生きるために悪に手を染める医者・恵――蒼井優が語る

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シリーズ累計5700万部を突破、TVアニメも大ヒットを記録した国民的コミック『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の実写映画、『るろうに剣心』。
艶やかな用紙と蓮っ葉な口調で周りを煙に巻く美女で、代々医者を排出した名家の娘である、医者・高荷恵を演じた、蒼井優へインタビューが行われた。

──まず、完成した映画を観た感想を聞かせてください。

蒼井優:剣心役の佐藤健さんと、薫役の武井咲さんがとっても良かったのが嬉しかったですね。それから、大友監督の手にかかると日本映画のアクションはここまでのものになるのかと驚きました。私自身はあまりアクション映画を観る方ではないんですが、『るろうに剣心』はアクションシーンの連続で、ドキドキしながら観ることができたんです。大友さんが作り出すカットは本当に格好いいですね。

──佐藤健さんと武井咲さん、具体的にどういうところが良かったのでしょうか?

蒼井優:座長の佐藤さんを現場で見ていて思ったのは、主役を演じる責任感や想いをお芝居を通じて私たちに見せてくれていたんだな、と。そして、それがそのまま画面にも現れていると思います。武井さんに関しては、台本を読んだときに最後のアクションシーンがすごく難しいお芝居だなと思ったので、現場で「最後のシーンはどうするの? どうするの?」って聞いていたんです。そのとき武井さんは「どうすればいいのか分からないんですよね……」と言っていたんですが、完成した作品を観て、よくこんなお芝居ができるなと感動しました。



──高荷恵というキャラクターを演じるにあたって気を付けたことはありますか?

蒼井優:メインの女性キャラクターは武井さんが演じた薫と私の演じた恵、その2人が女性の軸になっています。恵は薫のすぐそばにいる存在だったので、どうすれば薫を魅力的に映すことができるんだろう……と、それを第一に考えながら恵を演じていました。

──恵は原作では姉御肌で妖艶なキャラクター。映画ではどういう恵を目指したのでしょうか?

蒼井優:私は常日頃から友人たちに色気がないと言われているタイプなんです(苦笑)。原作を読んで、恵というキャラクターは自分が持ち合わせていないものばかりを持っている役だなと思ってしまったので、どうしようかなと……。それでも、(『龍馬伝』でご一緒した)大友組のメンバーとして、またそこに戻りたいと願ってしまったので、私の中の最大の敬意を原作の恵に対して払ったつもりです。ただ、できないことはできない、頑張っても無理なこともあるので、つねに原作に対する敬意を持ちつつ自分なりの恵を模索していきました。

──自分が持ち合わせていないと感じる役は、共感できる役よりも難しいものですか?

蒼井優:どの役を演じるのも難しいことに変わりはないんです。自分が理解できない作品、理解できない役を演じるときは、興味のない世界であってもそこに飛びこんで、その人から何かを学びたい、役者としてではなく人として勉強したいと思うんです。ただ、もっと以前の私だったら「恵役は私にはできません、私よりももっとベストな人がいると思います」と断ってしまっていたと思います。でも、私でいいと言ってくれる方がいるのであれば、勉強してみようと思った。大友組にまた入りたかったというのが一番なんですけどね(笑)。

──本当に大友監督の現場が好きなんですね。

蒼井優:ほんとにみんな楽しそうで、誰よりも大友さんが一番楽しそうに現場にいます。監督は役者よりももっと大変な仕事であるのに、いつも楽しそうに仕事をしているんです。だからこそ、役者は安心してカメラの前で暴れることができるのかもしれません。今回の撮影は夏の京都。ものすごく暑かったけれど、撮影が終わるとみんなでビールを飲んだりしたこともあります。衣装はいつも汗でびしょびしょでしたけど(笑)。

──恵は、生きるために仕方なく悪に手を染める名医の娘。複雑なキャラクターをどう作り上げていったのでしょう?

蒼井優:恵は素直じゃないですよね(笑)。なので、剣心にじゃれつく仕草も本心ではなかったりするんです。そんな彼女をどう演じたらいいのか分からなくなったときもありました。でも、『龍馬伝』のときも今回の『るろうに剣心』もそうなんですが、大友さんはそれぞれの役をしっかりと描いてくださる監督なんです。分からないことを聞きに行くと、その答えをちゃんと用意していてくれる。一緒に考えてくれるときもある。なので、自分の役に対して誇りを持って現場にいることができました。

──そんな誇りを持って挑んだ恵という役。完成した映画を観たとき、蒼井さんの目に恵はどう映ったのでしょう? その感想も聞かせてください。



蒼井優:恵はメイクも濃い目ですし、ちょっと怖いなって(笑)。武井さんのカットから私のカットに移るシーンを観ると「あぁ……」って落胆しました(苦笑)。

──共演シーンの多かった武田観柳役の香川照之さんについても感想を聞かせてください。

蒼井優:相変わらずですよね(笑)。安心して、でもハラハラドキドキさせてもらえる俳優さんです。過去に何度かご一緒させてもらっているので、今回の現場でも「共演しているからこその安心感がありますね」という話をしたり。香川さんとお芝居をするときって、全力で、準備万端でいかないと恐いんです。怒るとかそういう怖さではなく、何か特別な存在という感覚の怖さですね。香川さんはいつも相手(私)のためのお芝居をしてくださる方。そうすることで、自分の役に自然とつながっているんでしょうけれど、そういうお芝居は本当に勉強になります。香川さんだけでなく、今回の現場はそういう方ばかりで、嘘をつけない現場でした。この作品に対する強い想いを持っていないと現場にいられない、そういう雰囲気がありましたから。それだけみなさんの(この作品を良いものにしようという)意識が高かったということですよね。

──続いて、蒼井優さんが感じた、緋村剣心の魅力を聞かせてください。

蒼井優:剣心は魅力の塊ですよね。ただ強いだけではなく筋が通っているところが素敵です。剣心の殺陣のシーンも惚れ惚れします。私はアクションシーンがなかったので、直接剣心の殺陣の撮影を見る機会はなかったんですが、殺陣の先生が冒頭の剣心のアクションシーンをオリジナル編集したものを用意してくださっていて。それを現場で見せてもらったんです。座長(佐藤)がここまでやっているんだから、私たちも座長をとことん支えていこう! とことんついて行こう!とみんなのテンションが一気に上がったのを覚えています。

──ほかに印象に残っているエピソードはありますか?

蒼井優:私がこの現場がとても好きだなと思ったのは、武井さんに対してみんなで話合いをしたことですね。というのは、彼女は今現在もそうですけど、撮影当時ものすごく勢いがあって、仕事が忙しくて、休みもほとんどなかったと思うんです。まだ十代なのに……。なので、咲ちゃんがこの現場でいかにリラックスできるか、いかに気を遣わずにいられるかをみんなで話し合いました。そういう愛情に触れることができたことで、ますますこの現場が好きになりました。

──最後に『るろうに剣心』をどんな人に観てほしいですか? これから観る人へメッセージをお願いします。

蒼井優:『龍馬伝』の大友組のスタッフ&キャストが再集結した『るろうに剣心』は、ほんとうに熱く、優しくて、力強い現場でした。お互いのことを尊敬しあう現場でもあったので、そういう場所から生まれた作品がどういうものなのかを映画館で観てほしいです。



■作品紹介
『るろうに剣心』
8月22日(水)、23日(木)、24日(金)先行上映決定!
8月25日(土)全国ロードショー!!
佐藤健 武井咲 吉川晃司 蒼井優 青木崇高 綾野剛 須藤元気 田中偉登 奥田瑛二 江口洋介 香川照之
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社 ジャンプ・コミックス刊)
主題歌:ONE OK ROCK ”The Beginning”(A-Sketch)
監督:大友啓史
脚本:藤井清美 大友啓史
音楽:佐藤直紀
製作:「るろうに剣心」製作委員会
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:http://www.rurouni-kenshin.jp

○ストーリー
幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられていた伝説の剣客・緋村剣心。彼は明治という新しい時代の訪れとともに姿を消し、「不殺(ころさず)」の誓いをたて流浪人として旅をしていた。ある日、「神谷道場」の師範代をつとめる薫を助けたことから薫のもとで居候することになるが、その頃、街では剣心のかつての呼び名・抜刀斎を名乗った人斬り事件が勃発していた…。

(C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会