発達障害隠して就活→働く男性「バレるのが怖い」「給料の面で一般就労の方が…」 職場の“合理的配慮”の現在地と課題は

発達障害や精神疾患の診断を受けた人の76.5%が、一般枠での就職活動で診断結果を会社に伝えていないことが調査で分かった。2024年、障害者の生きづらさを過度な負担のない範囲で解消する「合理的配慮」の提供が事業者に義務化されたものの、採用での不利を恐れ、障害を伏せて働く当事者は多い。
『ABEMA Prime』では、発達障害や精神疾患などの障害を隠して働く理由と現実について考えた。
■障害を会社に打ち明けるメリデメは?

番組には、対照的な選択をした2人の当事者が出演した。
自閉スペクトラム症(ASD)であることを会社に隠して働いているUKさんは、「転職活動の時に迷ったが伝えないことを選んだ。今はバレるのが怖い。普通の人間のように隠して仕事をしている状態だが、健常者側から見ると少しずれているところがある」と明かす。
具体的には、質問の返答を口にするまで「人の何倍も時間がかかる」特性がある。静かな場所で対面で話す分には問題ないが、雑音が多い環境で重要な情報を整理しながら返答しようとすると、さらに時間がかかってしまう。「前職の合宿時にパニックになり、意図せず障害が発覚、居場所を失って退職した。『バレたらこうなる』という恐怖が頭から離れない」と、過去の苦い経験を打ち明けた。
これに対し、ASDとADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断結果を会社に伝え、福祉系の民間企業で障害者雇用枠として働いているワタルさんは、オープンにした理由をこう語る。「隠し通して働くのは無理だと思った。会社に迷惑をかけるし、自分自身もやっていけないという不安があったため、隠すという選択肢はなかった」。ワタルさんは、公表したことで合理的配慮を受けられ、現在は働きやすさを感じているという。「みんながどう思っているのか不安になることは多少あったが、大人の対応をされ、腫れ物に触るような態度をされることはなかった」と、公表によるメリットを語った。
■「賃金格差」の壁

なぜ、多くの人が診断を隠してしまうのか。障害者雇用ドットコム代表の松井優子氏は、まず日本財団による調査結果の前提を指摘する。「今回の調査対象は障害者手帳の未所持者であるため、この数字が精神障害や発達障害を抱える人全体の状況を示しているわけではない。しかし、障害を明かすことに対する恐怖感や、周囲の目を気にしている人が多いことは事実だ」。
また、数々の企業で面接官を務めてきた人材研究所の安藤健氏は、就職活動における構造的な問題を挙げる。「面接の不合格理由はフィードバックされない。不採用の原因が不明な以上、わざわざ不利になる情報を明かすメリットはない」。
さらに、UKさんは一般就労と障害者雇用の「賃金格差」を現実的な問題として挙げた。「一般就労と障害者雇用では金銭的に大きな差がある。一人暮らしでの生活を考えると、給料の面で一般就労の方がいい。それに、『合理的配慮をします』と会社が言っても、実際に配慮をするのは現場にいる人間。本当に配慮してもらえるか、信用しきれていない」と、不信感を吐露した。
これに対し松井氏は、「一般的には障害者雇用枠の賃金は低く職種も限定されがちだが、最近は得意分野を活かせる仕事を用意する先進的な企業も増えており、二極化している」と指摘した。
■「合理的配慮」どこまで? 本質的な人材活用への課題

合理的配慮の義務化に伴い、企業の向き合い方も問われている。
安藤氏は、企業の障害者雇用の実態に苦言を呈す。「障害者雇用で採用された後、印刷やホチキス留めといった単純作業ばかりをさせる部署や、特例子会社を作る大企業もある。しかし、単純作業をさせておけばいいわけではない。これでは助成金や税制優遇目当てに過ぎず、本質的なダイバーシティとは言えない」。その上で、「採用時には病気の既往歴などのレッテルとは関係なく、求めるポジションに必要なスキルや経験があるかを純粋にジャッジすべきだ。特性があっても、仕事の遂行に問題がなければ、給与水準も同一であるべきだ」と主張した。
障害の有無にかかわらず、一人の部下としてどうマネジメントしていくかが今後の日本企業の課題となる。松井氏は「マネジメントが上手な企業は、障害の有無ではなく、一人の人材をどう活かすかという組織マネジメントの素地がある」と説明した。
安藤氏も「本来、様々な特性を持つ部下をマネジメントして成長させるのがマネージャーの仕事。だが、多くのマネージャーはその専門訓練を受けておらず、企業間や個人間での格差が大きいのが現状だ」と、組織の受け入れ態勢の整備を訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
