死刑執行現場だとして新華社通信サイトに掲載された写真。女性がぐったりしている

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中国の政府系メディアが、相次いで「釣られる」珍事が発生している。

中国共産党系のニュースサイトは、アダルトビデオの一場面を「死刑執行現場」だと報じた上、国営ラジオのサイトは、冗談として投稿された米国の記事を真面目に取り上げ、米アマゾン創業者によるワシントン・ポスト紙買収はマウスの操作ミスが原因だと報じてしまった。

「環球時報」記事が新華社サイトにも配信される

失笑を買ったのは、「命が消える様子を実録 女性死刑囚に注射で死刑執行」と題した記事。中国共産党の機関紙、人民日報系の「環球時報」のウェブサイト「環球網」が2013年8月7日朝に配信し、新華社通信をはじめとする中国国内の多くのニュースサイトに配信・掲載された。

いわゆる「記事本文」にあたるものは見あたらず、通常の記事というよりは「写真特集」に近い体裁だ。写真は40枚近くあり、順に見ていくと、連行されてきたカーキ色のワンピース姿の女性が無理矢理ストレッチャーのようなものに縛りつけられ、注射を打たれた末に口を開けてぐったりする様子が分かる。女性の顔立ちは、アジア系と言うよりはコーカサス系に近い。

写真には「世界で最も暗黒の一面を暴く」というキャプションがついており、西側諸国の死刑制度の残酷さを強調する狙いがある可能性があるが、はっきりしたことは分からない。なお、アムネスティ・インターナショナルの調べによると、中国では1年で数千件の死刑が執行されているとみられ、中国以外の全ての国で執行された数の合計(682件、2012年)よりもはるかに多い。

画像には軍事専門サイトのロゴが入っていた

記事が掲載された直後から、ネット利用者が画像の出典を調査。それによると、強姦を専門とするポルノサイトに掲載されていた「薬物注射」と題した動画から取り出した画像だという説が有力だ。ほどなく中国のネット上では騒ぎが広がり、記事は削除された。

ここで問題になるのが、この記事が掲載された経緯だ。画像には「西陸網」という軍事専門ニュースサイトのロゴが入っており、環球網の担当者が西陸網から写真を無断使用した可能性もある。ただ、中国では報道について著作権という概念は存在しないといってもおかしくないのが実態だ。また、AFP通信によると、西陸網の担当者は、

「中国のウェブサイトの個人的な投稿から持ってきた」

と釈明。盗用に盗用を重ねた結果の珍事だということになる。

「中国国際放送」、ニューヨーカー誌のジョークを真に受ける

8月7日夕方には、国営ラジオ「中国国際放送」のウェブサイトも「釣られた」。アマゾン・ドットコム の創業者、ジェフ・ベゾス氏が米有力紙ワシントン・ポストを2億5000万ドル(約250億円)で買収を決めたことがマウスの操作ミスの結果だと報じたのだ。このニュースもやはり新華社通信のウェブサイトに掲載された。

このニュースは、元々は米ニューヨーカー誌のウェブサイトにコメディアンが冗談として投稿した内容だったが、中国メディアは真に受けてしまった。

12年11月には、人民日報のウェブサイトが米国の風刺サイトの内容を真に受けて北朝鮮の金正恩第一書記を「世界でもっともセクシーな男性」と報道し、直後に記事を削除した。基本的な事実確認を怠った結果の誤報が続出している。