VTuber事務所「ホロライブ」運営のカバー、営業利益3割減の衝撃 新作ゲーム「ホロドリ」は劇薬か
VTuber事務所の「ホロライブプロダクション(以下ホロライブ)」を運営するカバーが12日に2027年3月期第1四半期の決算を発表。2026年4月~6月の営業利益が3割以上減少した。キャラクターグッズなどを販売するマーチャンダイジング部門の売上が約2割減少。同部門は売上構成比率が全体の50%以上を占めるだけに、会社への影響が大きかったようだ。
カバーは、マーチャンダイジング部門の減収要因の一つとして、「卒業タレント関連商品売上の剥落」を挙げている。2025年5月1日には英語圏で人気を博していた「がうる・ぐら」が卒業。同12月27日にはYouTube登録者数が170万人の「天音かなた」が卒業した。
2027年3月期第1四半期時点の所属VTuber数は79人で、前年同期比で7人減少している。ホロライブはタレントの育成に力を入れているプロダクションで、スター級のタレントを輩出し、ファンを引き付けることを強みとしている。所属タレントの減少は頭の痛い問題だ。
カバーは次世代タレント育成プロジェクト「mekPark」を始動させており、5月22日に活動を開始した3人組ユニット「UNIT B」は、2026年7月末時点でチャンネル登録者数が10万人を突破した。次世代スターの育成に力を入れている。
第1四半期の営業利益は振るわなかったが、今期は巻き返しを図る切り札がある。7月23日にリリースしたゲーム「hololive Dreams(ホロドリ)」だ。このゲームはサービス初日にダウンロード数が100万件を突破する人気を得た。しかし、中期的には業績に悪影響を及ぼしかねない懸念材料もある。
「最悪のシナリオ」を考察する
「ホロドリ」は音ゲーと呼ばれるリズムゲームだ。このジャンルには「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」や「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」など、息の長いヒット作がある。
「ホロドリ」の開発はサイバーエージェントの子会社「QualiArts」が手がけており、カバーとサイバーエージェントによる事実上の共同事業として展開されている。QualiArtsは人気アイドル育成ゲーム「学園アイドルマスター」の開発に携わった会社でもあり、キャラクター造形の質は極めて高い。
「ホロドリ」が音ゲーとしての面白さや、キャラクターの愛らしさで人気を獲得したのであれば、カバーが得る恩恵は大きいだろう。ゲームを起点とした「ホロライブ」のファン獲得に期待できるからだ。
しかし、「ホロドリ」は純粋な音ゲーとしての面白さよりも、「ホロライブ」の楽曲そのものが魅力的に見える。ゲーム内でのメンバーの掛け合いやストーリー、ミニゲームを楽しむ側面が強い印象だ。つまり、既存の「ホロライブ」ファン向けゲームという位置づけが強く見える。
カバーにとって、最悪のシナリオはこうだ。
「ホロライブ」のファンが、毎月10万円を推し活の費用として支出していたとする。ゲームが配信される前は、多くをグッズ購入や投げ銭などに使っていた。しかし、このファンが「ホロドリ」の登場によって、そのうち5万円をゲームに使うようになった。
「ホロライブ」に費やす金額は10万円のまま。しかし、ゲーム課金ではアプリストアへの手数料が発生する。また、売上・収益はカバーとQualiArtsで分配されると考えるのが普通だろう。そのため、カバーが得られる売上は少なくなる可能性がある。
この現象が多くのファンの間で起これば、カバーの業績への影響は小さくない。ただし、「ホロドリ」がゲーム性の面白さで新規のユーザーを獲得できれば、カバーにはプラスの影響をもたらす。結果は第2四半期以降の決算で見えてくるだろう。
カバーは2027年3月期第2四半期累計期間の売上高を前期比2.4%増の222億7000万円、営業利益を同27.6%減の19億3000万円と予想している。保守的な計画を踏まえても、ゲームがこれだけヒットして、上方修正を発表しない点は気がかりだ。
次の決算発表では「ホロドリ」の収益貢献だけでなく、マーチャンダイジング分野の売上がどう動いたのかにも注目する必要がある。ゲームが伸びる一方で物販が減少するのであれば、既存ファンの財布の中で支出先が移動している可能性も浮上する。逆にゲームと物販がともに伸びるのであれば、「ホロドリ」がカバーに新たな収益をもたらしている可能性が高まるだろう。
文/不破聡 内外タイムス

