「ス」の形をしたイス、『スイス』。

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今まで生きてきた中で、一番衝撃的だったダジャレは「靖子のレンジは、使いやすこ」だろうか。あの臆面の無さ。力技とは、あのことを言うんだろう。

そして、あの時のダジャレをフラッシュバックさせる、強烈な家具が発売されている。株式会社人間が、5月から商品化しているイスのことだ。その名も、『スイス』。
画像をご覧いただければ、全てをわかっていただけるのではないか? 「ス」の形をしたイス。もう、これ以上説明したくない。

答えはわかりきっているのだが、このイスを制作したきっかけを聞いてみた。
「特にないんですけどね。思いつきました」(同社・花岡さん)
ダジャレを思いついたのだ。

だが、「ス」をチョイスしたのには、もう一つ重大な理由がある。
「カタカナの形で座れる文字って、『ス』しかないんですよね。『ア』も『ナ』もダメなんです」(花岡さん)
本当だ……。安定しなかったり、心地よく座れなかったり。『アイス』も『ナイス』も、ダメなのだ。

そんな『スイス』は、今までに1個売れている。
「スイスにお住いの日本人の方に、ご購入いただきました」(花岡さん)
確かに、日本語がわかる人にしか理解できないユーモアかもしれない。ちなみに、『スイス』を購入した方のお名前は「神谷未夏さん」。上から読んでも下から読んでも「カミヤミカ」だけに、言葉遊びが好きな方だったようである。

同社には、願いがある。それは、「『スイス』を、スイスの色々な場所に置きたい!」という願いだ。スイスのホテルや空港など、スイス関連施設に『スイス』が置いてある状況が望ましい。
「スイスの空港で、何も知らないスイス人が『スイス』に座り、通りがかった日本人がその姿を見て笑う、という構図が目標です」(花岡さん)
また、エスプリの効いたユーモアだよ。

しかし、フザけてばかりではない。この『スイス』、密かに物が良いのだ。
「よく、『鉄でできているんですか?』と聞かれるのですが、木工なんです。中は空洞になっており、枠を作って板を貼って制作しています」(花岡さん)

これが、非常に高度な技術を必要とする作り方だそう。特に、「ス」の下に伸びる微妙な曲線を、繋ぎ目の無い状態で表現するのが大変。
「安くて手軽な商品だったら、ただのシャレで終わってしまうんですよね。時間をかけて作っておりますので、そんなクオリティの部分に関してもわかってもらえたら嬉しいな……、と思っています」(花岡さん)
価格は、39,800円(税込み)。

そして、同社は“売り込み”に対しても熱心だ。
「大阪には『スイスホテル』が、東京には『スイスエアライン』という会社があります。これらの企業に『何で置いてないんですか?』くらいの勢いで、売り込みに行くつもりです」(花岡さん)

そして、『スイス』には賛同者もいる。「株式会社人間」の独特過ぎる姿勢に魅かれた、都内在住の支持者が、ある試みを実施中。品川にお住いの前田さんが行う活動は、その名も“旅するスイス”。早速、ご本人にお話を伺ってきた。
「今年の春に、“人間さんを囲む会”のような形のオフ会が開催され、そこに参加したのがきっかけでした」(前田さん)

その日以来、前田さんは「株式会社人間」に夢中! 同社の動向を追い続け、その流れで『スイス』にも衝撃を受けてしまう。それからは、『スイス』をわざわざ取り寄せて街にくり出し、街行く人に座ってもらうという熱烈な支持活動を敢行。
「今まで、隅田川やスペイン坂、スカイツリー、巣鴨、砂町商店街などに行ってきました」(前田さん)
……お気づきだろうか。どこも、頭文字が「ス」だ。

私も“旅するスイス”が行われている様子を見ていたのだが、このイスを置いているだけで「何だ、コレ?」と、寄ってくる人が多数で。
「世の中には、シャレをわかってくれる人が多いんですよね。イスで笑顔になるって、ナカナカ無いじゃないですか」(前田さん)
実は、みんなが『スイス』に座っている姿を写真に収め、将来的には個展の開催も狙っているそうだ。

写真を見ていただきたい。足を組んだら、その形が「イ」に見えないか? この部分とイスを合わせた全体像を見ると、「イス」のシルエットになる。紛れもなく、『スイス』だ。
(寺西ジャジューカ)