【真壁 昭夫】《社員はコスト》の時代に突入か…”AIリストラ”を進めるグーグル、アマゾン、ナイキ、マイクロソフトらが気にする「投資家の厳しい眼差し」

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AIが企業と国を成長させる

4~6月期、日米中などの世界の主要企業の決算がほぼ出そろった。決算の状況を見ると、企業がいかにAIに対応できたかによって、業績の優劣がついているようだ。わが国の企業の中でも、AI関連需要を取り込んだキオクシアの業績は急拡大した。一方、AIを上手く活用しきれなかった、小売りなどの企業の業績は伸び悩みが目立つ。

米国や中国では、AI関連の需要を取り込むため、既存事業を縮小してデータセンターやAIを使ったサービスを拡充する企業が目につく。

特に、中国企業はAIシフトに向けたリストラにかなり積極的だ。AIによる合理化で、IT先端企業は相次いで大規模な人員削減を行ったようだ。中国政府としても、AI事業を強化し成長を実現するスタンスは明確だ。

AIの活用と関連分野の成長は、国全体の競争力にも重要な影響を与えつつある。アジア地域では、韓国、台湾、シンガポールがAI需要を取り込んで、実質ベースでの経済成長率を高めることに成功している。その他、アセアンの新興国地域でもAI政策を推進してGDP成長率を押し上げようとする国が目につき始めた。

主要国のAIに関する戦略を見ると、日本の対応は欧州以上に遅れているとの指摘は多い。AIの成長が急加速する中、わが国はAI利用やデータ保護、競争に関する多国間のルール策定に能動的に取り組まなければならない。

その対応が遅れると、デジタル化の遅れに続き、日本企業の生き残りは難しくなるだろう。そうなると、AIの世紀に、わが国が取り残される懸念が一段と高まる。

AI関連で伸びる各国企業

今年4~6月期の世界の主要企業の業績を読み解く上で、重要なポイントはAIだ。AI(データセンター、半導体、推論モデルを活用したサービス提供など)と、いかに深いつながりを持つかによって業績が左右されるケースが目立つ。AI関連分野、あるいは、それにつながりを持つ分野の企業の業績は堅調であることが多い。

例えば、わが国企業の中で注目されるのはキオクシアだろう。同社は、AIデータセンター向けのメモリーチップを供給しており、4~6月期の純利益は前年同期比46.1倍だった。半導体製造装置メーカーのアドバンテストなどと比較しても、キオクシアの業績拡大ペースは圧倒的だ。

同じことは、韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米マイクロンテクノロジー(3~5月期)にも当てはまる。AI成長の加速によって、演算装置以上にメモリーチップの不足が深刻化し、価格が急上昇した影響は大きい。

米国では、マイクロソフト、グーグル、アマゾンが、AIデータセンター需要を取り込んで増収を実現した。一時、自力での経営再建が危ぶまれたインテルは、データセンター向けの半導体需要に支えられ営業収益が黒字転換した。ビッグデータ分析サービスを提供するパランティアの業績も好調だ。

米国勢で数少ないオープン型のAIモデル開発に取り組んでいるメタは、SNS事業とAI事業の並走コストの高さ、AIビジネスの収益化の遅れなどによって営業利益が減少した。

中国でも、AI成長戦略は重要なファクターになっている。

ディープシーク、ムーンショットAI、北京智譜華章科技(Z.AI)、アリババ、テンセントなどが、米アンソロピックの“ミュトス級”の推論モデル開発を競っている。それに加え、半導体メーカーの成長は急加速した。

8月中旬、中国DRAM最大手である、CXMTの親会社の時価総額は中国企業(本土+香港)でトップに立った。半導体製造装置メーカーの北方華創(Naura)は、韓国など海外投資家の成長期待が高まっているようだ。

米中企業は構造改革を急ぐ

AI事業に関する戦略は、世界の有力企業の収益力に重要なインパクトを与えている。日本では、円安によって業績が拡大した大手企業が多いが、それに安心していられる状況ではない。

米国や中国では、AI事業の収益性や中長期的な成長性の引き上げのため、大胆な構造改革を行う企業も増えている。既存のネット広告事業などを縮小し、AIモデル開発やデータセンター事業を拡充する企業は相次いだ。それに伴い人員削減も進んでいる。

米国では、マイクロソフトやグーグル、メタやアマゾン、さらに先行投資で財務不安定化懸念が出たオラクルなどが人員削減を実施した。IT業界以外でも、ディズニー、ペイパルなどが、AIに対応するための組織再編による人員削減を行った。ナイキのように、業績を立て直すためにAIを導入し、人件費を削減するケースも増えている。

すでにIT業界を中心に、AIを活用して、いかに少ない社員数で事業を伸ばせるかというフェーズに突入しつつあるとも言える。米国の経営者の間では、何らかの形でAIに言及しないと、投資家から見放されるとの危惧すら高まっているという。

米国以上に大規模なのが、中国企業の構造改革や人員削減だ。アリババは、非中核事業に転じた小売子会社の売却を進めている。資産売却により、従業員は2024年3月末の20.49万人から今年3月末は13.15万人まで減少した。経営資源をAI・クラウドという中核事業に集中させる同社の方針は明確だ。

百度は、検索など旧来部門から新事業へのシフトを進める中で、一部チームで最大40%規模の人員削減が行われたようだ。AI・クラウド部門は、原則としてリストラの対象外といわれている。両社は非中核事業を切り離し、AIに集中する戦略の転換に取り組んでいる。

また、中国企業の中には、内需低迷による価格競争でAI投資が遅れ、かなり大規模な人員削減を行った例もある。フードデリバリーなどを手掛ける美団は、アリババなどとの値下げ競争が激化し収益力が低下した。

AI関連の投資余力は減殺され、挽回を図るために人員削減に追い込まれたと報じられた。会社側は否定しているが、中国のSNS上では人員削減が50%に達する部門もあるとの観測も流れているようだ。

では、成長期待の高いキオクシアらを擁する日本は、このような世界の動きにどう対応すべきなのか。

つづく記事〈中国半導体企業がキオクシアに追いつく…半導体分野で優位性を失いつつある日本は生き残れるのか?〉で、詳しく解説する。

【つづきを読む】中国半導企業がキオクシアに追いつく…半導体分野で優位性を失いつつある日本は生き残れるのか?