ディーゼル車の正しい使い方とは?【マツダCX-5試乗】
現在好調以上に販売が推移し、その7割がディーゼルということで注目を集めるCX-5ですが、ここでディーゼルに向かない使い方も紹介しておきたいと思います。
昨今、ディーゼルを希望される方は燃費や動力性能に加えて、世界一厳しい日本の排ガス基準をクリアしたディーゼルを応援しようという方が多いと聞きます。
その気持ち、よーくわかります。
まだまだ誤解している方も多いようですが、ディーゼルの燃料となる軽油はわざわざ作るのではなく、重油からガソリンを精製する際に作られてしまうもの。ですが、日本は軽油の消費量が少なく海外に輸出している状況。
ガソリンの消費を減らして軽油の需要を増やせれば、結果的に石油の輸入量を減らせますからね。こうした観点でもディーゼルに注目が集まるのは環境問題が定着していることだと感じます。
ですが、ディーゼルの特性についてご存じない方もいるようです。
ここでいったんCX-5やディーゼルとは話が離れますが、そもそも工業製品はある一定の状況や期間を使用することを前提に作られています。
例えばクルマの場合、真夏の渋滞に耐えられて、かつ極寒や降雪でも問題なく使えることが大事。そのための性能が盛りこまれています。こうしたことから一般論ですが一度エンジンをかけたら、10km以上は走行することがクルマを長持ちさせる秘訣ということです。
エンジンオイルやミッションオイル、ミッションフルードといった、金属部分だけでなくオイルや液体まで温まった状態まで使うことが望ましく、全てが暖まって本来の性能が発揮できる使い方が長持ちさせる秘訣というわけです。つまり短距離ばかりはクルマには厳しいのですね(もしかしたら冷蔵庫の電源を毎日抜き差ししたら壊れる?)。
タクシーやトラックが何十万kmも走行することに驚く方がいますが、適切な状態で運用すれば、クルマは長持ちします。当然メンテナンスや使い方という問題も関係しますが、距離を乗らなければクルマは痛まないというのは間違いです。
実際、開発の方に話を伺いますと「短距離走行ばかり繰り返す乗り方はクルマにとってシビアな使い方で日本ではそれが増えている」なんて話も多く(実はずいぶん前から)、日本車の信頼性に貢献していると思いますが、クルマにとって過酷な使い方が多いというわけですね。
もちろん日本メーカーを始め海外のメーカーも、高温多湿でひどい渋滞があって極寒降雪もある日本で開発を行なっていますから、神経質になる必要はないと思います。
ですが短距離ばかりの方は、実は結構クルマには厳しい使い方であることをご理解下さい。
そこで話は戻りますが、ガソリンよりもディールにはこの短距離走行がつらい状況です。ディーゼルはガソリンのように点火プラグで爆発をさせていないことから、始動が苦手です。
加えて最新のディーゼルは、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター:黒鉛を除去するフィルター)がついていて、これは定期的にメンテナンスをする必要があるのです。
メンテナンスといっても一度にある程度長距離を走れば自動でクリーンになってくれるため、距離を走る方なら問題はありません。また尿素を使うことなくNOxを処理できますから、ユーザーがデメリットを感じる必要はないでしょう。
とはいえ、CX-5に限らず全てのクルマ、特にディーゼルが短距離ばかりの走行を苦手としているのは事実です。
長距離輸送でディーゼルトラックが主流なのは長距離を走るのに低コストだからであり、工場内の輸送に電気で動くフォークリフトが多いのは、それが短距離に適した電動だから。適材適所があるのです(その中間がガソリンやハイブリッドですかね)。
もちろん定期的にディーラーでメンテナンスしてもらえれば問題ないわけで、それでもディーゼルを買う! という方にどうこう言うつもりはありません。
確かにCX-5は始動にガソリンよりも手間がかかるディーゼルにもかかわらず、アイドリングストップなど既存のディーゼルの概念を一新する優れた性能を持っています。またDPFの稼働中はアイドリングストップを行なわないなど、短距離走行も考慮されておりスゴイです。
しかしスカイアクティブ・ディーゼルもディーゼルなワケです。現時点ではやはり三つ子の魂百までだと思います。
ワタクシの周囲にも環境や経済性といった観点からディーゼルを検討されている方が多数いるのですが、「普段は毎日片道数キロの送り迎え、週末も片道10km弱のショッピングセンターまでの往復」といった使い方ではディーゼルの恩恵には授かるのは難しいと思っています。せめて月に一度でも高速走行してくれれば、なんて思っています(しかも燃料で価格差を埋めるのは難しいかと)。
せっかく芽生えたディーゼルへの興味を、買ってみたけどそれほど良くなかったなんて評判にはしたくありません。
ディーゼルをご検討の皆様、是非ご自分のスタイルにあった車両を選択してください!
もちろん普段は短距離だけど、月に1〜2回は高速に乗って遠くまで走る! なんて方は価格からは想像できないほどの恩恵に授かれるでしょう。
ですが技術は万能ではありません。ぜひ自分の使い方にあった、クルマ選びをしてくださいね!
(佐藤みきお)
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