【闘病】下腹部痛と腰痛の正体は『子宮がん肉腫』ステージ3… 直腸の一部も切除

「これくらい大丈夫」――下腹部痛や腰痛をそう捉え、実母の介護を優先していた前澤さん。2023年4月に告げられたのは「子宮がん肉腫」(子宮体がんの一種とされる進行性の希少がん)で、すでにステージIIICまで進行していました。約8時間に及んだ手術では、開腹後に腫瘍が破裂するという事態も起こり、術後は排便障害という後遺症が残ります。それでも、がんピアサポーターとして、外見の変化に悩む患者さんを支える活動に取り組んでいます。前澤さんに発覚から診断、治療、現在に至るまでの経緯を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年3月取材。

体験者プロフィール:
前澤美子さん

1967年生まれ、大阪府在住。自宅で個人エステサロンを約20年経営している。2023年4月に子宮がん肉腫と診断され、同年5月に手術を受けた。その後、6クールの抗がん剤治療を経て、現在は経過観察中。抗がん剤の副作用による外見の変化に戸惑った自身の経験から、がんピアサポーターの資格を取得し、医療機関でがん治療中の人を支える活動も行っている。

「まさか私が」突然のがん告知

編集部

体に異変を感じたのはいつごろでしたか?

前澤さん

2022年ごろから倦怠(けんたい)感があったものの、実母の介護があり、自分のことは後回しになっていました。しかし、その後も症状は徐々に重くなり、下腹部の痛みや腰痛がひどくなったため、2023年4月に近くの病院を受診しました。超音波(エコー)検査と内診の結果、「当院では治療できません」と言われ、紹介状を持ってA病院を受診することになりました。このA病院が、現在もお世話になっている病院です。A病院では内診、エコー、細胞診(採取した細胞にがん細胞が含まれていないかを顕微鏡で調べる検査)、CT、MRI、胃カメラ、大腸カメラなどの検査を、何日かに分けて受けました。

編集部

がんの告知はどのような形で受けたのでしょうか?

前澤さん

紹介状を持ってA病院を受診したその日に、産婦人科の医師からがんだと告知されました。告知されたときは「まさか私が」と、信じられない気持ちで頭が真っ白になりました。

編集部

子宮がん肉腫とは、どのような病気なのでしょうか?

前澤さん

医師からの説明によると、子宮がん肉腫は子宮体がんの一種で、進行性の希少がんだそうです。後日受けたMRI検査で、ステージがIIICであることも分かりました。ステージIIICは、がんが子宮を越えて、骨盤内や大動脈周囲のリンパ節まで広がっている状態だと説明を受けました。

編集部

医師からは、どのように治療を進めていくと説明がありましたか?

前澤さん

まずは手術をして、その後に化学療法を行うと言われました。化学療法は、抗がん剤治療を6クール行う予定とのことでした(※)。

※治療方針は患者さんの状態によって異なります

編集部

治療方針を聞いたときは、どのような心境でしたか?

前澤さん

「手術」と聞いて怖かったのと、進行性のがんということもあり、「手術中にもしものことがあったらどうしよう?」という不安がありました。さらに、抗がん剤治療を受けても命が助からないかもしれないと感じ、「死」という言葉が頭をよぎりました。毎日、自分の病名をネットで検索して、病気のことを調べていましたね。さまざまな思いが交錯し、複雑で何とも言えない心境でした。

約8時間の手術と腫瘍の破裂

編集部

実際の治療は、どのように進められましたか?

前澤さん

まずは、2023年5月に手術を受けました。手術当日、歩いて手術室に向かうその瞬間も、逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。
手術では、右側のがん化したリンパ節が神経にこびり付いていて、切除にかなり時間がかかったそうです。また、大量出血と輸血で体力が持たないかもしれないことから、みぞおちまでの切除は行わず、目に見える部分のみを切除したとのことでした。手術時間は8時間弱だったそうです。
その後、6月から抗がん剤治療を開始しました。倦怠感や湿疹、手足のしびれなどの副作用はありましたが、スケジュールを一度もずらすことなく、予定どおり9月末に全クールを終えました(※)。

※治療期間や副作用の表れ方には個人差があります

編集部

治療の中で、想定外だった出来事はありますか?

前澤さん

後で医師から聞いた話ですが、「手術前日の検査で、左側のがん化した卵巣がいつ破裂してもおかしくない状態だった」そうです。実際に開腹した後に、卵巣の腫瘍が破裂し、さらに直腸の一部までがんが浸潤(しんじゅん/がんが周囲の組織に広がっていくこと)していることが分かりました。そのため、直腸の一部も切除して、つなぎ直す処置を行うことになりました。
その影響で、術後は排便障害が残り、当初は想定していなかった経過に戸惑いも感じています。

これからは私が、誰かの支えになる

編集部

病気の前後で、自身の考え方に変化はありましたか?

前澤さん

「自分自身を大切にしないといけない」と思うようになりました。がんになる前は、実母の介護があったので、自分のしんどさは後回しでした。持病のリウマチがあり、痛みには慣れていたこともあって、初期の下腹部痛や腰痛は「これくらい大丈夫」と思い、ひどくなるまで放置していました。

編集部

現在の体調や生活について教えてください。

前澤さん

排便障害はありますが、前向きに仕事もしています。自宅でエステサロンを経営しているので、体調を見ながら、無理のない範囲で頑張っています。
また、闘病中に抗がん剤の副作用で外見の変化に戸惑った経験から、「同じ思いをしている人の力になりたい」と思うようになり、「大阪府がんピアサポーター」(がん経験者が自身の体験を生かして、患者さんや家族を支える相談員)の資格を取得しました。現在はエステの仕事に加えて、医療機関でがん治療中の人をサポートする活動をしています。私の経験や学びが、治療の副作用や後遺症による外見の変化に悩む人の力になれば、と思っています。

編集部

これまでを振り返って、後悔していることはありますか?

前澤さん

「もっと早くに婦人科を受診していれば」と思うことがあります。市の検診は定期的に受けていましたが、早い段階で検査を受けていれば、がんを早期に発見できて、直腸の一部を切除しなくてもよかったのではないかと思うので、そこは後悔しています。

編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

前澤さん

もう少し親身になって、悩みを聞いてほしいと思います。検査データだけを見て「排便障害は治っている」と言われていますが、私の実感としては、まだ改善していません。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

前澤さん

「早期発見が大事」とよく言われますが、まさにそのとおりだと思います。早期に発見できれば、治療の選択肢が広がったり、治療の負担が軽くて済んだりすることも多いと思います。少しでも体に違和感を覚えたら、我慢せず、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。

編集後記

介護や仕事など、目の前のことを優先するあまり、体のサインを見過ごしてしまうことは少なくありません。前澤さんも「これくらい大丈夫」と我慢を重ねる中で、がんが進行した状態で見つかりました。「早期発見が大事」という前澤さんの言葉のとおり、体に違和感があれば我慢せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
鈴木 幸雄(岐阜大学医学部附属病院 産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。