8月30日、さいたま新都心合同庁舎1号館で花壇に除染土を運ぶ作業員ら(写真:共同通信)

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福島第一原発事故で生じた「除染土」の再利用が、全国へ広がり始めている。

8月29日と30日、環境省は仙台市の仙台合同庁舎と、さいたま市のさいたま新都心合同庁舎に、福島県内の除染で出た土を搬入し、敷地内の花壇に入れた。近隣住民への事前説明会は開かれなかった。

仙台では搬入当日、市民らが抗議。さいたまでも反対の声が上がっている。そもそも、国が「復興再生土」と呼ぶ「除染土」とは、どんなものなのか。

■「復興再生土」は“きれいになった土”ではない

原子力市民委員会座長で龍谷大学政策学部の大島堅一教授はこう説明する。

「土を粒の大きさで分けたり、木の葉などを除去したりはしていますが、基本的には原発事故で放射性物質に汚染された土です。それを『除去土壌』と呼び、さらに『復興再生土』と名前を変えた。『再生土』と言われれば、普通はきれいに再生された土だと思いますよね。国民が正しく理解することを妨げる行為だと思います」

なぜ、全国で再利用するのか。

「福島県内の中間貯蔵施設には約1400万立方メートルの除去土壌が保管され、法律では2045年3月までに福島県外で最終処分することになっています。しかし処分先はいまだ決まっていません。そこで環境省は、放射性セシウムの濃度が1kgあたり8000ベクレル以下の土を公共事業などで再利用し、最終処分量を減らそうとしているのです」(全国紙記者)

■4000ベクレルの土、「100ベクレル」まで約160年

通常、原発の廃炉などで生じる放射性廃棄物には「クリアランスレベル」という基準がある。放射性セシウムの場合は100ベクレル/kgで、これ以下なら通常の廃棄物として処分・再利用できる。

ところが、復興再生土はその80倍の8000ベクレル/kg以下まで再利用できる。

大島教授はこう指摘する。

「本来は、100ベクレル/kgを超えれば、低レベル放射性廃棄物として、人が容易に立ち入れないよう厳重に管理するのが原則です。他の国でも、こうした汚染土壌を公共事業などで再利用するようなことはやっていません。環境省に海外で同様の事例があるのか尋ねた際にも、そうした事例はないという説明でした」

環境省は、覆土で遮蔽し、飛散・流出防止やモニタリングを行うため安全だとしている。しかし、今回さいたま市に搬入された土は約4000ベクレル/kg。通常の廃棄物として扱える100ベクレル/kg程度まで下がるには、およそ160年かかる計算になるという。

「160年後まできちんと管理されるのか、その体制も決まっていません」(大島教授)

毎年のように豪雨災害が起きるなか、花壇や道路などに使った土を100年以上、流出させず管理し続けられるのだろうか。

■吸い込めば肺に数十年? 「セシウムボール」の懸念

さらに懸念されるのが、放射性物質を吸い込む「内部被ばく」だという。なかでも、原発事故で放出された放射性セシウムを高濃度に含む、水に溶けにくいガラス状の微粒子「セシウムボール」の存在が問題視されている。

本誌は昨年10月、そのリスクを報じた。原発関連訴訟に携わる井戸謙一弁護士は当時、こう警鐘を鳴らしていた。

「通常の放射性セシウムは水に溶けやすく、体内に取り込んでも血液や体液に溶けて排出されるため、体内で半分になる時間は大人で90日、幼児で9日と試算されています。しかし、セシウムボールは水に溶けにくく、吸い込んで肺に付着すると、体内で半分になるまで数十年かかると指摘されています。

■仙台・さいたまの次は? 秋田・愛知でも「理解醸成」

再利用は仙台、さいたまだけではない。

2027年に横浜市で開催される国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」でも利用が計画され、地元では反対署名も始まっている。

環境省は全国各地で、復興再生利用についての「理解醸成」イベントも開催。今年3月には、先月、復興再生土が搬入された仙台市とさいたま市で実施していた。7月には秋田市と名古屋市でも開いている。

今後、秋田や愛知などでも復興再生土を再利用する予定はあるのか。また、なぜ仙台、さいたまでは住民説明会を開かなかったのか。

本誌が環境省に問い合わせた。

仙台、さいたまで住民説明会を開催しなかったことについては、

「これまで首相官邸や霞が関の中央省庁で再生利用を実施し、空間線量率のモニタリング結果をウェブサイトで公表するなど、情報発信や理解醸成に取り組んできた」

としたうえで、こう主張する。

「仙台、さいたまを含めて全国7カ所でも、パネルディスカッションを開催するなど、理解醸成の取り組みを進めてきた」

加えて、「今後も国の地方支分部局や出先機関などで復興再生利用を検討、調整していく」という。ただし、具体的な都市は「現時点では決まっていない」とし、今年「理解醸成」のイベントを開催した秋田や愛知についても、次の再利用先に決まっているわけではないと回答した。

では今後、新たな再利用先が決まった際には、住民説明会を開くのか。

「個別の事情に応じてということになる。次に実施する場所で説明会を開催するか、しないかについて、現時点で決めていることはない」

今後も全国で再利用を検討する一方、その都度、住民説明会を開くとは限らないということだ。

これに対し、大島教授はこう指摘する。

「『理解醸成』という言い方自体、一方通行です。国の言っていることを理解してください、という話になってしまう。本来必要なのは住民の『参加』です。反対の人も含めて議論に参加してもらい、その意見をきちんと拾い上げていく。今回は何も告知せずに運び込んだわけですから、本当に問題だと思います」

そのうえで、現在、中間貯蔵施設に保管されている大量の除去土壌について、「技術的に処分できない量ではない」と指摘。こう続ける。

「費用はかかりますが、長期管理できる施設に集中的に置き、国や自治体が責任をもって管理すればいい。160年なり150年なりの管理は個人には無理でも、国や自治体なら組織として引き継いでいくことができます。最悪なのは、花壇や道路の下など全国各地に置いて、事実上、管理が難しい状態にしてしまうことです」

「復興再生土」と名前を変えても、放射性物質を含む土であることに変わりはない。

全国へ少しずつ分散させるのではなく、反対する住民も含めてリスクを共有し、どこで、誰が、いつまで責任をもって管理するのかを議論することが先ではないだろうか。