今年も本格的に2007-08年シーズンが幕を開けようとしている。百花繚乱の各国リーグが注目を集めるわけだが、昨今“世界最強リーグ”は、プレミア・リーグかリーガ・エスパニョーラか、と言われている。かつて隆盛を誇ったセリエAは後退したといわれているが、それは本当なのか。“世界最強”だと言わしめるのに必要なのは、一流プレイヤーの数か、より攻撃的なスタイルか。バレンシア、チェルシー、そして今季からユベントス。各国の名門を率いてきたクラウディオ・ラニエリ監督は以下のような見解を示している。

「どの国のリーグでも素晴らしいことには変わりない。プレーする国の文化と社会が反映されるからだ。

　イタリア人は狡猾で、相手にプレーをさせないことに重点を置く。ゴールを奪うことと守備に1000通りの細かな戦術を追求する。

　リーガ・エスパニョーラもスペイン人の姿を映し出す。彼の地では美しい人生が望まれ、午睡や闘牛が愛される。あそこでは全ての時間がお祭りのためにある。ゆえにピッチでも、誰もが美しいプレー、ボール・ポゼッションといったサッカーにおける美学的期待を背負うことに留意している。イタリア人はそのようなものをあまり重要視しない。

　イングランドでは、サッカーとは闘争であり競争だ。一つのタックルが興奮を呼び、誰一人としてシミュレーションで倒れる選手はいない。試合に負けても、何も起こらない。ピッチでの出来事が全てだとみなされるからだ」

「これらを前提として、どの国が最も素晴らしいリーグか、ということは軽々しく言えない。（リーグの）クオリティは、（リーグ全体が稼ぎ出す）収入によって違うからだ。
　かつてセリエAが、“7姉妹”と呼ばれた実力伯仲のチームたちによって争われていた頃、全ての一流プレイヤーがイタリアを目指したのは（純粋に）当時セリエAが最も経済的にリッチだったからだ。つまりその意味でイタリアは現在厳しい位置に立たされている。だがこれは一方で、才能ある若手を国内に引きとめ成長を促すことに繋がり、将来的な魅力向上へ力を蓄えることになるだろう」

　一大ビジネスと化した欧州サッカー。現地にいて実感するのは、各国リーグのパワーバランスに、英ポンド高や同じユーロを扱う大陸各国の税制の違いが如実に関与してくることだ。何やら経済学めいた話だが、現代のサッカーのエンターテイメント性はそれを抜きにしては語れないのも事実なのである。