北中米W杯でラウンド32敗退に終わった日本代表は、4年前からどれだけ成長できたのか。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 日本代表の過去最強説に嘘はないだろう。

 4年前のカタール大会では、明らかに格上のドイツとスペインを破り、ラウンド16でクロアチアにPK戦負けをしたので2勝1敗1分。それに比べれば北中米大会は1勝1敗2分けなので戦績は見劣りする。

 だが4年前とは日本の立場が変わった。カタール大会では組み合わせ抽選を終えた時点で、ダークホースでさえなくアウトサイダーと見られていた。実際逆転勝ちしたドイツ、スペイン戦は一方的にボールを支配されていたので、再現性は乏しかった。しかし今回はオランダもブラジルも、日本を対戦相手として危険視して臨んできた。

 4年前の日本代表は、多くの中心選手たちが飛躍期を迎えていた。冨安健洋はすでにアーセナルでプレーしており、ワールドカップが挟み込まれたシーズンには、三笘薫がレンタル先のユニオン・サン=ジロワーズからブライトンへ戻り、久保建英はレアル・ソシエダ上田綺世はフェイエノールト、守田英正はスポルティングへとステップアップ。南野拓実はリバプールを出てモナコへ移るが、逆にブンデスリーガでデュエル王だった遠藤航は大会翌年にリバプールへ移籍。この年には鎌田大地もフランクフルトをヨーロッパリーグ制覇へと導くなど、主力選手たちが次々と適正クラブに身を置き、各自の最高成績を書き換えていった。
 
 こうした個々の目覚ましい進化を基盤に、日本代表の戦い方の質も向上していく。カタール大会翌年のアジアカップでは準々決勝でイランに敗れたが、同年9月の欧州遠征では、ほぼスタメンを使い分けながらトルコとドイツに連勝。ドイツ戦は36%のポゼッションながらチャンスの数で上回り、特に枠内シュートはドイツの3本に対し10本を放ち、4ゴールを奪った。

 この間に森保一監督がアジアカップで起用し続けた鈴木彩艶が守護神として定着し、また町田浩樹、渡辺剛、瀬古歩夢、鈴木淳之介ら従来は手薄だったCB陣が欧州で評価を高めていく。振り返れば、高さを重視する指揮官が3バック一択へと傾き、最終的にはボランチの人数を削り非常時にはCBが代行という発想に繋がっていったのかもしれない。
 
 主力が上昇機運に乗ったこの4年間は、想像を超えて順風満帆だった。出場枠が急増したアジア予選が障害にならないのは当然だったが、当面のライバルで本大会でも日本と同じくグループリーグを突破したオーストラリアとの2戦も、森保体制では珍しく結果(1敗1分)とは裏腹に、内容では完全に圧倒した。

 今回オーストラリアがエジプトとPK戦まで戦い抜いたことを見ても、過小評価する必要はなかった。さらに昨年はブラジルに初勝利し、今年に入ってもスコットランドとイングランドに連勝。アグレッシブな守備から精度の高い攻撃へと繋げる流れも、たぶん選手たちに確固たる自信の裏付けがあるからこそ奏功していた。

 だが今回は諸々のサイクルが敵になった。

 グループリーグ突破の難易度は前回が上回ったが、今回は何位で通過をしてもラウンド32の相手が悪過ぎた。さらに主力に故障者が連なり、三笘、南野が出場できなくなった以外にも、コンディションが不透明な選手も少なくなかった。

 主将の遠藤が直前に離脱し、初戦では久保まで失う。これだけの過密日程なので故障者リストが膨れるのは多かれ少なかれ、どこの国も似たようなものだが、三笘と久保は日本の2枚看板とも言える存在で、左サイドでの三笘と中村敬斗の連係は最大の切り札になりつつあった。
 
 ブラジルは、フランスやモロッコに比べれば可能性のある相手だった。しかし結局日本は、大筋で2018年のベルギー戦、4年前のクロアチア戦、さらに言えばアジアカップのイラン戦と似た道を辿った。おそらく最も痛恨の想いを抱えているのは、選手たちではないだろうか。

 5バックのローブロックで耐え抜こうとするのは、以前から森保監督が好んで選択し、勝利したイングランド戦でもグループリーグのスウェーデン戦でも猛攻に晒され、失点しなかったのは僥倖だった。それでも前者はリードしていたし、後者は引き分ければ良かったが、ブラジル戦は勝たなければ次へ進めない試合だった。

 かつてイビチャ・オシムは、ロナウジーニョを擁すブラジルと戦う前に、こう言った。

「ロナウジーニョを守備に回せば、ロナウジーニョではなくなる」

 日本は優勝を目ざす前に、目の前の難敵に最大限のチャレンジをするべきだった。森保監督は「良い守備から良い攻撃」を掲げたが、良い攻撃をする姿勢がなければ良い守備は続かない。

 日本サッカーは、まだまだ成長期である。成長期には、ミスを怖れず前進を促すリーダーが必要だと思う。

文●加部究(スポーツライター)

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