ビラで鈴木彩艶の出番はいつ訪れるのか。エメリ監督は「将来ではなく今のために獲った」と明言。次節アーセナル戦で“初出場”となれば…【現地発】
失点するたび、ビラのスタンドには空席が増えていった。試合後、鈴木は出場した選手たちとともにゴール裏へ向かい、最後まで残ったサポーターに拍手を送った。では、背番号1を託された23歳が実際にゴールを守る日は、いつ来るのか。
開幕戦で先発したマルコ・ビゾトは35歳。AZやブレストで経験を積み、チャンピオンズリーグにも出場したベテランで、エメリ監督からの信頼も厚い。ただ昨季、監督自身が「マルティネスの控えになるために加入した」と、その役割を説明していた。
ブライトン戦で先発したからといって、鈴木が正GK争いで後れを取っているとは考えにくい。何より鈴木が加入したのは、試合のわずか4日前だった。チーム練習を重ねる時間がほとんどないまま、いきなり先発させなかったこと自体は不思議ではない。
もう1つ読みにくくしているのが、マルティネスだ。本人は新たな挑戦を望んでいるものの、ユベントスへの移籍はまとまらず、今もクラブに残っている。移籍市場が閉じるまで、GKを巡る状況そのものが変わる可能性がある。
それでも、すぐに鈴木へ代わると言い切れない事情がある。今夏のビラはモーガン・ロジャーズ、ユーリ・ティーレマンス、リュカ・ディーニュ、エズリ・コンサら主力が相次いで退団した。UEFAの財務規則に対応するため、売却益を作りながら人件費を抑える必要もある。
昨季もビラのスタートは悪かった。リーグ開幕から5試合、勝てず、最初の4試合は無得点。それでも立て直し、最終的には4位まで順位を上げた。
ただ、今回は事情が違う。昨季は前年から主軸の多くを残したまま立て直すことができたが、この夏は主力が次々と抜け、顔ぶれそのものが大きく変わった。英紙『タイムズ』は、エメリ監督が4年近くかけて積み上げたチームを「ジェンガ」にたとえた。重要なピースが次々に抜け、塔が揺れているという。
GKは周囲との連係が欠かせない。選手の退団が多いなかで、加入から数日しか経っていない鈴木まで一気に入れ替えるのはリスクもある。まして31日の次節は昨季王者アーセナル戦だ。プレミア初出場がその相手となり、大量失点に巻き込まれれば、本人に責任がなくても最初の印象は厳しくなる。
ただ、ブライトン戦を見ると、待つことが安全策とも思えない。1失点目はDFパウ・トーレスの不用意なバックパスからGKビゾトが前へ引き出された。ビゾト自身は前半、ディエゴ・ゴメスのシュートを右手一本で弾く好セーブを見せたが、守備全体の連係はつたなかった。
そもそも前半は簡単に決定機を許し続け、退場者が出た後にブライトンがペースを落としたことで、0−4でなんとか収まったようにも見えた。
そんなチームで鈴木が起用されれば、まず求められるのは当然、セーブだろう。危ない場面で1本、2本と止め、チームを救えるか。相手がアーセナルなら難易度は高いが、逆に決定機を何度も防いで勝点につなげれば、1試合でサポーターの信頼を掴むこともできる。
ブライトン戦後の会見も、ビラが落ち着いた状態にないことを感じさせた。移籍を望むFWオリー・ワトキンスに関して記者から質問が重なると、エメリ監督は「彼に電話して聞いてくれ」と返した。
さらに質問が続き、クラブ広報が「同じ質問を3回している」と遮る場面もあった。開幕戦への出場を拒んだのではないかと報じられるワトキンスの話になるたび、エメリ監督の表情は極めて険しくなった。
鈴木に出番は来るだろう。ただ、それがアーセナル戦なのか、もう少し先なのかは読みにくい。エメリ監督は「将来ではなく今のため」に獲得したと言った。その「今」をいつにするのか。ビラの再出発とともに、監督は難しい判断を迫られている。
文●田嶋コウスケ
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