恐るべき筋肉量を誇るクリス・サイボーグ。暴力的なまでの打撃が最大の持ち味だ

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30日(土・現地時間)、フロリダ州マイアミ郊外サンライズのバンクアトランティック・センターで開催されるStrikeforce 「Miami」。同イベントではUFCにはないストライクフォースの一つの基軸=女子MMAの頂点を争う戦いが行われる。それがストライクフォース女子世界145ポンド級世界選手権試合クリス・サイボーグ×マルース・クーネン戦だ。

シュートボクセの人材育成大会ストーム・サムライでキャリアを重ね、08年7月にエリートXCで全米デビューを果たしたサイボーグ。同年2月のEXC第1回大会で大化けしたジナ・カラーノのライバルとして、一躍注目されるようになった。

同年10月のCBSライブ大会=高橋洋子戦で、その勇姿が録画中継ながらも全米に流され、ジナとの対戦が事実上決定したが、その後EXCが活動停止となり、両者の対戦は暗礁に乗り上げた。

EXCが種を蒔いた米国の女子MMAの普及。ストライクフォースは契約とともにその志も引き継ぎ、昨年8月にサイボーグ×ジナをSHOWTIME中継のメインで組み、女子MMAとして初めて5分×5R戦を実現させた。この一戦でTKO勝ちしたサイボーグが、ストライクフォース女子世界ライト級王者に君臨することとなった。

ジナ中心の女子MMAから、本格的な普及を目指すストライクフォースは、彼女が属する145ポンドのトップ選手の獲得を図り、ジナ・カラーノ以前に日本の女子総合格闘技をリードしたエリン・トーヒルとマルース・クーネンを獲得した。

オランダの田舎町デーベンターの街で、学校へ通う道が森を抜けないといけないため、その恐怖に負けまいと格闘技を始めたクーネン。ライトコンタクト・カラテと投げ、寝技の関節からなるポイント制の欧州スポーツ柔術を彼女に指導したのが、マルタイン・デヨングだった。

オランダのBMXで数々の実績を残し、将来を嘱望されながら極真空手に転じ、その後スポーツ柔術へ転向を果たしたデヨングが、ブラジリアン柔術を取り入れ、修斗のオランダ(現欧州)代表になる過程で、クーネンもまた女子総合格闘家として成長していった。

18歳でアマ修斗を経験し、日本のプロレス団体LLPWが開催した総合イベントL-1 2000でプロデビューを飾ると、2週間後に同じく東京で開かれたReMixのトーナメントで優勝。準決勝で女スバーンと呼ばれていたレッキー・リーバイを飛びつき十字で下した衝撃と、ペンギンのような愛くるしい押忍のポーズ。このギャップが注目を浴び、オランダ人ながら日本女子総合格闘技界に欠かせないファイターとなった。

女子格闘技黎明期には、パウンド無しマッチや体重無差別のワンデー8人トーナメントを始め、男子のグラップリングトーナメントに出場するなど、戦いの機会を求め続けてきたクーネンだが、日本で女子総合格闘技がビジネス的に成功を収めるに至らないなか、大西洋を越え米国でEXCとの複数契約を結ぶに至る。

しかし、前述したようにEXCは活動を停止し、クーネンの米国行きはストライクフォースの台頭を待たなければならなくなった。昨年10月のCBSライブ中継でサイボーグへの挑戦が一度は決定したが、王者の負傷により、日本で敗れたエリン・トーヒルとの対戦が決定するも、トーヒルが体重を落とすことが難しいと判断され、日本の女子ケージ大会で敗れたことがあるロクサン・モダフェリと対戦することに。

CBS中継開始前に組まれたこの一戦では、右フックでダウンを奪い、バックを獲りに行くがそのまま前方に振り落とされながら腕十字を極め、一本勝ち。パーフェクトウィンで米国デビュー戦を飾ったが録画中継はなく、『ヒョードルの長々としたインタビューを流すなら、クーネンの試合をなぜ中継しない』というファンや関係者の声が飛び交っていた。