男女“連れション”考
3才になる筆者の娘は、トイレをもよおしても父とは行きたがらない。いっしょに行くのは、決まって母親である。まだ小さいとはいえ、そこは女の子。男性とトイレへ行くのは恥ずかしいらしい。体だけでなく乙女心も、どうやらしっかり育っているようだ。
妻といっしょにトイレへ行く娘の姿を見て、ふと思った。「女性って、“連れション”好きだよなあ」。大人になるとそうでもなくなるのだろうが、子どもや学生の頃、女子は決まって、誰かと連れ立ってトイレに行っていたように思う。
女性にとって、トイレはただの用を足す場所ではないようだ。住宅設備機器・衛生陶器で知られるINAXが実施した「トイレ女性意識調査レポート」によると、男性に比べて女性はトイレのインテリアやデザインに強いこだわりを持ち、あたかもリビングのような意識があるという。
また、同レポートでは、女性はトイレに平均で30分程度の長居をするという結果も報告している。さらに、女性は「泣きたいとき」「悲しいとき」など心が動かされたときにもトイレを利用する傾向にあるとか。まさに、トイレは“乙女の部屋”といえよう。
そんな特別な場所だからこそ、そこへ誘うかのように、女性は友人を伴って“連れション”をするのかもしれない。……いや、でも待てよ。女性のトイレは個室である。トイレまでは連れ立って行けるが、用を足すときは別々の部屋に入ることになる。
翻って、男性は文字通り顔を並べて用を足す(小用の場合)。友人や知人が隣にいようものなら、用を足しながら挨拶を交わしたり、世間話をしたり……。これは、女性にはできないことであろう。
思えば、筆者も子どもの時分に、よく友達といっしょにトイレへ行ったものである。トイレへ行っては、おたがいのものを比べっこしたり。同じ便器に二人で肩を並べておしっこをしたり。おしっこをクロスさせて、笑いあったり。
そう考えると、女性の方が男性よりも“連れション”率が高いとは一概にいえなさそう。トイレで用を足すことも遊びのように楽しむ子供世代の場合、女子よりも精神的に幼いとされる男子の方が“連れション”によく行くのかもしれない。男子の場合はおたがいに用を足す姿をさらけ出すわけなので、より“連れション”の意味合いが強いともいえよう。
ただ、女子の場合には用を足す姿を見せ合わない分、トイレまでいっしょに行こうとする傾向は男子より強いのかも。「トイレへ連れ立って行く」が女子の“連れション”、「トイレでともに用を足す」のが男子の“連れション”と定義してみる。
『江戸の女たちのトイレ−絵図と川柳にみる排泄文化』という本には、「急ぐ道 小便までも 言い合わせ」との川柳が紹介されている。この川柳は、江戸時代に女性たちは外出前、おたがいにトイレは大丈夫か確認し合っていたことを表している。もしかしたらこの意識が現代の女性たちにも根付き、無意識に互いを思いやるべく“連れション”へ行くのだとも考えられる。
男女ともにいえることは、“連れション”は友情の証ということではないだろうか。少しでもいっしょにいたい。話したい。楽しみたい。そんな気持ちで、“連れション”へ行くのだと思う。子供っぽい行動かもしれないが、用を足すという無防備な行動をともにすることで、仲間意識も深まるのかもしれない。
大人になると、誰かを誘ってトイレに行くこともなかなか無くなる。3才の娘にいっしょのトイレを拒まれる筆者だが、現在0才の長男が大きくなったら、彼と“連れション”へ行くこともあるだろう。そのときは、筆者が子供の頃の“連れション”話でも聞かせてあげたいと思う。
(木村吉貴/studio woofoo)
妻といっしょにトイレへ行く娘の姿を見て、ふと思った。「女性って、“連れション”好きだよなあ」。大人になるとそうでもなくなるのだろうが、子どもや学生の頃、女子は決まって、誰かと連れ立ってトイレに行っていたように思う。
また、同レポートでは、女性はトイレに平均で30分程度の長居をするという結果も報告している。さらに、女性は「泣きたいとき」「悲しいとき」など心が動かされたときにもトイレを利用する傾向にあるとか。まさに、トイレは“乙女の部屋”といえよう。
そんな特別な場所だからこそ、そこへ誘うかのように、女性は友人を伴って“連れション”をするのかもしれない。……いや、でも待てよ。女性のトイレは個室である。トイレまでは連れ立って行けるが、用を足すときは別々の部屋に入ることになる。
翻って、男性は文字通り顔を並べて用を足す(小用の場合)。友人や知人が隣にいようものなら、用を足しながら挨拶を交わしたり、世間話をしたり……。これは、女性にはできないことであろう。
思えば、筆者も子どもの時分に、よく友達といっしょにトイレへ行ったものである。トイレへ行っては、おたがいのものを比べっこしたり。同じ便器に二人で肩を並べておしっこをしたり。おしっこをクロスさせて、笑いあったり。
そう考えると、女性の方が男性よりも“連れション”率が高いとは一概にいえなさそう。トイレで用を足すことも遊びのように楽しむ子供世代の場合、女子よりも精神的に幼いとされる男子の方が“連れション”によく行くのかもしれない。男子の場合はおたがいに用を足す姿をさらけ出すわけなので、より“連れション”の意味合いが強いともいえよう。
ただ、女子の場合には用を足す姿を見せ合わない分、トイレまでいっしょに行こうとする傾向は男子より強いのかも。「トイレへ連れ立って行く」が女子の“連れション”、「トイレでともに用を足す」のが男子の“連れション”と定義してみる。
『江戸の女たちのトイレ−絵図と川柳にみる排泄文化』という本には、「急ぐ道 小便までも 言い合わせ」との川柳が紹介されている。この川柳は、江戸時代に女性たちは外出前、おたがいにトイレは大丈夫か確認し合っていたことを表している。もしかしたらこの意識が現代の女性たちにも根付き、無意識に互いを思いやるべく“連れション”へ行くのだとも考えられる。
男女ともにいえることは、“連れション”は友情の証ということではないだろうか。少しでもいっしょにいたい。話したい。楽しみたい。そんな気持ちで、“連れション”へ行くのだと思う。子供っぽい行動かもしれないが、用を足すという無防備な行動をともにすることで、仲間意識も深まるのかもしれない。
大人になると、誰かを誘ってトイレに行くこともなかなか無くなる。3才の娘にいっしょのトイレを拒まれる筆者だが、現在0才の長男が大きくなったら、彼と“連れション”へ行くこともあるだろう。そのときは、筆者が子供の頃の“連れション”話でも聞かせてあげたいと思う。
(木村吉貴/studio woofoo)