【オピニオン】短期利益追求の「労働の商品化」は国と企業の活性化を妨げる−日本人材ニュース
 大学で時々「雑学」を教えている。講義をしていて学生たちの反応が変わる瞬間がある。「人に聞いてほしい話はキーワードを先に言え」とか「質問がうまいやつはもてる」とか、人生を渡っていくのにカギとなるハウツーについて話したときだ。突っ伏して寝ていた学生もやおら上体を起こし、「なになに」といった顔になる。学生たちはそれだけ社会生活の処方せんに飢えている。

 夏の終わり、授業の後である学生が教壇に近づいてきた。小生が時折繰り出すハウツー話に最も敏感に反応していた彼は「おかげさまでA銀行に決まりました」と言って照れ笑いを浮かべた。

 「おう、ハウツーが役に立ったか。A銀行なら超一流じゃないか」。そう言うと彼はちょっと浮かぬ顔で「でも、初任給17万円なんですよね」とぼやいてみせた。

 初任給17万円。これは高いのか、安いのか。確かに企業にとっては社会人1年目は戦力とはいえない。給与は労働の対価というより初期投資に近いだろう。

 だけど、17万円は物価の高い首都圏で部屋を借り、メシを食っていくには厳しい額だ。他に家賃補助や福利厚生があるのかもしれないが、額面だけみれば20年前とそう変わらない。

 日本のGDPは過去20年で5割は拡大している。企業もここ数年、最高益を更新し続けている。それでも社会人1年生の価値は変わらないのか。



 「働く」ということは、多くの人間にとって人生の大きなテーマだ。だが、バブル崩壊以降の日...(もっと読む


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