日本の映画ファンにとって、金城武(52)は「懐かしい人」かもしれない。だが、ここ香港で彼は過去のスターではなく、派手なメディア露出がなくても人気は常に安定し「別格のスター」として評価され続けている。(寄稿:香港在住ライター・ベック知子/全2回の1回目)

【オーラがすごい…】52歳、金城武の“現在の姿”を見る


当時30歳の金城武(2004年、映画『LOVERS』公開にあたっての来日会見で)©時事通信社

新作映画で大絶賛

 2025年10月、金城武が出演する香港スリラー映画『風林火山』が公開された。約5,100万米ドルという香港映画史上最高の制作費をかけた作品で、カンヌ国際映画祭にも出品された。日本未公開だが、東京国際映画祭にて先行上映されている。

 香港のエンタメ記者であるケイティー・ホー氏は、同作が金城武の「観客を飽きさせない豊かな表現力」を改めて証明し、彼の人気が再び急上昇していると指摘する。

〈「控え目なスタイルこそが彼の魅力だ。映画『風林火山』で見せた存在感は、来年も再来年も色あせることはない」(「HONG KONG Esquire」2025年10月15日配信)〉

 映画『風林火山』自体の香港での評価は賛否が分かれたが、金城武の演技に関しては絶賛の声が大半を占めた。ネット上でも「もし映画全体の出来が70点だとしたら、そのうち60点は金城武の魅力によるものだ」「スクリーンで彼を見られただけで元が取れた」といった熱量の高いコメントが相次ぎ、俳優としての存在感が健在であることを印象づけた。

「どの角度からでも完璧にカッコいい」

 香港の映画ファンであるルビーさん(30代)に話を聞くと、彼を象徴するある言葉を教えてくれた。

「香港で金城武といえば、みんな『無死角男神』と呼びます。どの角度からカメラを向けても完璧にカッコいい俳優、という意味です。ただ容姿が整っているだけでなく、人柄や私生活を含めて『どこを探してもネガティブな隙が見当たらない』という、市民からのリスペクトも込められています」

深キョンとの共演で話題をさらった

 日本で金城武といえば、1998年のドラマ『神様、もう少しだけ』(フジテレビ系)を思い出す人も多いだろう。深田恭子演じる、援助交際によってHIVに感染してしまう女子高生と恋に落ちる音楽プロデューサー役を熱演。

 彼はこの作品でザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞を受賞。その後も主演映画『不夜城 SLEEPLESS TOWN』(1998年)、『Sweet Rain 死神の精度』(2008年)などで存在感を示し、平成を代表する人気俳優となった。

 しかし、すい星のごとく現れた彼は、やがて嵐が去るように日本の表舞台から静かに遠ざかっていった。日本の多くの人々は、「彼はいったい何者だったのか?」と感じているのではないだろうか。

香港映画の巨匠に見出されて

 香港での人気は絶大だ。普段あまり映画を見ないという50代の語学教師、ゲリーさんですら「金城武」といえば即座にピンとくる。彼によれば、香港では若者から高齢者まで誰もが知る好感度ナンバーワンのスターだという。

 1990年代に香港映画の巨匠、ウォン・カーウァイ監督に見出され、同氏による『恋する惑星』(1994年)や『天使の涙』(1995年)で脚光を浴びると、表現力が豊かな役者として高く評価された。以後、さまざまな役柄を演じ分けられる実力派として広く認知されている。

「スキャンダルが一切ない」クリーンさも支持を集める

 香港での人気は絶大だ。50代男性のゲリーさんによると、「金城武」といえば香港では若者から高齢者まで誰もが知る好感度ナンバーワンのスターだという。

「演技力はもちろん、スキャンダルが一切ない、とてもクリーンなイメージが強いです」

 さらにルビーさんの話からは、彼がいかに香港社会で愛されているかが見えてくる。

「香港では誰もが彼に対してポジティブなイメージを持っています。かつて芸能人の私生活やスキャンダルを積極的に報じることで知られた大衆紙『蘋果日報(アップル・デイリー)』でさえ、彼に関してはネガティブな写真や悪評を載せませんでした。彼は香港ではそれほどリスペクトされている存在です」

 表舞台から遠ざかりながら、なぜ彼はこれほど支持されるのか。その背景を探っていくと、国境や時代にしばられず愛される、彼ならではのユニークな魅力が浮かび上がってくる。(つづく)

《金城武の現在は?》SNSとは無縁、結婚説も…「一番嬉しいのは、注目されないこと」香港メディアが伝えていた“意外な本音”〉へ続く

(ベック知子)