【編集部的映画批評】五感を失う感染症に冒された男女が、最後に感じたもの
2012年最初の週末を迎えようとしていますが、2011年を振り返った時に誰もが思い浮かべるのは、3月に東日本を襲った震災ではないでしょうか。自然の猛威を前に人間の無力さを痛感する一方で、復興に向けて互いに手を取り合い、前進しようとする人間の強さもまた感じた一年でした。失って初めて気付かされる、何気ない日常の大切さ。1月7日に公開された終末の物語『パーフェクト・センス』は、そんな今の日本に希望を与えるラブストーリーです。
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パーフェクト・センス
科学者のスーザンはシェフのマイケルに道端で声をかけられて、たちまち恋に落ちる。しかし世間では“五感“がひとつずつ失われていくという原因不明の感染症“SOS“が大流行。謎の病にマイケルたちも冒されてしまい、ふたりの愛も大きな試練を迎える。五感を徐々に失われる、恐怖と闇に覆われた世界
ウイルス等の感染が広がり、世界中がパニックに陥る作品は過去にもありましたが、『パーフェクト・センス』で描かれるのは、運命的な恋に落ちた男女の姿。快楽主義者のシェフであるマイケルを演じるのは、昨年8月に公開された『ゴーストライター』の主演も記憶に新しいユアン・マクレガー。彼の相手役に『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年公開)でボンドガールに抜擢されたエヴァ・グリーンが、感染症学者スーザンを演じます。また、ユアン・マクレガーの初主演作『トレインスポッティング』でも共演しているユエン・ブレムナーが、本作ではレストランの同僚として登場し、公私共に仲の良さを見せています。運命に導かれるように出会い、愛を知った男と女
「SOS」と名付けられた感染症で、五感の内まず最初に失われるのが嗅覚。五感が失われる前にはそれぞれ異なる症状があり、人々は突如深い悲しみに襲われ、涙を流したかと思えば、自らの嗅覚が失われていることに気付きます。続いて味覚、聴覚と、五感を失う度に恐怖や憎悪の感情に襲われた人々は暴徒化し、世界は破滅へと向かいます。しかし驚くべきは、人間誰もが生まれながらに身に付けている生命力。嗅覚に続き味覚を失った人々は残りの感覚を研ぎ澄ませ、レストランには食べ物の温度や感触を楽しもうとする客で溢れ、マイケルとスーザンはかけがえのない絆を育んでいきます。人類最後の瞬間、あなたが求め、感じるもの
心を閉ざしたキャリア・ウーマンが真実の愛に目覚めていく変化を、繊細な演技で表現したエヴァ・グリーンは「私たちは物質社会に暮らしていて、欲しい物がいつでも簡単に手に入ってしまう。恋愛関係でも問題があると解決することよりも次へ進むことを尊重しがちだと思う。この映画は”愛”の性質を描いていて、それはとても美しいと思う。すべては愛があってこそ。この瞬間を大事にする事が大切。」と述べています。猛威をふるう奇病が地球全土を暗黒の闇で覆い尽くそうとする時、あなたにとって最後の光となる希望は何でしょうか。・パーフェクト・センス - 作品情報