戦前より、PSVが勝機を見出すのは困難だと見られていた一戦。ケガ人の続出で、DFアレックス、MFアフェライ、FWコネという、各ポジションの要とも言える選手を欠いたのだ。3日前の国内リーグでも、格下のNACに引き分けるなど、チーム力が著しく低下しているのは、誰の目にも明らかだった。

 そんなPSVとリバプールの対決は、今季、グループリーグでも実現しており、結果は後者の2戦負けなし(1勝1分)。リバプールは、週末の国内リーグでアーセナルを4−1で撃破するなど好調であり、まさにPSVとは好対照な状態にある。満身創痍のホームチームは、相手を勢いづけまいと、先制を狙うが、リバプールはキャラガーらが陣取る最終ラインだけでなく、中盤でもマスチェラーノが堅い守備を誇るだけに、核となる選手が不在のPSVはこれを崩す手段を持っていなかった。

 27分、リバプールは、フィナンが右サイドから駆け上がり中央に折り返すと、これをジェラードがダイビングヘッドで突き刺す。力の差、勢いの違いを示すにふさわしい、鮮やかな一撃だった。リバプールは無理にボールを追い回すことなく、効率的なプレーで数々のチャンスを構築し続けたまま、前半を終える。一方のPSVは、ボールを持たされる状態が長く続き、さらに前半でFWファルファンが負傷、ハーフタイムでベンチに退いてしまい、ますます苦境に立たされる羽目となった。

 前半の流れそのままに進む後半。思いどおりに試合を進めるリバプールは、4分、左サイドから上がったリーセが、左足アウトサイドにかけた強烈なシュートで25mの位置から、GKゴメスの牙城を崩し、早くも勝敗を決定づけてみせた。PSVは、反撃のためにFWクライファートを投入するも、いまだ試合勘が取り戻していない元オランダ代表ストライカーは、この試合でも不発に終わった。

 もはや、打つ手のないホームチームに対して、リバプールは18分、クラウチが長身をフルに生かしたヘッドでダメ押しの3点目を決めてみせる。チャンピオンズ・リーグでは、グループリーグでのPSV戦以来のゴールだった(ジェラードも同様である)。アウェーで3−0の圧勝。第2戦は1週間後だが、リバプールの意識のいくらかは、すでにそれより先、チェルシー対バレンシア戦の勝者との準決勝に向いているかもしれない。