サービスや営業の評価向上を科学する!磨くべきはQCDなのか?/松井 拓己
「素敵なサービス」「気の利く営業」「頼れる会社」そう言って頂くためにどんな努力をすべきか?そのためには、QCD(品質・価格・納期)や知識、商品力を磨いているだけではダメだということが分かりました。お客様からの評価対象を2つに分解することで、そのヒントを見つけたいと思います。

「もっと早く!もっと安く!もっと高品質に!」営業も、商品も、サービスも、どの現場でもこの言葉が飛び交っています。お客様に喜んで頂くことは、売上向上やCS向上に直結します。そのための企業努力は尽きることはありません。しかし、そのために我々が普段している議論にはどうやら盲点がありそうです。

お客様のご要望にただ応えるだけでは喜んで頂けない今の時代。一歩先行く顧客対応を実現するためには、どんな努力をしたらよいのでしょうか?経験やセンスも必要かもしれませんが、お客様がサービスの何を評価しているのか、その評価対象をサービスサイエンスの視点で科学することで、お客様からの評価を組織的に高めるための努力のポイントを見出してみたいと思います。

■我々サービス提供者は、ついついQCDを気にしてしまう

我々サービス提供者は、ついついサービスの成果にばかり気が行ってしまいます。

「商品やサービスの品質はお客様のご要望通りだったか?」
「お客様をお待たせすることはなかったか?」
「コストパフォーマンスには納得頂けたか?」

確かに、お客様から寄せられるクレームや苦言もこの類のものが多いかもしれません。

「こんなもの頼んだつもりはない!」
「いつまで待たせるんだ!」
「こんなに払ったのに!」

ついつい我々もこの言葉を頂いて、お客様はサービスの成果に敏感なのだと思って、QCD(品質・コスト・納期)についての議論に終始してしまいます。しかし本当にそれでお客様からの評価が高まるのでしょうか。自分自身がお客様の立場で他のサービスを利用するシーンを思い返してみると、どうもしっくりこないのではないでしょうか。

そこで、お客様はサービスの何を評価しているのか、少しロジカルに理解してみる必要がありそうです。

■お客様はサービスの何を評価しているのか?

サービスサイエンスでは、サービスの評価の対象を2つに分解しています。それは、「サービスの成果」に対する評価と「サービスのプロセス」に対する評価の2つです。そしてこの「成果とプロセス」の両方に対する評価を高めなければ、お客様からの評価(CS:顧客満足)は高められません。

ここで言うサービスの成果の評価とは、先ほど触れたQCD(品質・コスト・納期)や知識、商品の機能など、結果に対する評価です。営業やサービスのプロとして、この辺りの業務改善やスキル向上は、とことんやってきています。一方で、サービスのプロセスの評価とは、スタッフの印象、対応の親切さや柔軟さ、プロとしての安心感など、サービス提供中にお客様が感じる評価です。

この様にサービスの評価対象を分解してみると、お客様から評判の良いスタッフや、個人指名で依頼を受けるベテランが特に高く評価されているのは、実は成果ではなくプロセスだと分かります。

「色々と分からないことを質問したら、嫌な顔ひとつせず、丁寧に教えてくれた」
「トラブル時に小まめに連絡をくれて、安心して任せられた」
「無理かなと思うお願いでも、頑張って応えようとしてくれた」

また同様に、クレームもプロセスをミスしたことに起因するケースが多いものです。例えば「いつまで待たせるんだ!」というクレームは、待った時間に対してというよりも、何も知らされずにイライラしながら待たされたことに対するクレームだったりします。他にも、「ちょっと苦言を言ったら無礼な対応をされた!」と大クレームに発展するなんてこともよくありますよね。

実際にこんな調査結果があります。店舗サービスに対するお客様からの評価で、

・お客様が不満を覚えるポイント…ダントツで1位が「店員が無愛想」
・お客様が満足するポイント…1位が「店員の挨拶が行き届いている」ちなみに2位が「質問に丁寧に答えてくれた」

これはどれもプロセスに対する評価ですよね。

この様に見てみると、お客様はサービスのプロセスに非常に敏感なんだということがよく分かります。

■お客様はサービスのプロセスに敏感なのに

我々サービス提供者は今まで、サービスのプロセスに対する評価を高めるための努力をどのように取り組んできたか、少し思い返してみてください。多くの場合、それは「個人任せ・現場任せ」「センス・経験任せ」になっています。

サービス内容や提案内容、対応スピードなど、成果を高めるための議論は散々してきているにも関わらず、お客様からの相談対応や営業プロセス、サービス利用中の柔軟対応などについては、「各自うまくやってね」となってしまってはいないでしょうか。

我々は、「思っている以上にお客様はサービスのプロセスに敏感なんだ」ということを肝に銘じなければなりません。そして、お客様からの評価を高めるために、組織的にサービスのプロセスをどう磨き上げたら良いかを議論する必要がありそうです。

まずはプロセスにフォーカスした議論をすることが有効だと思います。しかし、もしかすると議論しただけではアクションに繋がらなかったり、現場にまで浸透させられなかったり、1度やってみてやめてしまったりと、組織的な活動にまで繋げられないかもしれません。そんなときサービスサイエンスでは、「プロセスのモデル化」をします。これは、組織的にサービスを磨き上げるためにサービスプロセスを設計するというものです。これができると、サービスや営業のベテランが、どのプロセスでどんな努力をしているのか、その知恵や工夫が浮かび上がってきます。現場の知恵や工夫は、そのほとんどが各自の頭の中や引き出しの中に隠れていて、組織的に活用できていないものです。実にもったいないですよね。

この様にサービスサイエンスは、ロジカルにサービスの本質を理解するだけでなく、現場の経験やセンスから生まれた知恵や工夫を組織的に活用することで、現場の納得感と経営貢献を両立させる理論として浸透してきています。「プロセスのモデル化」の詳しい内容については、また別の機会に触れてみたいと思います。

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