与野党の賛成多数により改正個人情報保護法が成立した。この改正により、AI開発や統計作成を目的として、個人情報を本人の同意なしに取得・第三者提供できるようになる。

【映像】改正によって個人情報が提供される情報(10秒でわかる詳細)

 対象には氏名・住所にとどまらず、病歴・犯罪歴・信条といった「要配慮個人情報」も含まれており、「病歴や犯罪歴が知られたら差別につながりそう」「詐欺や強盗に使われるリスクがある」といった懸念の声がネット上で広がっている。

 国会の審議においても、中道改革連合が「プライバシーの観点から氏名や病歴など統計に不要な情報は提供前に削除すべき」と主張し、情報漏洩時のリスクを繰り返し指摘してきた。松本デジタル大臣は「個人情報がいろんなところに漏れてしまうのではないかという懸念があることは十分承知している。できる限り国民の皆さんの懸念を払拭していく」と答えたが、法律はすでに成立している。

 『ABEMA Prime』では、改正個人情報保護法の問題点とリスク、そしてAI開発と個人情報保護のあり方について考えた。

■長妻議員が指摘する法の問題点

 国会で改正案の問題点を追及してきた中道改革連合の⾧妻昭衆院議員は「今回の改正案は相当、活用一辺倒の部分があって、保護が軽視されている」と断言する。

 具体的な懸念として挙げるのは、名前と住所が紐付いた病歴データが、AI開発を含む統計作成等の目的であれば医療機関から企業や個人事業主に、本人の同意なく提供できるようになるという点だ。「病歴には遺伝病、性病、不治の病、難病、医療的措置も入る。例えば妊娠中絶をしたという情報も含まれる。でも名前と住所はいらない」と訴える。

 さらに今年4月、イギリスのUKバイオバンクから医療情報50万人分が流出し、中国のECサイトで販売されるという事件が起きたことにも言及した。「ヨーロッパ諸国は名前と住所を匿名化しているので、漏れたのは匿名化済みの情報だった。それでも大騒ぎになった。日本でこうなったら、相当漏れる危険性がある。政府が発表しただけで年間1000万人分、調査会社によれば2025年だけで3063万人分の個人情報が1年間で流出している」と警告する。

■「実名が必要なケースは思いつかない」

 AICX協会代表理事・小澤健祐氏は、「実名が必要なAIって何か、今考えてもそんなに思いつかない」と率直に語る。その一方で、「住所」については一定の必要性を認める。「犯罪歴と住所が組み合わさると、どの地域でどう育った人がどんな犯罪をする可能性が高いかという統計分析ができる。マンションの部屋番号までは要らないかもしれないが、この町に住んでいるくらいの情報は統計的に重要になる可能性がある」と説明する。

 名寄せの必要性についても「同一人物が過去どんな病気をしていて、時系列でどう推移したかを追えないと、統計的に使えなくなってしまう可能性がある。40代・都道府県だけに絞ってしまうと統計的な価値が下がる。より精緻な情報があった方がいいという考え方はできる」との理解を示す。

 一方で、今回の改正には問題もあると認める。「個人情報全般というのはやりすぎで、ちゃんとルールを整備しなければいけないのに、今はどんなAIを作るためにも個人情報全てを使っていいという乱暴さを感じる」。

 また、データを提供しても国民が利益を実感できていないことが普及の障壁だとも指摘する。「中国では個人情報を出すとサービスが便利になるという感覚が国民の間で強い。日本ではデータを出しても自分が便利になっている感覚がないから出したくないよねとなる。ブロックチェーン的な考え方で、データを出した人が何かしらのフィードバックをもらえる仕組みができるといいかもしれない」。

■「課徴金もゆるい」「マスコミはノーマーク」

 今回の改正では課徴金制度が初めて導入された点については、小澤氏は「いい側面」と評価するが、「1000人以上の情報が漏れた場合に限定されており、500人漏れても課徴金は課されない」「課徴金は個人情報を使って得た利益相当額の返還であるため、儲けていなければゼロ」との問題を指摘。個人にとっては生涯にわたる損失になり得るにもかかわらず、企業側の負担が軽すぎるという懸念だ。

 長妻氏も「EUではメタに1790億円の制裁金が課されている。日本は利益だけ返せばよく、しかも『相当の注意を怠った者に限る』という条文まで入っている。注意したと証明できれば無罪になる。政治は業界に本当にゆるい」と批判する。

 なぜ日本の政治は業界に弱いのか。「企業団体献金やパーティー券購入の規制が非常に弱く、政治の側に企業団体からの資金が流れているのでどうしてもそちらの立場を重視しがちになる。先進国17カ国は企業献金を禁止しているが、日本も禁止すべきだと思っている」。

 法律が成立してしまった現状については、「今回の改正案はほとんどマスコミがノーマークだった。テレビはほとんどやっていない」。しかし「まだやりようがある」との姿勢を示した。

(『ABEMA Prime』より)