女優の寺島しのぶといえば、映画「キャタピラー」(若松孝二監督)で今年ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した、日本の代表的な女優である。ところがそんな彼女もはじめから女優を志していたわけでは無かったのだ。

父親は歌舞伎役者の尾上菊五郎で母親は女優、富司純子という両親を持つ寺島しのぶが女優の道を目指しても不思議ではないだろう。歌舞伎役者は弟の尾上菊之助にまかせたとして、彼女は幼少の頃から劇団などで活躍していたイメージがある。
しかし、実際に劇団文学座に入ったのは大学時代であり、青山学院の高校時代まではハンドボール部で活躍していたのだ。

これは、8月5日に放送されたテレビ「5LDK」(フジ系)に出演した寺島しのぶが自らの過去を明かしたものだ。
彼女は、中高生の頃は真剣に女子プロレスラーになりたいと考えていた。当時の人気レスラー、ジャガー横田やクラッシュギャルズに憧れてはいつも技の研究に余念がなかった。
そこで技をかける相手をさせられたのが弟の尾上菊之助である。彼女の得意技はジャイアントスイングで菊之助の脚を抱えては振り回していた。
(ジャイアントスイング:故ジャイアント馬場の必殺技で相手の両脚を両脇に抱え込み、自分の体を軸に回転させてグルグルと振り回す豪快な技)

歌舞伎界つながりで兄弟の幼馴染みには十一代目市川海老蔵がいる。特に菊之助とは同級生でもありよく遊びに来ていた。そして海老蔵もしのぶの格好の技の練習台となったのだ。
「ドアから入ってくるなり、ジャンピングニーパッド(飛び膝蹴り)をきめてました」と彼女は海老蔵との思い出を話した。

年下の男どもでは物足りなくなったしのぶは、ついに父親の尾上菊五郎へ向かっていったのだ。子ども相手にプロレスごっこをする際にはある程度手加減するものだが、彼女の父は違っていた。死力を尽くしても彼女は負けてしまったのだ。父は何ごとも全力であたることを教えようとしたのではないだろうか。
しかし、当時の彼女にはそんなことは分からず、悔し泣きしたのである。そして、その日をきっかけに父娘の関係がギクシャクしだしたというのだ。

そうしてプロレスに没頭していた寺島しのぶも高校のハンドボール部で活躍する。青山学院の同部は蓮舫や尾崎豊も所属したという、いわばスター性がある者が集まるところでもあった。彼女もここで芸能界に目覚めたのか大学時代に演劇へと進むのだ。

今や実力派の名女優となった寺島しのぶにこのような時があったとは思えぬ意外なエピソードだ。特に小林麻央との結婚披露宴をおこない話題の人となっている海老蔵が、寺島しのぶに飛び膝蹴りをされる姿を想像すると、失礼ながらつい笑ってしまうのである。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)

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