(※写真はイメージです/PIXTA)

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2026年5月29日、「医療保険制度改正法」が成立しました。今回の改正により、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度において、特定口座で得た運用利益が保険料の算定に反映されるようになります。本記事では、YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP・鳥海翔氏が、この制度の仕組みと現実的な対策について解説します。

投資の本質は“中身”…過去の実績やネーミングだけで選ぶリスク

投資というのは、お金が自動的に増えていくわけではありません。投資を受けた企業が商品開発やサービスの拡大を通じて価値を創造し、その利益の一部が投資家に還元されるという構造です。そのため、過去の実績がよかったからという理由だけで投資先を選ぶのは合理的な判断とはいえません。

たとえば、「新興国株式インデックス」は直近1年間で61.8%という高いリターンを記録していますが、この結果だけを見て「新興国全体が成長している」「半導体と同等のリターンが期待できる」と判断するのは危険です。

中身を分解すると、台湾のTSMC、韓国のサムスンおよびSKハイニックスの3社だけで全体の28%を占めており、台湾と韓国の半導体企業が全体の数値を強力に押し上げているに過ぎません。同じ新興国でも、インドの「Nifty50(ニフティフィフティ)」という指数はマイナス6%となっています。

投資において重要なのは、ネーミングや表面的な結果だけで判断するのではなく、その中身となる企業がこれからどのような価値を創造し、約束を守っていくことができるのかを精査することです。

「75歳以上」に大打撃…26年5月に成立した「医療保険制度改正法」

こうした資産を増やすための投資判断と同時に、資産を守るための制度理解も不可欠です。2026年5月29日、投資家にとって影響の大きい「医療保険制度改正法」が成立しました。

これまで特定口座で運用して増えた利益には、約20%の金融所得税が課されていました。しかし今後の改正により、75歳以上の「後期高齢者医療制度」において、特定口座での金融所得が確定申告の有無に関わらず保険料や窓口負担割合の判定基準に含まれることになります。

つまり、特定口座で利益を出すほど、税金だけでなく健康保険料や介護保険料まで値上がりする仕組みが作られたのです。ただし、NISAでの運用益はこの判定の対象外と明記されているほか、施行日は未定となっています。

損失が出ても社会保険料は安くならない

この制度において、仮に投資で損失が出た場合、社会保険料は安くなるのでしょうか。結論として、損失が発生しても社会保険料がただちに安くなることはありません。

確定申告を行うことで、発生した損失分を翌年以降3年間にわたって繰越控除し、将来の株の利益や配当金と相殺することは可能です。これにより、将来の社会保険料の増加を防ぐ効果はあります。

しかし、給与所得など他の所得から株の損失を差し引いて社会保険料を安くすることは認められていません。利益が出たときは税金と社会保険料の負担が増加し、損失が出たときの救済措置は限定的という厳しいルールになっています。

非課税枠が余っているなら、いますぐ「NISA口座」へ

このような制度変更に対し、現時点で最も確実な対策は「NISA」の最大限の活用です。

まだNISAの非課税枠が余っている人は、四の五のいわずに特定口座で運用している資金を速やかに売却し、NISA口座へ移すべきです。

売却時にわずかな税金が発生することを嫌う投資家もいますが、目先の税金を惜しんで特定口座で運用を続ければ、将来的に膨らんだ利益に対してより多額の税金と社会保険料を支払うことになります。

一方で、すでに自身のNISA枠を使い切っている人は、特定口座で運用を続けるしかありません。ただし、自分一人だけで考えるのではなく、家族や子どものNISA枠を活用し、世帯全体で非課税枠を利用して資産を守るという考え方が最も合理的です。

【シミュレーション】一度売却してリセット→再運用する手法

では、NISA枠がない場合、「医療保険制度改正法」が始まる前に一度特定口座の資金を売却して税金を払い、利益をリセットした状態から再運用を始めるという手法は有効でしょうか。

シミュレーションしてみたところ、結果は運用利回りによって異なります。

(1)1,000万円が2,000万円に増えた状態から20年間定期売却していく場合

(2)1,000万円が2,000万円に増えた段階で一度売却(金融所得税200万円)し、1,800万円から20年間定期売却していく場合

年利5%での運用であれば、(2)のほうが最終的な手取りが約35万円増加するという結果が出ました(東京都での計算例)。

しかし、年利8%で運用できると仮定した場合、(1)の途中で売却せずに運用を続けたほうが手取りが約13万円多くなるという逆転現象が起きます。

投資の成功は、中身を正しく評価して利益を出すことと、制度の変更に対応して手取りを守る出口戦略の両輪で成り立ちます。

医療保険制度改正法の成立により、特定口座での運用は将来の社会保険料負担という新たなリスクを抱えることになりました。一概にどの戦略が最適かはいまのところ明言できませんが、自身のNISA枠の空き状況や想定利回りを冷静に確認し、最適な資産防衛策をとっていきましょう。

鳥海 翔
株式会社Challenger 代表取締役
FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資