「経営者にとってのチームビルディングの重要性」とは/斉藤 秀樹
今回お話する事例は、約1ヶ月前からチームビルディングメソッドの導入を始めた企業のトップインタビューを通じて経営や経営者にとってのチームビルディングの重要性について考えていきたいと思います。
今回お話する事例は、約1ヶ月前からチームビルディングメソッド(本「最強組織を創るチームビルディング術」でお伝えしている8ステップ)の導入を始めた企業のトップインタビューを通じて経営や経営者にとってのチームビルディングの重要性について考えていきたいと思います。
本内容は単なる研修や特定チームの活性化と言った部分最適ではなく、全社を巻き込んだ組織再構築の取り組みです。
本内容の導入責任者は代表取締役である経営者(以下、代表)自身です。
日本の多くの企業や組織では組織強化を目的としたコーチングや人事制度の改変など様々な取り組みは行われています。しかし、組織そのものの成長促進を目的としたチームビルディング手法を本格的に導入した例はとても少ないのが実情です。
既に12月に出版した本については、読者の皆さんの中にもご覧いただいた方もいらっしゃるかと思います。本書はチームビルディングの手順の明確化に力点を置いて書いたものなので、どうしても浅く広く全体を網羅することになります。今回のインタビューでは実際の導入でどのような取り組みが行われているのかの理解が深まるものと思います。また、経営者にとってチームビルディングがどのような価値をもたらす可能性があるのかといった新たな視座を与えてくれるものと思います。
まず、約1ヶ月前に始まったチームビルディングの取り組みの経緯を簡単にお話します。
第1ステップは、チームビルディングの8要素(8ステップ、書籍の20ページ)を活用して、現在の全部門の組織状態を数値化しました。いわゆる、組織状態の見える化です。
(この取り組みに際して、ポイントの説明や簡単な研修も実施しています)
第2ステップは、各組織リーダーに1ヶ月後の目標とする組織状態を数値と具体的な状態で設定してもらいました。
第3ステップは、その目標状態を実現するための行動計画の作成とより具体化するためのレビューを行いました。
第4ステップは、実践です。
そして、1ヶ月経過した現在、組織状態の変化と取り組み状況について代表が各部門のリーダー一人ひとりとマンツーマンでレビューを行うステップに入っています。
驚いたことは、この取り組み以前でさえ多忙を極めていた代表が、更に数十人の各部門のリーダー全員とマンツーマンでレビューを行っていると言うことです。
レビューと言っても単に状況をヒアリングするだけではなく、現時点での組織状態の数値(例えば、リーダーは5(5点満点)と認識しているものを組織状態やリーダーの対応を確認の上、3や4に修正し、更に具体的な取り組み方法についてディスカッションすると言ったものです)
もの凄い労力をかけているだけではなく、すべての経営実務の中で最も優先的に取り組んでいるという事実です。
今回のコラムは経営者から見たチームビルディング重要性について、代表の言葉を引用しながら一問一答でお伝えしていきます。では、始めます。
質問1「これまでの(1ヶ月の)取り組み状況はどのようなものですか」
皆、能動的に取り組んでいる、勿論、温度差はあるが。
私が経営者として重視しているのは表面的な取り組みではなく、議論の質を変えることにある。
質問2「議論の質を変えるとは何でしょうか」
議論の質とは、これまでリーダーとの会話の大半は業務(作業)状況についてのものばかりだった。未だ、リーダーの中には「業務状況=チーム状況」と勘違いしている者もいる。
しかし、私が求めているものは作業がどうなっているかではなく、組織力がどのように向上しているかということだ。個別の業務改善は単にDoの改善でしかなく、小手先の対応で終始することが多い。DoだけでなくBe(取り組み姿勢、視野、スタンス、マインドなど)が変わることで始めて組織力に変化が生まれる。
質問3「Beの変化をどのようにレビューしているのですか」
Beの変化は8ステップの各要素のついての状況を確認することで行える。第1の「チーム意識」はリーダー自身のチーム状態の説明時に使われる言葉とスタンスを洞察していれば分かる。第2の「安全な場」は本当に本音の話ができているかだが、リーダーが聞いているメンバーの意見と私やリーダー以外の人間が聞いている意見に差がないかどうかで判断できる。結局、どんなに良い話でもリーダーの顔色で言葉を選んでいるのでは安全な場とは言えない。
質問4「このようなレビューの最も重要なことは何でしょうか」
一つは私が考えているマネジメントとは作業管理ではなく、組織力強化であることを明確に理解してもらうことにある。これにはとても労力がかかるが、マネジメントの本質が変わらなければ本当に得たい変革は実現できない。
二つ目は、作業管理の視点からは本当の意味でチーム力は生まれないことを理解してもらうこと。最も怖いことは自分の作業の完了ばかりに注力し、周りが見えなくなってしまうことだ。本来、業務は私達企業が持っているビジョンやミッションを実現するためのもの。
組織とは何のために存在し、業務の目的は何であるのかといった本質と向き合う習慣がなければ、小手先の変化は生まれても本質は変わらないし、ミッションの実現のために大きな視野で部門間を横断するような取り組みは生まれない。
質問5「経営の視点からこのような取り組みをする利点は他にありますか」
勿論、このような取り組みによって組織力が向上すれば、業績に跳ね返ってくるだろう。
しかし、それは短絡的な視点だ。経営者として良質な経営判断をするためには良質な情報が必要だが、組織が未成熟な状態では偏った情報しか上がってこない。また、部門間の利害が影響し合って重要な情報が隠蔽される可能性もある。これらは経営にとっては大変大きなリスクと言える。
また、サクセッションプランを進める上での影響も大きい。いつまでも個々の部門が自部門の利害を優先するマインドが残っていると、有能な人材を取られたくないという意識が働き、個々の部門内で人材の囲い込みが行われる。これも経営的な視点で考えれば大きなリスクとなる。
質問6「最後にこのようなチームビルディングの取り組みを成功させるために重要な事は何でしょうか」
言うまでもなく私(経営者)の本気度だ。チームビルディングの取り組みは組織そのもののカルチャや風土を変革する取り組みだ。綺麗事だけで成功するものではない。
それにこれは所轄部門、例えば人事に丸投げして成功する類のものではない。最も重要な経営課題の一つと言える。経営者の本気度が伝わるからリーダー達も重い腰を上げる。
そして、ただ情熱だけで旗を振ったところでバラバラに任せていたのでは成果が生まれない。どうしても共通言語が必要になる。その意味で今回のチームビルディングメソッドはとても有効だと言える。
【インタビュー後に感じたこと】
このインタビュー内容は分かりやすさを考えて一部補足した箇所がある以外は脚色なくお伝えしています。
最も印象的だったことは、代表の話がまるで著者自身でもあるかのように本質が自分の言葉で語られていることでした。何も見ることなく8ステップとそのポイントをとうとうとはなされる姿は、まるで自分の講義を聞いているような錯覚さえ覚えました。
この会社で間違いなく最も多忙な代表が経営業務と並行して本を熟読し、更に自分のものにし、率先垂範するその姿に、経営者の本気度とあり方を実感した素晴らしい時間でした。
今後もチームビルディングを皆様とともに学びを深めより良い組織創りに活かしていきたいと思います。」
今回お話する事例は、約1ヶ月前からチームビルディングメソッド(本「最強組織を創るチームビルディング術」でお伝えしている8ステップ)の導入を始めた企業のトップインタビューを通じて経営や経営者にとってのチームビルディングの重要性について考えていきたいと思います。
本内容の導入責任者は代表取締役である経営者(以下、代表)自身です。
日本の多くの企業や組織では組織強化を目的としたコーチングや人事制度の改変など様々な取り組みは行われています。しかし、組織そのものの成長促進を目的としたチームビルディング手法を本格的に導入した例はとても少ないのが実情です。
既に12月に出版した本については、読者の皆さんの中にもご覧いただいた方もいらっしゃるかと思います。本書はチームビルディングの手順の明確化に力点を置いて書いたものなので、どうしても浅く広く全体を網羅することになります。今回のインタビューでは実際の導入でどのような取り組みが行われているのかの理解が深まるものと思います。また、経営者にとってチームビルディングがどのような価値をもたらす可能性があるのかといった新たな視座を与えてくれるものと思います。
まず、約1ヶ月前に始まったチームビルディングの取り組みの経緯を簡単にお話します。
第1ステップは、チームビルディングの8要素(8ステップ、書籍の20ページ)を活用して、現在の全部門の組織状態を数値化しました。いわゆる、組織状態の見える化です。
(この取り組みに際して、ポイントの説明や簡単な研修も実施しています)
第2ステップは、各組織リーダーに1ヶ月後の目標とする組織状態を数値と具体的な状態で設定してもらいました。
第3ステップは、その目標状態を実現するための行動計画の作成とより具体化するためのレビューを行いました。
第4ステップは、実践です。
そして、1ヶ月経過した現在、組織状態の変化と取り組み状況について代表が各部門のリーダー一人ひとりとマンツーマンでレビューを行うステップに入っています。
驚いたことは、この取り組み以前でさえ多忙を極めていた代表が、更に数十人の各部門のリーダー全員とマンツーマンでレビューを行っていると言うことです。
レビューと言っても単に状況をヒアリングするだけではなく、現時点での組織状態の数値(例えば、リーダーは5(5点満点)と認識しているものを組織状態やリーダーの対応を確認の上、3や4に修正し、更に具体的な取り組み方法についてディスカッションすると言ったものです)
もの凄い労力をかけているだけではなく、すべての経営実務の中で最も優先的に取り組んでいるという事実です。
今回のコラムは経営者から見たチームビルディング重要性について、代表の言葉を引用しながら一問一答でお伝えしていきます。では、始めます。
質問1「これまでの(1ヶ月の)取り組み状況はどのようなものですか」
皆、能動的に取り組んでいる、勿論、温度差はあるが。
私が経営者として重視しているのは表面的な取り組みではなく、議論の質を変えることにある。
質問2「議論の質を変えるとは何でしょうか」
議論の質とは、これまでリーダーとの会話の大半は業務(作業)状況についてのものばかりだった。未だ、リーダーの中には「業務状況=チーム状況」と勘違いしている者もいる。
しかし、私が求めているものは作業がどうなっているかではなく、組織力がどのように向上しているかということだ。個別の業務改善は単にDoの改善でしかなく、小手先の対応で終始することが多い。DoだけでなくBe(取り組み姿勢、視野、スタンス、マインドなど)が変わることで始めて組織力に変化が生まれる。
質問3「Beの変化をどのようにレビューしているのですか」
Beの変化は8ステップの各要素のついての状況を確認することで行える。第1の「チーム意識」はリーダー自身のチーム状態の説明時に使われる言葉とスタンスを洞察していれば分かる。第2の「安全な場」は本当に本音の話ができているかだが、リーダーが聞いているメンバーの意見と私やリーダー以外の人間が聞いている意見に差がないかどうかで判断できる。結局、どんなに良い話でもリーダーの顔色で言葉を選んでいるのでは安全な場とは言えない。
質問4「このようなレビューの最も重要なことは何でしょうか」
一つは私が考えているマネジメントとは作業管理ではなく、組織力強化であることを明確に理解してもらうことにある。これにはとても労力がかかるが、マネジメントの本質が変わらなければ本当に得たい変革は実現できない。
二つ目は、作業管理の視点からは本当の意味でチーム力は生まれないことを理解してもらうこと。最も怖いことは自分の作業の完了ばかりに注力し、周りが見えなくなってしまうことだ。本来、業務は私達企業が持っているビジョンやミッションを実現するためのもの。
組織とは何のために存在し、業務の目的は何であるのかといった本質と向き合う習慣がなければ、小手先の変化は生まれても本質は変わらないし、ミッションの実現のために大きな視野で部門間を横断するような取り組みは生まれない。
質問5「経営の視点からこのような取り組みをする利点は他にありますか」
勿論、このような取り組みによって組織力が向上すれば、業績に跳ね返ってくるだろう。
しかし、それは短絡的な視点だ。経営者として良質な経営判断をするためには良質な情報が必要だが、組織が未成熟な状態では偏った情報しか上がってこない。また、部門間の利害が影響し合って重要な情報が隠蔽される可能性もある。これらは経営にとっては大変大きなリスクと言える。
また、サクセッションプランを進める上での影響も大きい。いつまでも個々の部門が自部門の利害を優先するマインドが残っていると、有能な人材を取られたくないという意識が働き、個々の部門内で人材の囲い込みが行われる。これも経営的な視点で考えれば大きなリスクとなる。
質問6「最後にこのようなチームビルディングの取り組みを成功させるために重要な事は何でしょうか」
言うまでもなく私(経営者)の本気度だ。チームビルディングの取り組みは組織そのもののカルチャや風土を変革する取り組みだ。綺麗事だけで成功するものではない。
それにこれは所轄部門、例えば人事に丸投げして成功する類のものではない。最も重要な経営課題の一つと言える。経営者の本気度が伝わるからリーダー達も重い腰を上げる。
そして、ただ情熱だけで旗を振ったところでバラバラに任せていたのでは成果が生まれない。どうしても共通言語が必要になる。その意味で今回のチームビルディングメソッドはとても有効だと言える。
【インタビュー後に感じたこと】
このインタビュー内容は分かりやすさを考えて一部補足した箇所がある以外は脚色なくお伝えしています。
最も印象的だったことは、代表の話がまるで著者自身でもあるかのように本質が自分の言葉で語られていることでした。何も見ることなく8ステップとそのポイントをとうとうとはなされる姿は、まるで自分の講義を聞いているような錯覚さえ覚えました。
この会社で間違いなく最も多忙な代表が経営業務と並行して本を熟読し、更に自分のものにし、率先垂範するその姿に、経営者の本気度とあり方を実感した素晴らしい時間でした。
今後もチームビルディングを皆様とともに学びを深めより良い組織創りに活かしていきたいと思います。」