28日に行なわれたフランス対オーストリアの親善試合。ゴールとアシストは19歳の初出場コンビ(ベンゼマとナスリ)があげたが、試合を通じてもっとも観客を沸かせたのは、リトアニア戦に続いて、またしてもアネルカだった。

 つねに2人以上の厳しいマークをつけられたアネルカだったが、自在なテクニックでそれらをかわし、相手にボールを渡さない切れのいいプレーを見せ続けた。再三再四、変化に富んだ動きでチャンスを生み出し、ときにはゴールに鋭く迫ったアネルカに、試合の翌日、各メディアとも絶賛を送っている。

 アネルカは試合後、サッカー専門サイト「フットボール365」に対し、「すべてがうまくいっている。プレーするチャンスを得たのだから、チームに何かをもたらすべく、最大限の力を出そうと思った。いい結果が出せてよかった」と満足感を語っている。

 1998年に代表デビューして以来、2001年までは代表の“常連”だったアネルカ。2002年から出番がめっきり減り、2003年、2004年とまったく代表に呼ばれなくなった。その後も折りにふれて招集されることはあっても、代表のレギュラーには定着しなかった。しかしこの2試合の活躍で、ドメネク監督の信頼をしっかり勝ち得たといって間違いない。

 一方、苦い思いを味わったのがもうひとりのFWシセ。やや精彩を欠くプレーで、スタッド・ド・フランスの観客から激しいブーイングを浴び続けた。ドメネク監督は、後半からシセに代えてベンゼマを送り込む予定だったが、シセへの心理的影響を考え、「観客の反応に屈した」と思われたくないために、一時は交代をためらったという。しかし予定通りベンゼマが投入され、得点をあげた。シセの胸の内には複雑な思いが去来したはずだ。

 しかしシセは試合後の記者会見で、「正直言って、ブーイングには動じなくなっている。ブーイングを受けたことは過去に何度もあった。これまで2年間のうち半分はケガだった。いまは調子を戻すとき。たかがブーイングくらいで、影響されることはない。自分には、こういう状況に立ち向かうだけの強さはある」とあくまで強気に答えた。