イヤリングで測定。

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脈拍を取ろうと手首や首の横辺りをいくら探っても、なかなか見つからない人がいる。「この人、脈がない!」とか諦められちゃったり、縁起でもない冗談だ。

ところで、半導体メーカーのロームが面白い物を開発している。今年の10月に開催された最先端IT・エレクトロニクス総合展「シーテックジャパン2011」で同社が発表した『テクノジュエル』は、脈拍数や脈波、心拍数を測定できる“アクセサリー”。身に着けているだけで、簡単にそれらを調べることができるのだ。

でも、どうしてアクセサリーの形にしたのか?
「一人ひとりが日常的に健康管理を行う『セルフヘルスケアの時代』の到来に向け、気軽に正確に健康チェックが出来るセンサを当社では開発しております。また、一般的にセルフヘルスケアの要求は女性の方が高いと考え、時計やイヤリングのようなデザイン性溢れる外観としました」(同社・担当者)

まず、大前提としてご説明させていただきたい。今回の『テクノジュエル』は、内蔵している「脈波センサ」等のアプリケーション例として開発・展示した物だということ。この形で、そのまま商品化を行うわけではないそうだ。

その事実を踏まえ、心置きなく今回の『テクノジュエル』のことを聞いていきたいと思います。まず、このアクセサリーの使い方について。
「イヤリングタイプとブレスレットタイプがあり、測定したデータを無線でスマートフォンなどに送信します。そして、この機能を“ストレス度”などのチェックに利用します。現在は、電通国際情報サービスと立命館大学との共同開発で、新しいアプリの展開も検討しております」
その開発中の新アプリとは、どうやら2つある模様。まず、脈波センサの測定データを解析して人の感情を表現する『感性アプリ』。そして、脈波の変化に応じて音楽を変化させる『脈音〜MyacNe』のことである。
それにしても、気軽に測定できるモンなんだな……。

ところで、本当にゴメンナサイ。今さらだけど、この『テクノジュエル』で測定できる「脈波」って何? 聞き覚えが、あるような無いような……。
「身体組織のある部分への血液の流入によって生じる容積変化を、体表面から波形としてとらえたものを『脈波』と言います。これを測定することで、血管運動反応をとらえます」(担当者)
これまで脈波は、病院の大型機器で安静にした状態じゃないと測ることができなかったそうだ。でも、それらがイヤリングやブレスレットで測定できてしまう。いきなりの、ものすごい進歩じゃないですか!

ただし、課題が無いわけではない。まず測定する際には、人の状態を気にしなければならない。例えば、ウォーキング程度の運動時ならば測定できるのだが、激しい運動をしている最中に測定はできない。なるほど、運動時に測定したい場合もあるだろうから。
また「長時間計測」と「機器の小型化」を実現する為には、低消費電流化技術が課題となってくる。主に、無線部での低消費電力化が改良すべき点である。
同社では1〜2年後の商品化を目指しているようなので、それまでにはきっと成し遂げてくれるに違いない。期待したい。

正直、今回のアクセサリーは衝撃的だった。ただのお洒落アイテムに見せかけて、実はヘルスケアのために頑張っているという意表の突き方が。
未来はもう、すでに来ている。
(寺西ジャジューカ)