「秋葉原は変わってしまった」エンディングから1年「でんぱ組.inc」の仕掛け人&元メンバーの想い
秋葉原は普通の街になってしまった
「いつの頃からか、秋葉原の街は変わってしまいました。メイドカフェではなくガールズバーが増えてきて、普通の街になってしまった。だからこそ、あの頃の秋葉原を取り戻したい……そんな思いがずっとあったんです」
こう語るのは「でんぱ組.inc」「虹のコンキスタドール」「きゅるりんってしてみて」など数々のアイドルをプロデュースしてきた、「もふくちゃん」こと福嶋麻衣子さんだ。
「でんぱ組.inc」は昨年1月、16年の活動に幕を下ろしたが──。
1月12日(月)まで、神田万世橋「manseibashi tube」にて『でんぱ組.incエンディング「一年祭」』が開催されている。歴代の衣装や秋葉原ディアステージを象徴する「シャッター」の展示によって「でんぱ組.inc」の世界に浸ることができるだけでなく、元メンバーの相沢梨紗さんによる観客参加型のインスタレーション展示も行われている。
開催間近で準備に追われる福嶋さん、相沢さんに、展示に込めた想いを伺った。
「秋葉原で何かやらないか、というお話をいただいたのが企画のスタートでした。それなら『秋葉原を取り戻す』ことをやりたいと最初に思ったんです。タイミング的にはちょうど、でんぱ組.incのエンディングから1周年。でんぱ組.incはやっぱり秋葉原という街をテーマに生まれたグループだから、『あの頃の秋葉原』を再現するような展示をやろうと決めました」(福嶋さん)
2000年代半ばから2010年代前半──でんぱ組.incと共にあった秋葉原には、独特な空気が流れていた。たとえば今回の展示では、かつて秋葉原にあったセレクトショップ「五戒」が限定復活する。この店もまた「オタクとファッションカルチャーを接続した伝説の店」(福嶋さん)だった。
「秋葉原を取り戻すうえで欠かせないのが、メイド喫茶文化。メイドさんといえば相沢梨紗、ということでインスタレーションをお願いすることにしたんです」(福嶋さん)
いったいどんな展示を用意しているのか。Xでは「xx年後…?メイドカフェという文化が、博物館に展示されたら…?」というヒントを投稿していたが、その真意とは。
「2メートル以上ある巨大なメイドを作っています。その『巨大メイド』も、実は小さいメイド服が折り重なって作られているんです。実際のお店で使っている衣装を集めてきたり、家中に布を広げて縫ったりしながら、組み立て中です。メイドカフェがテーマなので、お客さんも参加できる展示になっていて、メイドさんによる『萌え萌えキュン』などを体験できる特典会形式のインスタレーションも準備中です」(相沢さん)
ユーキャン新語・流行語大賞に「萌え」「アキバ系文化」がノミネートされたのは2004年、翌年には同賞の上位10語に選出されている。相沢さんが秋葉原にやってきたのも、そんな頃だった。
「私がメイドさんをやっていたのは、秋葉原のメイドカフェブームが最高潮を迎える頃でした。でんぱ組.incはまだありませんでしたが、みりんちゃん(古川未鈴)、ねむちゃん(夢眠ねむ)、えいたそちゃん(成瀬瑛美)も、みんなメイドさんとして働いていました。
今のメイドカフェでは、シャンパンを入れて、チェキを撮ってという店も多いと思います。でも当時の秋葉原では、お店ごとにもっと多様性がありました。たとえば、私がいたところは『ご主人様が外出中にお客様がいらっしゃったので、粗相がないようにメイドさんたちがお迎えします』というコンセプト。だから、お客さんのことを『ご主人様』『お嬢様』とは呼びません。一方、みりんちゃんのところは給仕中にアニソンを歌ったりする、オタクが集まる場所みたいな雰囲気でしたね」(相沢さん)
再びステージに立つ可能性も……?
そんな秋葉原を舞台に2008年、でんぱ組.incが誕生。16年にわたって活動をつづけた。「エンディング」から1年が経つが、二人はどう感じているのか。まず相沢さんが振り返る。
「死ぬこと以外ででんぱ組.incをやめるつもりはなかったんですが、グループの寿命が来てしまった(笑)。今は記憶を持ちながら『転生』した、チート状態で生きているような気持ちです。だから『一周忌』ではあるけれど、もっとポジティブな『一年祭』ができるのがしっくりきていますね」
1年が経って、寂しい、悲しいという感情とはまた別の想いが生まれている。それはプロデューサーである福嶋さんも同じだという。
「エンディングと言いながら、楽曲をカバーしてもらったり、写真が展示されたり、テレビで取り上げていただいたりと、でんぱ組.inc関連の仕事は続いています。そして今回は一年祭もやることになって、『この先も一生続くのでは?』と感じています(笑)。
解散した後にタブー化して触れられなくなるグループもいますが、でんぱ組.incはメンバーが嫌でやめたわけではない。実はエンディング後にCDのリリースもありました(笑)。史上初、エンディング後も盛り上がるアイドルということで、新しいアイドルの形が生まれたと感じています」
展示だけでなく、今後再びステージに立つ可能性も……?
「20周年(2028年)くらいならできる……かも」(相沢さん)
「足腰が痛いメンバーはひな壇に座って、応援したりして(笑)」(福嶋さん)
最後に、改めて『でんぱ組.incエンディング「一年祭」』の見どころを語ってもらった。
「あの頃の秋葉原を体感することで、改めて『俺ってオタクだったかも……』という気づきがあるかもしれません。見るだけじゃなくて、体験して、感じて、自分の中で考えが生まれるような展示になっていると思います!」(相沢さん)
「街のシンボルというとおこがましいですが、秋葉原のひとつの象徴になっていたディアステージのシャッターが復活します。『1年に1度だけ、ご本尊が拝めます』くらいのイメージで、お参りしに来ていただけるとありがたいです」(福嶋さん)
「あの頃の秋葉原」をぜひ体感してみてほしい。
