が出来ておらず、より多くの団体を支援できるような仕組みや体制をつくることが求められるし、そしてそのためにはより多くの人たちが気軽に“プロボノ”として参加できるようにしていかなくてはならないだろう。

「そのためにも引き続きプロボノという概念や意義をより広く浸透させていくとともに、一般の方々がもっと気軽に“プロボノ”に参加できるような仕組みをつくるべく今後も取り組んでいきたいと思います。」(代表理事 嵯峨生馬さん)

自分のスキルや経験を社会に活かしたい。そんな思いを持っている人は“プロボノ”を検討してみてはいかがだろうか。

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