ベンチの裏側に、密かに収まる『かまどセット』。

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地震が起こったら、建物の外に出るべきなのだろうか? 3月の震災以来、色々な説があることを知った。正直、どちらが正解かは断言できない気がする。外に出た方が良いシチュエーションもあれば、建物の中にいた方が安全というタイミングもあるだろう。

そこで、こちらを紹介したい。株式会社コトブキが開発した『かまどセット』は、災害時に活躍するアイテム。普段は公園のベンチに収納されており、鍋などを用意すれば炊き出し用のかまどとして使うことができる、“災害時にかまどになるベンチ”である。

実は同社では11年前から、今回の『かまどセット』ではなく、『かまどベンチ』なる商品を販売している。こちらは、95年の阪神・淡路大震災をきっかけに開発された商品。
端的に言えば、『かまどベンチ』はその場で使用する“固定式”のかまどで、今回の『かまどセット』はベンチから取り外して好きな場所に運ぶことができる“移動式”のかまど、と表現できよう。

まず、『かまどベンチ』が2000年に発売された経緯についてご説明したい。
阪神・淡路大震災では建物の倒壊が多く、結果的に公園が重要な避難場所として機能した。その状況を受け、当時の建設省を中心に“防災に対応する公園づくり”を推進していく動きが起こり始める。
それと同時に、避難生活の際に公園で炊き出しが行われた経験から「公園にかまど機能があれば……」という声が上がり、誕生したのが『かまどベンチ』だった。

そして、次第に全国で防災化が加速。結果、様々な公園で『かまどベンチ』が導入されるようになった。
そんな中、設置を検討する自治体の中から「既存のベンチを活かして防災化できないか?」という声も上がり始めたという。

また、最大の転機は今年の3月に起こった東日本大震災であった。この時は、被害の形が阪神・淡路大震災とは少し違っていたのだ。
東日本大震災では、建物内に避難する方が大半だった。要するに、公園内で使うことを想定した『かまどベンチ』が存分に活躍したとは言いづらい状況だったのだ。

それらの事実を踏まえ、形になったのが今回の『かまどセット』である。地震などの自然災害は、必ずしも想定していた形で起こるものではない。想定していなかった状況でも活躍できるよう、ブラッシュアップされて“移動式”になったのだ。

そこで、今度は『かまどセット』の方の使い方についてご説明を。今回のかまどは、ベンチに収納して設置するオプション製品とお考えいただいた方がいいだろう。既存のベンチに対する純粋にオプションとしてのみの購入(7万6000円〜)も可能だし、ベンチと共に……という形(20万550円〜)でも購入できる。
「後付けすることで、今あるベンチを“防災用”にします。そして何かがあった時に、かまどの部分だけを外して移動することができます」(担当者)

“防災用”になったベンチは、座面の裏側にステンレスのかまどが取り付けられている。そこから使用する場合は、大人が二人いれば3分ほどで完全なるかまどに組み立てられるそうだ。(重量は12〜17キログラム)
かまどには風除けと燃料の受け皿が付いており、最大45リットルの鍋で調理することができる。

では、どのようなベンチに取り付けられるかについて。それは、同社のホームページに掲載されているカタログを参考にしていただきたい。長方形の形をした四角いベンチから、曲線を描いた“サークルベンチ”と呼ばれるタイプまで、幅広く対応している。
「基本的には、公園や学校、マンションなどの公共スペースに設置することを目的に開発された商品です。ただ、ご希望であれば一般の方への販売も致しております」(担当者)

「備えあれば憂いなし」という言葉があるが、今回の『かまどセット』は“備え”の上に、再びの“備え”を重ねた改良版。
これからは、町全体が意識を変えていく必要があるかもしれない。
(寺西ジャジューカ)