「女性ホルモン」が枯渇する危険なダイエット「糖質ゼロ」と「脂質ゼロ」どっち?
女性ホルモンが枯渇する危険なダイエット「糖質ゼロ」と「脂質ゼロ」どっち?メディカルドック監修医が食事制限をすると女性ホルモンが乱れる原因・減少した際に現れる症状・女性ホルモンを整える食べ物などを解説します。
監修医師:
阿部 一也(医師)
医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。
「女性ホルモン」とは?

女性ホルモンとは、女性の身体のさまざまな機能を調整しているホルモンの総称です。代表的なものにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、月経や妊娠だけでなく、骨や皮膚、血管、脳など全身に作用しています。
また、女性ホルモンの分泌は栄養状態や生活習慣の影響も受けます。極端な食事制限や急激な体重減少によってホルモンバランスが乱れると、月経不順や無月経、体調不良などにつながることがあるため注意が必要です。
女性ホルモンはどこから分泌されるの?

女性ホルモンの多くは卵巣で作られています。卵巣は脳の視床下部や下垂体と連携しながら働いており、月経周期に応じてホルモンの分泌量を調整しています。
この仕組みは身体のエネルギー状態とも深く関係しています。栄養不足や過度な食事制限が続くと、脳は「妊娠や出産に適した状態ではない」と判断し、女性ホルモンの分泌を抑えることがあります。その結果、月経周期の乱れや無月経が起こる場合があります。
女性ホルモンの働き(役割)

女性ホルモンは月経や妊娠だけでなく、骨や血管、皮膚、脳など全身に作用しています。ここでは、女性ホルモンの主な働きについて解説します。
骨の健康を維持する
エストロゲンには骨の新陳代謝を調整する働きがあります。骨は常に古い骨を壊し新しい骨を作る「骨代謝」を繰り返していますが、エストロゲンは骨が過剰に壊されるのを防いでいます。そのため女性ホルモンが低下すると骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクが高まります。
食欲やエネルギー代謝に関与する
女性ホルモンは脳の視床下部に作用し、食欲やエネルギー代謝の調節に関わっています。エストロゲンが十分に分泌されていると食欲が抑えられやすくなりますが、分泌量が低下すると食欲が増したり体重が増加しやすくなったりすることがあります。
肌や髪の健康を保つ
エストロゲンにはコラーゲンの産生を促し、肌のうるおいや弾力を保つ働きがあります。また、髪の成長にも関与しており、女性ホルモンが低下すると肌の乾燥や抜け毛、髪のハリやコシの低下につながることがあります。
月経周期や妊娠機能を支える
女性ホルモンは月経周期をコントロールし、妊娠に適した身体の状態を整える役割を担っています。
エストロゲンは子宮内膜の発育を促し、プロゲステロンは発育した子宮内膜をみずみずしく変性させて、妊娠が成立しやすい環境を整える役割を担っています。
血管や脂質代謝をサポートする
エストロゲンには血管の柔軟性を保ち、LDLコレステロールを減らしてHDLコレステロールを増やす働きがあります。そのため、女性ホルモンの低下は脂質代謝異常、動脈硬化や心血管疾患のリスク上昇と関連すると考えられています。
食事制限をすると女性ホルモンが乱れる原因

過度な食事制限によって、女性ホルモンが正常に分泌されなくなるケースがあります。以下では、その理由について解説します。
視床下部の働きが低下する
食事制限で体重減少すると身体にとってはストレスがかかった状態になります。このため、視床下部が卵巣にホルモンを出す命令も弱まります。結果として、女性ホルモンの量が減少するケースもみられます。
女性ホルモンの材料が不足する
エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンは、体内のコレステロールを材料として作られています。極端に食事中の脂肪やカロリー摂取量を抑えると、こうしたホルモンを合成するために必要な物質が体内から不足してしまいます。
レプチンが低下する
脂肪細胞からは、空腹感を調整し満腹感をもたらすことで体重を維持する働きをもつレプチンというホルモンが分泌されます。
脂肪組織の量が減少すると、脳に到達するレプチンの量が減り、脳が「この身体は飢餓状態だ」と判断します。そして、エネルギー節約のために性ホルモンも減少するというようなメカニズムが働きます。
食事制限以外で「女性ホルモン」が乱れる原因

女性ホルモンは食事や体重だけでなく、年齢やストレス、病気などさまざまな要因の影響を受けます。
女性ならではのライフステージ
女性ホルモンは一生を通じて大きく変化します。思春期には分泌量が増加し、月経が始まります。妊娠中には大量の女性ホルモンが分泌され、出産後には急激に低下します。また、更年期には卵巣機能の低下によってエストロゲンが減少し、ほてりや発汗、気分の変化などの症状(更年期症状)が現れることがあります。
ストレス
強いストレスや睡眠不足が続くと、脳の視床下部や下垂体の働きが乱れ、女性ホルモンの分泌に影響を及ぼすことがあります。仕事や人間関係の悩み、過度な運動なども原因となります。ストレスによるホルモンバランスの乱れは月経不順や無月経として現れることもあります。
卵巣などの疾患
女性ホルモンの分泌異常は病気によって起こることもあります。代表的なものとして、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、下垂体腺腫、高プロラクチン血症、原発性卵巣機能不全などがあります。また、卵巣の手術や卵巣摘出後に女性ホルモンが低下することもあります。月経異常が続く場合は婦人科への相談が大切です。
過度な「食事制限」によって女性ホルモンが減少した際に現れる症状

女性ホルモンが低下すると、月経に関する症状だけでなく、心身のさまざまな不調が現れることがあります。これらは更年期症状と類似しています。食事制限による体重減少が原因となっている場合は、無理なダイエットを中止し、適切な栄養摂取を心がけることが重要です。
月経不順
女性ホルモンが低下すると排卵が起こりにくくなり、月経周期が乱れることがあります。月経が数か月止まる無月経につながる場合もあります。まずは過度な食事制限を見直し、十分な栄養を摂ることが大切です。月経が3か月以上みられない場合や妊娠の可能性がある場合は婦人科を受診しましょう。
ほてりや寝汗
エストロゲンが低下すると自律神経のバランスが乱れ、急なほてりや発汗、寝汗が現れることがあります。室温や寝具を調整し、水分補給を行うことで症状が和らぐことがあります。症状が続く場合は婦人科で相談しましょう。
気分のムラやイライラ感
女性ホルモンは脳内の神経伝達物質にも影響を与えています。そのため、ホルモン低下によって気分の落ち込みやイライラ、不安感が強くなることがあります。十分な睡眠や栄養摂取を心がけても改善しない場合は婦人科や心療内科への相談を検討しましょう。
性欲低下
女性ホルモンの低下は性欲や性的関心の低下につながることがあります。疲労感や気分の落ち込みが関係している場合も少なくありません。まずは無理なダイエットを中止し、十分な栄養と休養を確保しましょう。症状が長く続く場合は婦人科で相談することができます。
腟の乾燥や萎縮
エストロゲンには腟の粘膜を健康に保つ働きがあります。そのため女性ホルモンが低下すると、腟の乾燥や違和感、性交時の痛みなどが現れることがあります。市販の保湿剤や潤滑油が役立つ場合もありますが、症状が続く場合は婦人科で適切な治療を受けることが大切です。
女性ホルモンが枯渇する危険なダイエット「糖質ゼロ」と「脂質ゼロ」どっち?

女性ホルモンの合成にはコレステロールが必要であり、その材料となる脂質を極端に制限するとホルモン分泌に影響を及ぼす可能性があります。一方で糖質も重要なエネルギー源ですが、女性ホルモンへの影響という観点では脂質を極端に避けるダイエットのほうに注意が必要です。
女性ホルモンを整える食べ物

女性ホルモンを増やす特定の食品はありませんが、栄養バランスの取れた食事は正常なホルモン分泌を維持するために重要です。極端な食事制限を避け、必要な栄養素をしっかり摂取しましょう。
健康的な脂質を含む食物
女性ホルモンはコレステロールを材料として作られるため、適度な脂質摂取が大切です。アボカドやサケ・サバ・イワシなどの青魚、ナッツ類、オリーブオイルには健康的な脂質が含まれています。脂質を極端に制限するのではなく、質のよい脂質を適量摂取することを心がけましょう。
食物繊維を多く含む野菜やアブラナ科の野菜
食物繊維は腸内環境を整え、エストロゲンの代謝をサポートする可能性があります。りんごなどの果物、ひよこ豆やレンズ豆などの豆類、全粒穀物には食物繊維が豊富に含まれています。また、ブロッコリーやキャベツ、カリフラワーなどのアブラナ科の野菜も健康維持に役立つ栄養素を含んでいます。
良質なたんぱく質
たんぱく質はホルモンや筋肉、皮膚など身体を構成する重要な栄養素です。過度な食事制限によってたんぱく質が不足すると体調不良につながることがあります。卵や魚、鶏むね肉、ギリシャヨーグルト、大豆製品などをバランスよく取り入れましょう。
日常生活で出来る女性ホルモンを整える方法

病気が原因の場合には女性ホルモンの改善のためには治療が必要です。一方で、健康状態を最適化することで、ホルモンバランスを保つのに役立つ可能性があります。
定期的に運動する
ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどの適度な運動は、体重管理やストレス軽減に役立ちます。ただし、過度な運動は女性ホルモンの低下につながることがあるため注意が必要です。
ストレスを管理する
慢性的なストレスは視床下部や下垂体の働きに影響を与え、女性ホルモンの分泌を乱すことがあります。趣味や運動、十分な休息など、自分に合った方法でストレスを発散しましょう。
質の高い睡眠を十分に摂る
睡眠不足はホルモン分泌や自律神経のバランスに影響を与えることがあります。規則正しい生活を心がけ、毎日十分な睡眠時間を確保することが大切です。
「女性ホルモンと食事制限」についてよくある質問

ここまで女性ホルモンと食事制限について紹介しました。ここでは「女性ホルモンと食事制限」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
女性ホルモンが減少すると食欲はどうなりますか?
阿部 一也(医師)
女性ホルモンであるエストロゲンには、食欲を抑えたり代謝を促したりする働きがあります。そのため、女性ホルモンが低下すると食欲が増進するケースがあります。一方で、ホルモンバランスの乱れが自律神経にも影響し、胃腸の働きが低下することで食欲が低下する場合もあります。
女性ホルモンを整える果物について教えてください。
阿部 一也(医師)
食物繊維を豊富に含む、ラズベリーやブラックベリー、りんごなどは女性ホルモン、特にエストロゲンの代謝をサポートする可能性があります。ただし、特定の果物だけでホルモンバランスを整えることは難しく、バランスの取れた食事が重要です。
まとめ女性ホルモンを保つには極端な食事制限を避け、バランスのよい食生活を心がけましょう
女性ホルモンは月経や妊娠だけでなく、骨や血管、皮膚など全身の健康維持に重要な役割を担っています。しかし、極端な食事制限や急激な体重減少によってホルモン分泌が低下し、月経不順や無月経、ほてり、気分の変化などさまざまな症状が現れることがあります。
女性ホルモンを保つためには、脂質やたんぱく質を含むバランスのよい食事を心がけることが大切です。また、適度な運動や十分な睡眠、ストレス管理も欠かせません。月経異常や体調不良が続く場合は自己判断せず、婦人科へ相談しましょう。
「女性ホルモン」と関連する病気
「女性ホルモン」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
婦人科系
更年期障害月経不順
子宮内膜症多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
骨粗鬆症女性ホルモンの変化は月経や妊娠だけでなく、骨や血管などの健康にも影響を与えます。
「女性ホルモン」と関連する症状
「女性ホルモン」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
ほてりのぼせ
発汗
不眠
イライラ
疲れやすい月経不順
女性ホルモンの乱れが関与する症状としてはこれらのようなものがあります。
参考文献
女性ホルモンとライフステージ|厚生労働省
摂食障害女性における無月経の管理~いつ、どうやって?~|日本小児思春期婦人科学会雑誌
月経不順・続発性無月経|日本産科婦人科学会雑誌
体重が減って月経が止まった…、身体でなにが起きているの?|日本産科婦人科学会
What Is Cholesterol? Types & Function|Cleveland Clinic
Physiology, Leptin|StatPearls - NCBI Bookshelf
Hormonal Imbalance: Causes, Symptoms & Treatment|Cleveland Clinic
多嚢胞性卵巣症候群|一般の皆様へ(日本内分泌学会)
Low Estrogen: Causes, Symptoms, Diagnosis & Treatment|Cleveland Clinic
How to Balance Your Hormones Naturally|UChicago Medicine AdventHealth

