2026年8月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。キャリア部門の第1位は--。

▼第1位 「食えない資格」を取るよりずっといい…荻原博子が勧める、中高年のセカンドキャリアで本当に役に立つもの
▼第2位 東大を目指して19浪、38歳で九大生、60歳で年収180万円…それでも「今が一番幸せ」と笑う男性の"天職の正体"
▼第3位 フランス4.3%、ドイツ9.3%なのに日本だけ25.2%…「死ぬまで社畜」を覆す年金世代の"知られざる働き方"

定年後も働き続けるために、何を準備すればいいのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「資格を取ろうとする人は多いが、苦労して取っても安心はできない。本当に必要なものは意外と会社の外にある」という--。(第3回)

※本稿は、荻原博子『定年後のお金の悩み、解決します』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■一度取れば一生役立つ「実務資格」

今まで行ってきた業務の延長線上に専門的な資格があるなら、それはぜひとも取得しておくべきです。

例えば、不動産業界で働いている人なら、宅地建物取引士の資格を取っておくと有利です。事務所の従業員5名につき1名以上の割合で配置することが定められているので、求職の際に採用されやすくなるというメリットがあります。

旅行関係であれば、旅行業務取扱管理者を取得しておきたいものです。これも、各営業所に配置することが定められています。このように、現場で必要とされる資格は一度取得しておけばずっと役に立ちます。

施設管理の現場で重宝される資格としては、ビルメン4点セットなどと呼ばれるものもあります。これは、電気工事士、危険物取扱者、ボイラー技士、冷凍機械責任者などを指すもので、ビル管理に際して必須の資格になるものです。これらも、今の仕事の延長線上にあるようならぜひ取得しておきましょう。防火管理者など、講習を受けるだけで取得できるものもあります。

たとえ未経験であっても、有資格者はビルの設備管理の仕事につきやすくなるため、50代以降のセカンドキャリアとしても人気です。1つだけではなく、資格を複数取得することで仕事を得やすくなるはずです。

写真=iStock.com/maroke
中高年のセカンドキャリアでは、宅地建物取引士やビル管理に必須の「ビルメン4点セット」のような、現場で配置が義務づけられ実務に直結する資格が本当に役立つ。※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■なぜFPは「食えない資格」なのか

一方で、あまり役に立たない資格というのも多く存在します。

例えば、ファイナンシャルプランナーです。かつてはとても人気の高かった資格であり、資格の王者のように呼ばれたこともありました。けれども、人気でありすぎたゆえに取得する人が多くなり、希少性がなくなってしまいました。金融機関の窓口の人はほぼ全員が取得しており、業界では持っていて当たり前の状態です。

また、カラーコーディネーターなど、持っていても即仕事につながらない資格も多くあります。そのように、仕事につながらない資格や趣味に近い資格は、年々増えています。

それどころか、弁護士や公認会計士、社会保険労務士など、取得するのが難しい士業と呼ばれるような国家資格を苦労して取ったのに、仕事がないということもままあります。もはや、資格があれば安心という時代ではなくなっているのです。

だからこそ、自分にとって何が役に立つ資格なのかをしっかり見極めておきましょう。

■事務職が取るべき資格の順番

今まで自分がやってきた仕事、積み上げてきたスキルやキャリアの強みを補強するものとして、取得することが大切です。事務の仕事をしている人であれば、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)やVBAエキスパートなどのように、まず事務系のパソコン資格を取得するといいでしょう。

その上で、今後必ず重宝されるようになるAIに関する資格を取得します。例えば、ITパスポートや生成AIパスポートなどがあります。

その後に、さらにそれを活用して事務系のSEのような役割ができる基本情報技術者のような資格を取るというように、事務の分野を深めていく方法があります。そこまで身につけていれば、多くのところから役に立つ人材として認められるでしょう。

「50歳になったらもう遅い」「いや、50代前半ならまだ大丈夫」などというように、転職のタイミングについて考えることも増えてきます。現役として転職するのか、あるいは退職後を見据えて動くのかというのも考えどころです。

けれども、年齢を気にして焦るよりも、いい職場が見つかった時がベストタイミングと考えるのがいいでしょう。現在の職場環境にある程度満足していても、それよりも総合的に条件がよいと判断できる話が出てきた時には検討すべきです。

写真=iStock.com/b-bee
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/b-bee

■70歳雇用時代の「ベテランの価値」

実際、今は70歳以上まで働ける制度のある企業がどんどん増えています。2021年には高年齢者雇用安定法の改正によって、70歳までの就業機会を確保することが努力義務になったこともあり、70歳まで働くというのはこれから一般的になっていくでしょう。

もちろん人材不足という理由もありますが、業務内容が関係している場合もあります。今後、AIの活用などで業務内容も変わってくると思いますが、60歳前後のベテランがいなくなると、現在やっている業務を若い世代が担わなければならなくなってしまいます。

けれども、40代以下には新しい時代に対応できるスキルを身につけてもらった方が効率よく仕事が進むので、ベテランに長く働いてもらって、若い世代には新しい分野の仕事を任せ、時代の変化に対応しようという企業も出てきています。

早期退職を積極的にすすめる会社もあれば、できるだけ長くいてほしいと考える会社もあります。企業ごとに方針は大きく異なっているのです。

■行き先を決めずに辞めてはいけない

転職の形もさまざまですが、大企業に勤めていた人が長く勤められる環境を求めて、規模の小さい会社に移ることも多くなっています。スキルがあれば、大企業出身者は中小企業では非常に重宝されます。特に地方では人手不足が深刻なため、経験のある人材を歓迎する企業は少なくありません。

転職のベストタイミングとは、環境を変えようと思った時に、理想的な行き先があることに尽きます。大切なのは、行き先が決まっていない状態で会社を辞めるべきではないということです。退職後の具体的なビジョンがないまま辞めてしまうと、50代以降は特に苦しい状況に陥りやすくなってしまうのです。

結局のところ、転職をする上で大切なのは人間関係です。その人間関係をどう築くかを、将来を見据えて考えておくことが大切になるでしょう。人間関係は、お金について考えておくのと同じように大切に考えておくべきものなのです。

写真=iStock.com/Drazen Zigic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Drazen Zigic

■中高年の転職には「趣味の人脈」が役に立つ

ずっと組織に属していると、付き合いのあるのはほとんど職場の同僚ということになっているかもしれません。同僚とも深く付き合わず、社会に出てからの人間関係があまり広がっていない人も多いようです。けれども、いざ転職するとか、定年後の新しい職を考えるとなると、幅広い人間関係を持っている人には、いろいろなところから声がかかります。

荻原博子『定年後のお金の悩み、解決します』(河出書房新社)

ですから、できるだけ異業種の人たちとも交流を持っておくことをおすすめします。もし、それが面倒なら、自分の好きな趣味の分野で人脈を広げるのがいいでしょう。

仕事関係とは関係のないサークルなどで気楽に付き合う人が増えれば、そこからいい情報が入ってくることもあります。

釣り仲間であれば、あそこでインストラクターを募集しているとか、釣りに詳しい人を探している会社があるとか、好きなことに関わる話も耳に入ってきやすくなります。

もちろん、異業種交流のようなこともいいのですが、定年後のことを考えると、好きな分野での人脈を広げる方が役に立つかもしれません。

(初公開日:2026年8月28日)

----------
荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。
----------

(経済ジャーナリスト 荻原 博子)