ストーカー対策 GPSの装着で凶行を防げ
深刻なストーカー被害が後を絶たない現状を考えれば、現行制度での対応に限界があることは明白だ。
被害者の安全を守るため、より強力な対策を講じる必要がある。
政府がストーカー被害の緊急対策を決定した。加害者にGPS(全地球測位システム)機器を装着させることを検討するという。加害者の接近を被害者に知らせる仕組みを想定している。
きっかけは、東京・池袋の商業施設で3月、女性が元交際相手の男に刺殺された事件だ。男は昨年末、ストーカー規制法違反容疑で逮捕され、釈放前には接近を禁じる禁止命令を受けていた。
現在のストーカー規制法では、つきまとい行為を繰り返す加害者に対し、警察当局が禁止命令や警告を出せる。しかし、禁止命令などを顧みずに被害者に近づく加害者も少なくない。
全国の警察には昨年、2万件以上のストーカーに関する相談が寄せられた。禁止命令は過去最多の3000件超に上っている。
加害者にGPS機器を装着させれば、被害者は自分のスマートフォンなどで相手の接近を知り、逃げることができる。警察も被害者のもとに急行することが可能になる。悲惨な事件の未然防止に有効な手段になるはずだ。
重要なのは運用のルールだ。GPS機器を装着させる対象者の範囲をどう規定するのか。いつ装着させ、期間はどの程度か。
過度に装着対象を広げれば、個人のプライバシーや行動の自由を不当に制約しかねない。こうした点も丁寧に検討してほしい。
装着の判断に裁判所が関与するかどうかが一つの論点となるだろう。GPS機器の耐久性や充電といった技術面の課題もある。
韓国は2023年、ストーカー加害者の足首にGPS機器を着け、被害者の位置から一定の距離に近づくと被害者のスマホに通知する仕組みを導入した。以後、被害者が危害を加えられた例は確認されていないという。
海外の事例を参考にして、試験的に導入するのも一案だろう。
政府は、相手への執着心を薄れさせる治療やカウンセリングの受診を加害者に義務づけることも検討する。GPS装着と併せて着実に進めることが重要だ。
過去には、警察が被害の訴えを軽視し、被害者が命を落とすケースも起きている。現場の警察官は、事案の危険性や切迫性を的確に把握し、被害者の声を真摯(しんし)に聞く姿勢を忘れてはならない。
