父兄に感謝されるピザ屋さんの『こだわり』/石塚 しのぶ
「大きくなる」ではなく、「偉大な会社になる」ことを目指す小・中規模企業のムーブメント。その名も『スモール・ジャイアンツ』。シカゴ郊外にあるピザ屋さんを訪問して仕事場を観察し、オーナーのお話を聞いてきました。大企業も顔負けの従業員教育の徹底に感服!
自らを「スモール・ジャイアンツ」と称し、必ずしも『大きくなる』ことではなく、『偉大な会社になる』ことを目指す優れた小・中規模企業経営者との交流を昨年から精力的に行っています。
これらの経営者と討議を交わし、彼らの会社を訪ねて、そこで働く人たちと実際に触れ合ってみて感じることは、「学ぶ」という精神が会社の隅々にまでいかに徹底して浸透し、仕組みとして実践されているかということです。
シカゴの北西に一時間ほど車を走らせた郊外の町に、あるピザ屋さんがあります。独立系ピザ屋としては、米国で五本の指に入る売上を誇るピザ屋さんです。
自らも三児の父であるオーナーのニックさんが、「家族連れで気兼ねなく楽しめるレストランをつくりたい」と思い立ったことが起業(1995年)のきっかけだそうです。今日では、「スモール・ジャイアンツ」を志し、『地域住民の皆さんに、家族や友人と集う場、まるで我が家のように居心地よく楽しめる忘れ難い体験の場を提供する』を存在意義として掲げ、12のコア・バリュー(価値観)を会社の全員が行動の拠りどころとして会社を運営しています。
コア・バリューの第二条は「継続的な学びと成長」。通常、レストラン・ビジネスでは、人材の大半が「アルバイト」で賄われ、離職率も高いため、人材に対してまるで「使い捨て」のようなアプローチをとる会社が少なくありません。しかし、ニックさんのお店では、「ユニバーシティ(大学)」と銘打った社内教育制度を設け、役職や職種に関係なく、個人の成長を支援することに並々ならぬ力を注いでいます。厨房スタッフ、接客スタッフともに認定制度が存在し、取得したスキルの数と種類によってランクが上がっていき、それに伴い給料も上がる仕組みになっているそうです。
特に驚くべきなのは、例えば接客の仕方とかピザの焼き方などの「業務スキル」だけではなく、人が安心して、意思の疎通が円滑に図れるような雰囲気をつくるコミュニケーションのとり方、自己洞察力の向上を促すコーチングの方法などといった「リーダーシップ・スキル」にも重点をおいて教えている点です。
経営者というのは大体において勉強家の人が多く、皆さんよく学んでおられると思いますが、スモール・ジャイアンツ企業を訪問してみて感じるのは、優れた企業の特徴は役職や職種に関係なく、会社の皆が学ぶ素養を身につけた「学ぶ組織」であるということです。ニックさんもそうなのですが、こうした会社の経営者は、常に、自分と肩を並べる、あるいは自分を超える人材を育てることを念頭に、従業員の教育に専念していると思います。
「たかがピザ屋じゃないか。うまいピザをつくれて、気持ちの良い接客ができれば十分だろう」、それ以上の教育、例えば、「経営者を育てる」教育は経費のムダだという人もいるかもしれません。しかし、スモール・ジャイアンツ企業は従業員教育への投資を惜しみません。「学ぶ組織」をつくることが会社の長期的な繁栄の基盤であり、長い目で見れば、従業員への投資は数十倍にもなって返ってくると心得ているからです。
ところで、ニックさんのピザ屋さんでは厨房スタッフや接客スタッフなどの職種が主であることから、アルバイトは地域の高校生など学生で占められています。ニックさんの話によると、時に、従業員の親御さんから、「うちの息子/娘に何をしたんですか」と問いかけられることがあるそうです。もちろん悪い意味ではありません。「まるで人が変わったように、学校や家のことも責任をもってこなすようになり、話もしてくれるようになりました。ほんとうにありがたいことです・・・」といった感謝の電話やメールをもらうことも珍しくないそうです。
幸せな職場というのは、家庭にも幸せをもたらすものなのだなあ、と考えさせられた心あたたまるエピソードです。
自らを「スモール・ジャイアンツ」と称し、必ずしも『大きくなる』ことではなく、『偉大な会社になる』ことを目指す優れた小・中規模企業経営者との交流を昨年から精力的に行っています。
シカゴの北西に一時間ほど車を走らせた郊外の町に、あるピザ屋さんがあります。独立系ピザ屋としては、米国で五本の指に入る売上を誇るピザ屋さんです。
自らも三児の父であるオーナーのニックさんが、「家族連れで気兼ねなく楽しめるレストランをつくりたい」と思い立ったことが起業(1995年)のきっかけだそうです。今日では、「スモール・ジャイアンツ」を志し、『地域住民の皆さんに、家族や友人と集う場、まるで我が家のように居心地よく楽しめる忘れ難い体験の場を提供する』を存在意義として掲げ、12のコア・バリュー(価値観)を会社の全員が行動の拠りどころとして会社を運営しています。
コア・バリューの第二条は「継続的な学びと成長」。通常、レストラン・ビジネスでは、人材の大半が「アルバイト」で賄われ、離職率も高いため、人材に対してまるで「使い捨て」のようなアプローチをとる会社が少なくありません。しかし、ニックさんのお店では、「ユニバーシティ(大学)」と銘打った社内教育制度を設け、役職や職種に関係なく、個人の成長を支援することに並々ならぬ力を注いでいます。厨房スタッフ、接客スタッフともに認定制度が存在し、取得したスキルの数と種類によってランクが上がっていき、それに伴い給料も上がる仕組みになっているそうです。
特に驚くべきなのは、例えば接客の仕方とかピザの焼き方などの「業務スキル」だけではなく、人が安心して、意思の疎通が円滑に図れるような雰囲気をつくるコミュニケーションのとり方、自己洞察力の向上を促すコーチングの方法などといった「リーダーシップ・スキル」にも重点をおいて教えている点です。
経営者というのは大体において勉強家の人が多く、皆さんよく学んでおられると思いますが、スモール・ジャイアンツ企業を訪問してみて感じるのは、優れた企業の特徴は役職や職種に関係なく、会社の皆が学ぶ素養を身につけた「学ぶ組織」であるということです。ニックさんもそうなのですが、こうした会社の経営者は、常に、自分と肩を並べる、あるいは自分を超える人材を育てることを念頭に、従業員の教育に専念していると思います。
「たかがピザ屋じゃないか。うまいピザをつくれて、気持ちの良い接客ができれば十分だろう」、それ以上の教育、例えば、「経営者を育てる」教育は経費のムダだという人もいるかもしれません。しかし、スモール・ジャイアンツ企業は従業員教育への投資を惜しみません。「学ぶ組織」をつくることが会社の長期的な繁栄の基盤であり、長い目で見れば、従業員への投資は数十倍にもなって返ってくると心得ているからです。
ところで、ニックさんのピザ屋さんでは厨房スタッフや接客スタッフなどの職種が主であることから、アルバイトは地域の高校生など学生で占められています。ニックさんの話によると、時に、従業員の親御さんから、「うちの息子/娘に何をしたんですか」と問いかけられることがあるそうです。もちろん悪い意味ではありません。「まるで人が変わったように、学校や家のことも責任をもってこなすようになり、話もしてくれるようになりました。ほんとうにありがたいことです・・・」といった感謝の電話やメールをもらうことも珍しくないそうです。
幸せな職場というのは、家庭にも幸せをもたらすものなのだなあ、と考えさせられた心あたたまるエピソードです。