まだまだマンションは売れる(画像はイメージ)

写真拡大

首都圏の新築マンションの販売が好調を続けている。不動産経済研究所(東京都新宿区)が2013年末発表した11月の販売戸数は前年同月比22.3%増の5006戸と、7カ月連続で前年を上回り、11月としては2006年(6859戸)以来7年ぶりの高水準になった。

今年4月に消費税が現行の5%から8%に引き上げられるのを前にして駆け込み需要が膨らむと懸念されたが、今のところ「駆け込み需要と反動減は予想より小さく収まるのではないか」(業界関係者)との見方が強い。

住宅ローン減税の拡充などで増税を相殺?

調査は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県を対象に実施され、11月は前月比でも42.8%増と絶好調。発売したその月のうちに売れた割合である「契約率」は前年同月より7.7ポイント増の79.6%で、売れ行き好調の目安とされる70%を上回った。契約率の70%超えは2013年2月から10カ月連続で、需要の底堅さがうかがえる。

不動産関係者の間では、2013年9月末までに契約すれば、今年4月以降の引き渡しでも現行の消費税率5%を適用するという特別措置が終了したため、10月以降の発売や売れ行きに影響が出るとの不安が広がっていた。しかし実際は10、11月とも販売、売れ行きは好調だった。

1997年4月に消費税が3%から5%に引き上げられた際は、増税前の駆け込み需要と増税後の激しい反動減があった。この1997年の発売戸数は前年比約15%減と大幅に落ち込み、景気への影響も少なくなかったとされる。

これに対し、今回は「目立った反動減はまだみられない」(マンション販売関係者)という。特例措置は2013年9月末に終わったものの、政府は増税後の4月以降に引き渡す場合には住宅ローン減税の拡充などで対応するという反動減を抑える対策を決めており、「政策効果が大きい」(業界関係者)とされる。さらに、長期的な金利の先高感や、東京五輪開催を機とした東京・湾岸地域の人気などが需要を押し上げている。昨年末に向けての大幅な株高など、景気が好調なことへの期待感も需要増を後押ししている。

また、「前回は消費増税導入を前に需要をあおるような宣伝活動をしたが、逆にその反動減にあえぐ結果となった。この教訓から今回は大手を中心に冷静な対応をしたことも大きい」(業界筋)との指摘もある。

資材と人件費の高騰がジワリ

今後のマンション販売の見通しについても、「2014年も引き続き強めに推移していくのではないか」と、業界は期待する。ただ、消費税増税を機に、住宅に限らず急速に消費マインドが低下する懸念は残っており、景気全体の動向からは目が離せない。

もう一つのリスクが建築資材や人件費の高騰だ。例えばマンション部材や一戸建ての基礎部分で鉄筋となる棒鋼の大口需要家渡し価格は東京市場で12月に1トン6万円台半ばと、10月上旬から5000円近く上昇しているといい、東日本大震災復興関連工事もあると、今後も「強含み」との見方で関係者の見方はほぼ一致する。同様に工事の増加で人手集めに苦労する業者の悲鳴が聞こえ、人件費もジリジリと上昇している。「マンション価格にどこまで転嫁するか、悩ましい。大幅に上がれば販売には逆風」(同)との不安感も広がる気配だ。