ベルギー・ブリュッセル市内のカカオ・チョコレート博物館ではプラリーヌ作りの実演も見学できる。

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世界的に有名なベルギー・チョコレート。ゴディバやノイハウスといった定番からピエール・マルコリーニ等、一度は耳にしたことのあるブランドは多い。チョコレートの原料となるカカオは、寒冷なヨーロッパではなく温暖な中南米が原産だが、なぜこれほどヨーロッパ人はチョコレートが好きなのか? 本場ベルギーでチョコレートの由来について聞いてきた。
「もともと、カカオは中南米に興ったマヤ文化圏で栽培されていました。カカオは貨幣の代わりに用いられていたこともあります。また、ショコラトルと呼ばれるカカオから作られた苦い飲料も、当時の人々の間で飲まれていました。ちなみに、15世紀から16世紀にメキシコ中部に栄えた王国アステカの神話では、羽毛を持つ蛇の姿をした神ケツァルコアトルが、カカオの木を運んできたと伝えています」(カカオ・チョコレート博物館)

初めてヨーロッパ人がカカオの存在を知るのは、1502年のコロンブス4度目のアメリカ航海の時だ。そして、後にスペイン人がカカオをヨーロッパへ広めることになるのだが、最初カカオの味は彼らの口に合わず、なぜ現地の人々がカカオに熱中するのか理解できなかったそうだ。しかし、一度その味がアメリカ大陸へ渡ったスペイン人たちに受け入れられると、カカオは大きな成功をおさめることになった。
「スペイン人、エルナン・コルテスが1528年にメキシコから本国へチョコレート飲料を持ち帰ると、瞬く間に人気となりました。その成功に主要な役割を果たしたのは修道士です。修道院は適期的に船荷とともに新しい製品を受け取り、チョコレートを広めたのです。その後、スペイン国王フェリペ3世の娘、アンヌ・ドートリッシュが1615年にフランス国王ルイ13世へ輿入れする際に、チョコレートはフランスへ持ち込まれます。そして1635年にベルギーの町ゲントに伝わりました」(同)

ちなみにベルギー人の場合、一人平均年間で8.4kg(!)のチョコレートを食べるそうだ。そんなベルギーのチョコレートの特徴とは何だろうか? 
「ベルギーで考案されたスタイルに、プラリーヌというものがあります。これは1912年にベルギー人のジャン・ノイハウスが考えたもので、ナッツ等に飴をからませペースト状にしたものをチョコレートで包んだお菓子です」(同)

今やよく知られている形状の一つは、実はベルギーが発祥だったのだ。これから冬に向けてますます時期となるチョコレート。小さな一粒には様々な歴史が含まれているのですね。
(加藤亨延)