前回のコラムでは、サッカー協会という組織がプロ意識に乏しいことを書いた。それはマスコミの責任でもあり、改善しなければならない部分は一箇所だけではないのだけど、プロ意識の欠如は現場、つまりピッチの上にも表れている。

現在(7月10日)、J2第26節終了時の得点ランキングトップは、セレッソ大阪の香川だ。たとえば今の日本代表のFWや攻撃的なMFがJ2に来れば、みんなストライカーに変身するだろう。香川が良い悪いの話ではなくて、それだけJ2のレベルが落ちていることは明らかだ。

問題は、そうした選手たちがオーストラリアレベル、もっと言えばJ1レベルになると途端に点を取れなくなることだ。いわゆる代表“レギュラー”の中で、J1の得点ランキングトップは岡崎の7点。次に矢野、遠藤の5点となる。玉田はどこに行ってしまったんだろう。

日本人選手のレベルが落ちている一因に、競争のなさがある。組織に危機感がないから、現場も廃れていくんだ。日本代表の岡田監督も、アジア枠導入に関して以前、日本人が出られなくなるから問題だ、というような主旨の発言をしていた。それが甘い。W杯ベスト4になりたければ、まず韓国人に勝てなければならないのに。

アジア枠にとどまらず、外国人枠を、たとえば5人なりに増やすべきだと思う。その中で競争に勝ち、レギュラーを獲り、得点つまり結果を残せるようじゃないと、世界に出て勝てるわけがない。そうやって日々切磋琢磨していくのが、強化だよ。

スペイン代表が強いのは、あれだけ各国からレベルの高い選手が来ても、レギュラーで出ている自国の選手が多いから。彼らは日々貪欲な競争原理の中でプレーしているからレベルが上がっていくんだ。

組織も現場も、もっとプロ意識を持たないと、日本サッカーは世界からどんどん遅れてしまうよ。世界で勝ちたいなら、“日本人枠”で選手を守っている場合じゃない。


セルジオ越後 (サッカー解説者) 

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中