進化型『788HS』誕生 マクラーレン750Sスパイダーとのラストラン(後編) 未来への道筋はどうなる?【スーパーカー超王、魂の執筆】
ステアリングを握った誰をも感動させる
そういえばと、これもマクラーレン750Sから採用された、センターコンソール上にあるマクラーレンのスピードマークが描かれたスイッチは何なのだろうと調べてみた。
【画像】マクラーレン最新モデル!750Sの進化版『788HS』とMTを採用した限定生産車『McL 6GT』 全42枚
するとこれは、ドライバーがあらかじめ選択したパワートレーンやシャシー、そしてエアロダイナミクスのセッティングをワンタッチで呼び出すことを可能とする『マクラーレン・コントロール・ローンチャー(MCL)』を起動させるためのものだった。ドライバーにとって、その使い勝手が優れたものであることは言うまでもない。

750Sのフットワーク、その素晴らしさは誰をも感動させるに違いない。 佐藤亮太
トラフィックの少ないワインディングロードでは、さらにスパルタンなテイストに走りのキャラクターが変化するトラックモードを、パワートレーンとシャシーの両方でセットしてみた。
するとサスペンションは確かに相当にハードなセッティングになり、オンロードではコーナリング中のロール量も体感的には限りなくゼロに近いものに感じられる。
新採用された軽量スプリングやダンパー、ジオメトリーの変更などが720Sから行われた750Sのフットワーク。その素晴らしさは実際にそのステアリングを握った誰をも感動させてくれるに違いない。
真の実力を知るには、サーキットにそのステージを求めるほかはない
ワインディングロードや高速道路では、リトラクタブルハードトップをオープンにしてドライブする時間もかなりあった。気になるキャビンへの風の巻き込みは、日本の高速道路の制限速度内ならば、ほぼ気にならないレベル。パッセンジャーと自然に会話することも十分にできる。
エアロダイナミクスの素晴らしさは前でも触れているとおりだが、それは高速道路上でも確かに感じる直進安定性や、コーナリング時の動きにも表れていた。残念なのは、やはりこの750Sスパイダーが秘める真の実力を知るためには、サーキットにそのステージを求めるほかはないということだろうか。

リトラクタブルハードトップを備える750Sスパイダー。 佐藤亮太
日本で750Sシリーズが購入できる時間はあとわずか。オーナーになることができた方は、ぜひサーキットでこの究極のエンジニアリングが生み出したスーパーカーの走りを楽しんでいただきたいところだ。パッセンジャーとともにサーキットへと向かっても、フロントには十分に実用的な広さを持つラゲッジルームもある。
ちなみに、この750Sではフロントをリフトさせる『ビークルリフトシステム』も改良され、リフトが完了するまでの時間はそれまでの10秒から4秒にまで短縮されている。
さらなる進化型『788HS』の誕生
セカンドジェネレーションのスーパーシリーズは、今回改めてドライブした750Sで究極形に至ったのだろうか。そう考えながら750Sスパイダーとの日々を過ごした後に、マクラーレンから驚きの発表があった。
それはさらなる進化型たる『788HS』の誕生だ。HSとはハイ・スポーツを意味する称号で、それはかつて『MP4-12C HS』や『MSO HS』に掲げられた経緯がある。

750Sのさらなる進化型、『788HS』がデビュー。HSはハイ・スポーツを意味する。 マクラーレン
788HSはクーペとスパイダーでそれぞれ100台、合計200台が限定生産される計画だが、やはり気になるのは日本市場での販売が実現するかどうかだろう。この原稿の冒頭で触れたとおりの理由で、この788HSを正規輸入モデルとして販売することは事実上不可能であるからだ。
しかしながらマクラーレン・ジャパンのホームページには、すでにこの788HSのインフォメーションが掲載されており、それを考えると何らかの策を講じて、日本のカスタマーにも788HSが納車される可能性は残されていると考えるべきなのだろうか。
788psを発揮する4LのV8ツインターボ
788HSのミドシップに搭載されるエンジンは、最高出力で788psを発揮する4LのV型8気筒ツインターボ。軽量な鍛造ピストンや超低慣性ツインスクロールターボチャージャー、ツイン燃料ポンプの採用などが、そのチューニングでも話題性を持つ部分だ。組み合わされるミッションは750Sと同様に7速SSGとされている。
車重は1265kgに抑えられ、これによってパワーウエイトレシオはマクラーレンの歴代スーパーシリーズの中でもトップの数字を達成することになった。ボディワークも788HSに独自のものだ。ボンネットにはSダクトが新設定されたほか、リアのアクティブスポイラーはさらに大型化、リアデフューザーやアンダーウイングパネルも独自のデザインとなる。
スーパーシリーズは、これからどのように進化していくのか?
マクラーレンによればダウンフォースは『765LT』と比較して、さらに10%の向上を果たしているという。プロアクティブシャシーコントロールにも専用のチューニングが施され、車高は750S比で5mm低く設定された。
前後のホイールはセンターロック式。フロントホイール内側には、アルティメット・シリーズの『セナ』から受け継いだカーボンセラミックブレーキディスクと、6ピストンの鍛造アルミニウムモノブロックキャリパーの姿が見える。

8月のモントレーで発表された、MTモデルとなる限定生産車『McL 6GT』。 マクラーレン
マクラーレンのコアモデルともいえるスーパーシリーズは、これからどのように進化していくのだろうか。
この788HSの先に待つのはサードジェネレーションのスーパーシリーズであるはずなのだが、アブダビ政府が所有する『CYVNホールディングス』の100%子会社となり、新たなリーダー、ニック・コリンズCEOによって率いられているマクラーレンから、本稿執筆時点では、次期モデルや将来のモデルラインナップに関する発表は一切行われていない。
8月のモントレー・カーウィークでMTモデルとなる限定生産車、『McL 6GT』が発表されたのみだ。
本来ならば既にその道筋は見えていなければならないはずなのだが、筆者にとってそれは大きな心配事でもある。まずは、その発表を待ちたいと思う。

