商店会の皆さんに導かれ、宮ノ下の裏側へ!
撮影:朝岡英輔

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温泉の街を散歩するワークショップがあると聞いて、先日、神奈川県の箱根・宮ノ下に行ってきた。このワークショップは、今年から始まった地域振興イベント「宮ノ下さんぽ」(開催期間は10月の一か月間)の一環で、地元商店会の方々がガイドとなって街を案内してくれるという。
この日の参加者は約10人ほど。ツアーの前半は足湯が楽しめるカフェや、歴史ある富士屋ホテルなど、温泉地特有のさまざまなスポットをめぐり、その先々でガイドのおじさんたちが箱根の歴史を語ってくれた。

さて、ここまではいわゆる観光案内という感じであるが、このツアー、後半からガラッと雰囲気が変わるのだ!
富士屋ホテルの裏手にある住宅地に移動した私たちはおじさんガイドに導かれるまま、静かな路地を歩き始めた。地元に住んでいなければ、迷ってしまいそうな住宅街。飾り気のない路地を歩いていると、観光というよりは、なんだか自分が小学校の頃に見ていたテレビ番組『たんけんぼくのまち』の世界にいるような気分になってきた。
ガイドさんによると、この辺りは昔、芸者さんの置屋街だったらしく、「楽天地」と呼ばれたところらしい。今は静かな住宅地だが、昔は三味線を練習する音などがこの一帯に響いていたそうだ。

そんな話をしていると、ガイドさんが突然その場にしゃがみこんだ。彼は道の端にあるパイプのようなものを指差すと、おもむろに語りはじめた。
「このパイプの中には温泉が流れていて暖かいんですよ。昔自分が小学生だった頃、冬の寒い帰り道はこれに手を触れて……」
箱根の山の冬はとても冷える。そんな中、温泉地の子どもたちはパイプを触ることで暖を取っていたらしい。少年時代の思い出が去来したのか、遠い目をするガイドさん。目の前のおじさんの少年姿を想像する私。

ほどなくして、ツアーの一行は資材置き場のような、だだっ広い空き地に出た。ここは先ほど案内してもらった富士屋ホテルの裏の敷地らしく、従業員通路も見える。ツアーには先ほどの足湯カフェのオーナー安藤さんも同行していたが、今度は彼が目をキラキラさせながら語った。
「ここは私の通学路だったので、学校帰りに従業員通路からホテルの中に侵入して、見つかったら急いで逃げたりしてました」
殺風景なこの場所はお世辞にも観光スポットとはいえないが、見晴らしがとてもよく、ここから宮ノ下の街を一望できる。子供の頃の秘密基地にいる気持ちになって、安藤さんの少年時代を想像するコネタ取材班。
こうして、目の前のおじさんたちが次々と目を輝かせてウットリしてしまう!! という予想外の展開に驚きながら、住宅街を抜けた一行は15時頃にゴール地点である駐車場に到着した。

散歩ワークショップが無事終了し、笑顔で手を振って私たちを見送るガイドの皆さん。観光ツアーでは味わえないお得感のあるこのワークショップは好評だったようで、全3回すべてが定員いっぱいだったらしい。
もしかしたらガイドのおじさんたちが一番楽しんでいたような......そんな気もしないでもないが、地元を愛する人たちと歩きながら、気付けば自分も宮ノ下がとても好きになっていた、そんな素敵な一日でありました。
(小島ケイタニーラブ)