「名門大卒・年収800万」50歳おひとり様の口座残高は100万円「不安と劣等感」から生まれる物欲【FPが助言】
一般的に「不安」が高まると、人は財布の紐を固く締め、貯蓄に励むもの。しかし、中には「不安に突き動かされ、どんどんお金を使ってしまう」という、底なしの泥沼にはまる人もいる。誰もがうらやむ高学歴・高収入というきらびやかな属性を持ちながら、コンプレックスによって「貯金ゼロ」の危機に瀕している50歳女性もその一人だ。
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【case】「お金のことを考えるだけでむずむずする」高学歴キャリア女性が抱える苦手意識
名門・お金持ち大学を卒業後、大手メーカーでキャリアを積み上げ、現在の年収は約800万円。奈津美さん(50歳・仮名)は、10年前に23区内で1LDKを購入し、猫と暮らす「おひとり様」だ。
「同世代の女性の中でもそれなりに稼いでいるはずなんですが、全然お金が貯められなくて。先日、50歳の社員を対象にセカンドライフセミナーを会社がやってくれたんですが、そのときに“あ、自分は老後資金貯められてないかも”と気づいてしまったんです」

老後資金どころか、預金口座にあるのはわずか100万円。「同僚の中にはiDeCoだかNISAだかで数百万円儲かった人もいるのに……」と焦った奈津美さんは、書店で読みやすそうな投資の入門書を購入した。
「でも、1ページも読めなくて。実はお金のことについて考えるのがどうにも苦手で、無理にお金の本を読もうとすると、首やみぞおちがムズムズかゆくなって、かきむしっちゃうんです」
とはいえ、50歳で貯蓄100万円が「まずい」ことは社内セミナーで理解している。まずはお金への苦手意識を直したいところだが……。
「自信がない人」ほど財布の紐がゆるい
なぜ収支を考えず散財してしまうのか。奈津美さんは、「自信がないからかもしれません」と自己分析する。地方の進学校から、内部進学者が多いことでも知られる一流大学に進学した奈津美さんも十分にハイスペックだが、大学時代の同級生、同僚など、周囲には「ガチで恵まれた人々」が揃っていた。「実家が太い」「おしゃれ」「教養豊か」で、しかも「性格がいい」。
彼らと付き合う中で、知らず知らずのうちに劣等感を膨らませていったのかもしれない。
「ネックレスひとつ買うにも、自分のセンスが信じられなくて。例えば“ヴァンクリのアルハンブラ”のような、誰もが認めるブランドの、しかも定番商品じゃないと安心できないんです。時計ならカルティエのタンク、バッグならいつかバーキンが欲しいから、いま財布などの小物をエルメスで買い集めていて……。ホームパーティに呼ばれても、手作り料理なんて貧乏くさいと思われそうだから怖くて持っていけません。伊勢丹の地下で高級なワインやチーズ、お惣菜を見繕って散財しています」
さらに1ヶ月でなくなる5万円の美容液を「お肌と心の栄養剤」と言い張り、切らすことがない。また流行りの洋服と聞けば、深夜テンションでポチッとネットショッピングしてしまう……。
そんな奈津美さんの癒やしは、専門店から45万円でお迎えした血統書付きのラグドールの女の子・ジジだ。
「猫はいいですよね、お散歩いらずで。毎晩のように外食をして酔って帰りますが、どんなに遅くなっても起きて玄関を覗きにきてくれます」
そう、奈津美さんは無類のお酒好きで、かなりの頻度で外食に出る。「ワイン1日1本までなら余裕」と豪語する。酔うと様々な心配事から解放される気がするのだ――。こんな消費を続けていれば、どれだけ年収があろうがお金が貯まるわけがない。
家計簿をきっちりつける几帳面な母親の「あんたはダメな子」という烙印
もう一つ、奈津美さんが貯蓄できていない要因となっているのが、幼いころから染みついたお金に対する過剰なまでの苦手意識だ。
奈津美さんの母は、非常に几帳面な専業主婦で、毎日の出費をきちんと家計簿につけ、完璧に家計を管理していた。
「母が眉間にしわをよせて夜な夜な家計簿をつける姿を見て、子ども心に『お金の管理って大変そう』と思っていました。そしてその母からは、『お小遣い帳もつけられないなんて、あんたは本当にお金の管理ができないダメな子ね』と言われ続けて……」
お金については、「どうせ私が考えたって意味ない、とにかく赤字を出してないからいいか」と思考停止してしまっていた。
【FPの処方箋①】「夜11時に寝る」生活で心身を整える
「奈津美さんのように、高学歴・高収入なのにお金を貯められない方は、けっこういらっしゃいます」
さまざまな「お金が苦手な人」の相談を受けてきたFPの山口京子さんはそう語る。
「なぜお金を使いすぎてしまうのか。よくよく聞いてみると、多くの場合、その人の心の奥底に不安が巣くっているんです。お金を使って不安をなんとかしようとしている……。収入の多い少ないに関係なく、自信のなさからそういう行動パターンにはまってしまうようですね。自分の好みとは関係なく、ブランドものにすがってしまうなどの見栄消費や夜中の衝動買いもそのひとつの表れです」
奈津美さんがはまったような見栄消費の悪循環を断ち切るために、山口さんが授ける処方箋は、FPらしからぬ意外なものだ。
「まず今日から、夜11時までに布団に入って寝ること! 不安や劣等感を抱えている人ほど、お酒を飲みに出たり、おとなしく家にいるときでさえ、なぜか夜中までSNSなどで『電車内で大騒ぎする外国人』や『不倫のドロ沼劇』といった、イライラする情報を見続けたりする傾向があります。そして、その鬱々とした気分のまま、深夜のネット通販でいらないものをポチポチと買い漁る。夜中の買い物は、お金を失い、不要なものを増やし、睡眠時間を削ってメンタルを蝕む『百害あって一利なし』の行為。まずは飲み歩くのをやめ、11時就寝を守り、睡眠時間を確保してください。生活リズムを整えるだけで、無駄な消費はかなり防げます」
【FPの処方箋②】出費ではなく「行動と感情のライフログ」を書き出す
奈津美さんのように赤字寸前の家計については、「家計簿アプリで収支を把握して」といったアドバイスが考えられる。しかし、山口さんはそれとは異なるアプローチを推奨している。
「真面目で優秀な人によくあるパターンなんですが、親御さんのお金教育が行き過ぎてしまって“お金は怖いもの”“1円単位できちんと管理するなんて無理”“お金にこだわるなんて卑しいこと”という意識が刷り込まれていることが……。お金のことで失敗させまいという親心が、わが子をマネー管理から遠ざけてしまうのです」と分析する。
お金に対する苦手意識を強く持ちながら散財してしまう人については、山口さんはまずは家計簿の代わりに「1日の行動と、その時の感情」をノートに書き留めるワークをすすめている。
「出費というものは、自分の『考え方と行動』が、最終的に数字という形になって表れたものです。だから、数字だけを追う前に、自分の行動やそれに伴う感情を可視化してみましょう。『~時:SNSで炎上記事を見て胸糞悪くなった』『~時:イライラしてデパコスで限定リップを衝動買いした、その時は一瞬スカッとした』というように、ライフログをつけていくのです」
自分の行動を客観的に見つめ直すと、「私は自分を慰めるため、不安を紛らわせるためだけに、この買い物をしていたんだ」という事実に改めて気づく瞬間が訪れる。その原因が「母親への劣等感」であれ「友人への見栄」であれ、原因となった不安に自分で気づくことこそが、歪んだ物欲を根本から解消する第一歩となるのだ。
「人間の習慣を変えるには最低でも3週間はかかるといわれています。まずは3週間、11時就寝と感情日記を続けてみてください。年収300万円でも自信を持って幸せに暮らしている人は大勢います。たっぷり眠って心の健康を取り戻すこと。それこそが、背伸びした消費で擦り切れた人生を、本当の意味でバラ色に変えるための、最強の資産防衛術なのです」
※プライバシー保護のため、記事中の事例は、具体的な状況の一部を変更しています。
今回のアドバイザー/山口京子(やまぐち・きょうこ)さん
1966年名古屋生まれ。金城学院大学卒業。大学在学中から、テレビ・ラジオに出演。2000年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。のべ2,500組以上の家計相談を受け、お金と人生の悩みを解決に向けてサポートしてきた。また、家計管理、貯蓄・資産運用のプロとして、金融庁、証券業協会、東京証券取引所の講演会にも出演。2024年には、「KOKUSAIには愛があるプロジェクト in あいち」のメインキャラクターに。『お金も人生も薔薇色!老後計画』(主婦と生活社)など著書多数。
取材・文/鷺島鈴香
デイリー新潮編集部
