「Tシャツが乾くまで」で検索ワード急上昇の「失踪癖」とは? 過去には「人気モノマネタレント」「元プロ野球投手」も行方不明に
ドラマ「Tシャツが乾くまで」(TBS)の視聴率が尻上がりに良くなっている。それと比例するように、ネットでは「失踪」「失踪癖」という検索ワードがトレンド入りするほど急上昇。ところで、失踪癖とは?
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デイリー新潮は7月24日配信の「まさかの『VIVANT』超えも…『俳優、脚本、演出、すべて一流』と断トツ評価 『蒼井優』主演“不倫疑惑”ドラマの魅力とは」で、今期の連ドラ「Tシャツが乾くまで」の評判の良さを報じた。
この頃はまだ序盤で、瀬尾咲子(蒼井優)の夫・充(松山ケンイチ)と園田樹生(中島歩)の妻・あずさ(夏帆)が高速バスの事故に巻き込まれ、乗客全員が死亡。配偶者を亡くした咲子と樹生は互いに支え合い距離を縮めていくが、樹生が「充とあずさが不倫関係にあった」という疑念を抱く……といった展開だった。ちなみに、7月10日放送の初回の視聴率は6・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)だ。

ところが、事故から1年が過ぎた第6話(8月14日)の冒頭、充が咲子の元へ帰ってくる。さらに、第7話(同21日)では、充が自身に失踪癖があることを打ち明けるのだ。第6話の視聴率は7・5%、第7話は7・7%にまで上昇した。
ちなみにGoogleトレンドでは、8月16日から23日にかけて「失踪癖」の検索ワードが過去1年と比べ5000%急上昇。SNSにはこんな感想が並んでいる。
《Tシャツが乾くまで、いつの間にか充の視点で観てしまっていた。梓に失踪癖のことを話すときの芝居とかすごい。人に話したことのない部分を初めて言葉にする感じが絶妙》
《Tシャツが乾くまで 最新話見た なんだろうすごく苦しくなるの 失踪癖ないけどとても理解できてしまう 誰も知らない誰も自分の事知らない所に行きたいっていう気持ち分かってしまう》
《Tシャツ乾くまで なんなん失踪癖って 現実におるん?》
現実の失踪癖
失踪癖という言葉は聞くが、現実にあるものなのだろうか。精神科医の片田珠美氏に聞いた。
片田氏:ストレスやプレッシャーなどに耐えきれなくなって、耐えがたい現実から逃げ出したいという心理にもとづく失踪癖は現実にあります。ただし、これは病名ではありません。精神医学で、遁走と呼ばれる症状です。原因としては意識や記憶などの統合が一時的に破綻した状態になる解離性障害、あるいは鬱病が多いですね。
――かつてモノマネタレントの若人あきら(現・我修院達也)が、静岡県熱海市の海岸で行方不明となり、数日後、記憶喪失状態で発見、ワイドショーで大きく報じられたことも……。
片田氏:彼の場合、突然、住んでいた場所などから離れて過去の出来事を思い出せない状態になる解離性遁走だと思われます。解離性障害の一つに分類されます。また、中日ドラゴンズの投手コーチが急に音信不通になったこともありましたね。彼は鬱病と診断されたそうです。
――実は今「失踪癖」という言葉がネット上で広く検索されています。その原因は「Tシャツが乾くまで」というドラマのようです。先生はドラマをご覧になりますか?
片田氏:あまり見ませんが、そのドラマの評判は聞いたことがあります。なんでも不倫をしていた男女が事故で亡くなり、遺された妻と夫まで不倫するとか……。
――それは前半での考察で、最近、事故で亡くなったと思われた夫が帰ってきたんですよ。
片田氏:えっ、生きていたんですか!
失踪の願望は誰にでもある
――そうなんです。それで自分に失踪癖があることを告白したんです。松山ケンイチ演じる夫・充は両親に愛されずに育てられ、子どもの頃から2〜3年に1回のペースで失踪を繰り返してきたと。しかし、結婚してから10年は症状が出ることはなかった。一軒家を購入してから「幸せで息が詰まる」と感じるようになったと言っています。
片田氏:一戸建てを購入するとローンもありますから、プレッシャーもかかるでしょう。そして、子どもの頃から愛してもらっていない人にとっては、安定が負荷になることもあります。自ら幸せになることへの罪悪感を覚え、幸せを壊すのではないかという不安から失踪してしまうという人もいるんです。
――充も「自分自身が欠陥品に思えて辛い」と言っていました。育てられ方が重要ということでしょうか?
片田氏:人間の性格は持って生まれた素因と環境で決まります。たとえ親に失踪癖があったとしても、それを反面教師として堅実な生き方を選ぶ人もいます。ただ、そういう人でも、ある年齢になって失踪することはあり得るものです。すべてをリセットしてやり直したいと思う願望は誰の心の奥底にも潜んでおり、必ずしも病気ではありません。ただ、それを実行してしまうと家族や会社に迷惑がかかるし、自身にとってもマイナスになると現実的に考え、多くの人々は遁走願望を抑圧しているのです。それを我慢できない、プレッシャーに耐えられない脆弱性、ある意味では欲望に忠実な傾向が失踪というかたちで表面化するわけです。
――失踪しないためにはどうすべきなのだろう。
片田氏:失踪を悪と決めつけることはないと思います。耐えきれなくなって自殺してしまうくらいなら、失踪というかたちで逃げ出すのも選択肢の1つです。生きるための防衛戦略とも言えます。ただ、それを危険と感じるようでしたら、自分自身の願望を言語化することが重要です。精神科医やカウンセラーに話を聞いてもらうのもいいでしょう。現在はSNSなどで外に向かって発信することもできます。大切なのは、言語化によって自分が抱えている衝動や願望を整理すること、そして1人で抱え込まないことです。
果たして、充と咲子はどうなるのだろう――。
デイリー新潮編集部
