店頭には常に長い列ができた

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日本の有名ラーメンがパリで一堂に会するイベント「パリ・ラーメンウィーク Zuzutto」が1月20日から25日までの6日間、パリ市内のレストラン「マセオ」で開かれた。開催時間はランチ(11時から14時)とディナー(16時から22時)に分かれ、夜の部ではラーメン(10ユーロ:約1400円)の他に、すしと焼き鳥も提供された。ラーメンに合わせて日本酒なども出され、会場は日本の味であふれた。

同イベントでは日本から6店が参加し、6日間の期間中、日替わりでラーメンを担当した。最終日は全店舗の特徴が一皿にそろうオールスター・ラーメンが出された。出店は日程順にソラノイロ(ベジタブルラーメン)、IKEMEN HOLLYWOOD(創作つけ麺)、ラーメンラボ(ベジタブルメドレー)、ちばき屋(支那そば)、博多一風堂(九州豚骨ラーメン)、とら食堂(手打ち中華そば)だ。本格的な日本ラーメンイベントに、パリジャンはどのような反応を示したのか。

初日はソラノイロのベジソバがラーメンウィークのスタートを切った。11時の開店前から、店先は日本の味を待っていたフランス人と現地日本人で行列になり、開店後それはさらに伸びた。人気ぶりにランチは12時半頃に列が閉め切られたほど。16時からの夜の部も、オープン前から多くの人々が並び、同イベントの期待の高さを物語った。

2日目は昼をIKEMEN HOLLYWOOD、夜をラーメンラボが担当した。IKEMEN HOLLYWOODのメニューはつけ麺。つけ麺はパリではまだメジャーではなく、今回は1つのラーメンの形として良いアピールになったのではないだろうか。夜はラーメンラボが約30種類の野菜を使い、米国産の味噌をベースにしたラーメンが出された。会場のレストランの収容人数は1度で100名ほど。初日は個別に分かれていた丸テーブルを一部で取払い、2日目は長い1つの長机に1列で詰めて座れるよう収容人数を増やす工夫がされた。

3日目は、ちばき屋が作る正統派のしょうゆラーメンだ。パリ市内の日本食レストランでも、この種のラーメンを出しているところは多いが、日本と同じ麺のコシとスープの深みはパリでは体験できず、その差は際立っていた。1日と2日はどちらかというと変化球のラーメンだったが、3日はラーメンの原点に戻るメニューとなった。

4日目の博多一風堂は、ラーメンウィークの中でも特に多くの人出だった。一風堂はフランスで仕入れた豚から作ったスープとチャーシューで、変わらぬ安定さを見せた。近年欧州では新規トンコツラーメン屋の出店が相次ぎ、トンコツの認知度が一気に進んでいる。フランスの知人の間でも、この日を狙って訪れる予定の人はずいぶんいた。ラーメンに加えて小どんぶりカレー(6ユーロ:約850円)も出された。

5日目は手打ち麺が特徴の、とら食堂が店に出た。会場2階のスペースで店主が麺打ちし、それを階下のレストランで提供した。同イベントに先立って行われた報道関係者を集めたレセプションでも、とら食堂による手打ち麺の実演は披露され、その職人芸にフランスの報道およびレストラン関係者を引きつけた。

最終日は各店の特徴を、1つのラーメンで表現するという試みがされた。出されたラーメンは鶏と豚を使ったダブルパイタンスープに、塩チャーシュー(ソラノイロ)、炙りチャーシュー(とら食堂)、半熟玉子(ちばき屋)、ほうれん草(とら食堂)、キャベツ(ソラノイロ)、青ねぎ(全店舗)、とりつくね(八兵衛)を乗せ、アクセントにバルサミコソース(IKEMEN HOLLYWOOD)を添えたもの。今回のイベントでしか食べられないオールスター・ラーメンとなった。

最終日の営業時間は15時までで、無くなり次第終了ということだったが、開店前から190人が並び、開店後は30分で予定分を完売。大盛況のうちにイベントを終えた。

予想を上回る来場者で、すべてをさばききれたとは言い難い今回のイベントだったが、これはラーメンに対する潜在的な興味と需要がパリにあるということの裏返しだ。パリ・ラーメンウィークは経済産業省のクールジャパン戦略事業の一環として費用が補助され、博多一風堂が牽引した。今、欧州でもっともラーメンが盛り上がっている場所といえばロンドンだ。次はロンドンで同イベントがどのような反応となるのか見てみたい。
(加藤亨延)