だからダイエットや健康に効果あり…ワインとヘルシーに付き合う人が実践する"たった1つ"の飲み方
※本稿は、佐野敏高『ワインビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■飲食店でワインを飲む本当の意味
ワインという美しい嗜好品を取り扱う人たちは各々の哲学を持っています。レストランやワインバーでもそれぞれの理想を求めて自己研鑽を続けています。これから話すお話は僕の経験をもとにしています。すべての環境に当てはまらないと思いますがご容赦ください。
ワインと向き合うことよりも難しいのが、お客様と一緒に空間を造ること。お客様と同じ目線でワインの世界を共有することは、食を通して生き方そのものを擦り合わせることです。
僕は飲食店でワインを飲む意味を、常に自分自身に問いかけています。経験したものを自分の引き出しに入れ、感性というスパイスを用いて編集をし、何度も反芻して自分の言葉にしていきます。佐野にとってのワインとは? 自分の経験から答えを見出していきます。
僕たち給仕人とパートナーであるワインの個性が手を組むことで、観客であるお客様にとって唯一無二の世界を創造できると思うのです。ワインの味わいは、注ぎ手によって不思議なくらい変わるものです。
そこにはお客様への気配りはもちろん、ワインや料理、そして少しばかり自分自身への配慮も必要です。卓越した技術や経験が加われば、時にワインはただの飲み物を超えて、心に響く瞬間を生み出してくれることがあります。
大切なのは肩の力を抜いて楽しんでいただくこと。そして、その場に特別な喜びが自然と生まれる空気を造ることです。ワインを口にした瞬間、ふと会話が止まることがあります。たぶん、その人の心のどこか深い場所に、ワインが静かに触れたのでしょう。
そんなとき、そっとワインの物語を添えるだけで、そのテーブルの会話は少しだけ豊かになります。
■組み合わせの意味をお客様目線に変換
お客様の得意な話題からワインの性格や味わいを紐解くアプローチもいいでしょう。
ファッションに精通している方なら、コーディネートをワインの味わいに変換して、「今つけている小さなアクセサリーのように、この料理にワサビを添えて味の調和を造りました」などのように、組み合わせの意味をお客様目線に変換する。
ワインサービスを担う方は、どんな話題やテーマにおいてもお客様が理解しやすい世界と言葉で表現することが必須です。
そのためには教養と品性がある程度必要だと思うのです。好みだけでワインを提案するのなら、ワインのアプリ診断で十分でしょう。どれだけ素晴らしい畑のブドウを使っている、最新の造り方だよ、特級の味わいがするよね、と言っても中身がなければそれは何も意味をもたないのです。
僕はお客様自身がワインに興味をもってもらえるような手解きこそがワイン提供の鍵になると思います。生産者の個性、愛情や哲学をお客様へ伝えること。そしてお客様の持つ好奇心や探究心を刺激し、感動する体験へと繋げるような糸口を探します。
同じワインでも食事や会話、お客様がグラスをどのように持ち、口へ運び、口へ含む量を観察しながら温度や提供グラス、タイミングを変えています。お客様の料理の咀嚼回数によって異なる提案をします。
■その一杯は一期一会
一杯のワインがもたらす壮大な体験のためには、たとえば「よく噛んでくださいね」と食べ方の提案をすることも少なくありません。余計なおせっかいと思われるような瑣末なことも必要なのです。
最終的にこいつになら全部任せられるな、と思われて初めてプロデューサーを超えたディレクター業務を担うことができるのです。
お客様は自由に楽しんでください。サービス人はお客様がお店に入った瞬間から立ち振る舞い、言葉の使い方、装いと清潔感、空間や音楽による総合世界観で、お客様の期待を上回らなければならないのです。どんな声の調子で喋るのか、舞台役者となりお客様とワインのために美しい舞台を造り上げるのです。

同じワインを、同じ場所で、同じ人と飲んでも、きっと昨日とは違う味がするでしょう。
気温の変化、流れる音楽、隣のテーブルの笑い声――そんな些細な要素が、味わいに微妙な影響を与え、その形を変えていきます。ワインはまるで窓ガラスに映る月のようです。
手を伸ばせば消えてしまうのに、そこに確かに存在している。そして気づけば、同じはずの月も、少しだけ違う顔をしている。だから、この一杯を大切に味わってほしい。今この瞬間のワインは、もう二度と戻らないのだから。
■ワインとの健康的な付き合い方
適度な飲酒は身体の機能を整えるけれども、過剰は逆効果となります。このバランスの中に、自然界の黄金比が潜んでいる気がします。お酒を取り扱う立場でアルコールと健康についての繋がりを説くのはナンセンスだと思いますがご容赦ください。
最初に結論をお伝えしましょう。ワインを飲むシチュエーションで1番大切なのは、適度な酒量と、体をリフレッシュするための水を交互に飲むこと。そして自分のアルコールの許容量を理解しておくことに他なりません。

人は何度もお酒で失敗しては猛省し、翌日にはその内容を忘れてお酒を手に取ってしまう生き物です。無理して飲んだワインは、飲んだ時に得た喜びや味わいの記憶すら朧げになってしまいます。お腹いっぱいなのに無理しておいしいものを食べ続けることと同じ。
かの美食家ブリア・サヴァランが説いた「禽獣は喰らい、人間は食べる。教養ある人にして初めて食べ方を知る」。この言葉に当てはまるような飲み方が求められますね。
ワインは古代から人々の生活に深く根ざし、その適度な摂取が健康に寄与する可能性が示唆され、長年ワインと健康の関係性における研究が行われてきました。
2024年時点における国際機関の論文や研究発表を見ていても、正直当時の内容とそんなに変化がありません。たとえば、適度な赤ワインの摂取は心血管疾患のリスクを低減するとの研究結果があります。
■ストレスを軽減し心を穏やかにする効果も
これは、赤ワインに含まれるポリフェノールやレスベラトロールなどの抗酸化物質が、血管の健康を保ち、動脈硬化を防ぐ作用を持つためと考えられています。
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、1日あたりの純アルコール摂取量を男性で20g程度、女性や高齢者、お酒に弱い人はより少なくすることが推奨されています。言うは易く行うは難し、ワインの魅力に引き込まれるとどうしても杯が進んでしまいます。
さまざまな研究が示しているのはワインと健康の関係が「二律背反」の構図にあるということです。一方で、アルコールそのものは体に悪影響を及ぼすとされ、多くの研究が過度の摂取によるリスクを強調しています。
心臓病、がん、肝疾患などのリスクが統計的に示されるたびに、僕たちは「健康のために飲むべきではない」という結論に行き着くのかもしれません。
しかし、それだけがワインの真実ではありません。ワインは単なる飲み物ではなく、歴史を通じて培われてきた「文化」です。
家族や友人と語らいながら一杯のワインを楽しむこと。それは心を癒し、精神的な健康を育む「環境」を造り出します。ストレスを軽減し心を穏やかにする効果は、科学の目には測り難いものです。
■味覚を鋭敏にするために禁欲を
エピクロスは、真の快楽とは節度と知恵によって得られる平穏だと説きました。しかし、ワインを飲むことはその節制の中にこそ輝く喜びを秘めています。
一杯のワインは、過剰でも禁欲でもない、心地よい中庸の瞬間を演出します。香り、味わい、語らいの中で生まれる小さな幸福は、健康的な節度と深く結びつくのではないでしょうか。
ワインはただ酔うためのものではなく、人生の豊かさを静かに映し出す鏡。
だからこそ、僕たちはその二律背反の中で、ワインがもたらすささやかな歓びを信じ続けるのです。健康に対する責任を意識しながら、精神的な豊かさを得るための一歩を踏み出す。そのバランスの中に、ワインの持つ本当の価値があるのです。
レストランにおけるワイン提供についても給仕人の一挙一動が求められます。たくさんのワインを召し上がるお客様であっても、場合によっては「今日はこれくらいにしておいた方がいいですよ」と言うことも必要なのです。
もちろんたくさん飲んでいただければ経営的には助かります。ですが長いお付き合いを考えたら、適度な量をゆっくりと楽しめるワインの提案をするなど、サービス人が良質な時間を造る一助にならなくてはいけません。
ボトルでご注文の場合も、飲むペースの早いお客様にはゆっくりと飲むことを促します。そんなの人の勝手じゃないかと思われるかもしれません。ですが、人生を豊かにするためのパートナーとしてのワインから、豊かな時間を奪うものになってしまうのは悲しいでしょう。
僕も40歳を超えてから自分自身のお酒の飲み方を色々と研究しました。シチュエーションごとのアルコール摂取量の平均、お水を飲む回数、複数種のお酒を同じタイミングで飲まない(チャンポンしない)などのルールを設けています。
また、休肝日を設けて肝臓の代謝機能を休ませること、味覚を鋭敏にするために禁欲をするなどの対策をしています。
長くこの美しい文化を楽しむために、自分自身が健康であり続けるための嗜み方を毎日模索することすら楽しんでいます。何にしても、飲みすぎてはいけませんね。
■ワインにはダイエットや健康をサポートする成分も
多くの人にとってこれは少し悩ましいテーマかもしれませんね。「ダイエット中だからワインは我慢しよう」なんて思う日もあるかもしれません。でも実は、適切な量を守ればワインはダイエット中でも楽しめる飲み物になります。
それどころか、賢く取り入れることで心も体もリフレッシュでき健康をサポートする側面もあるのです。そんなワインとダイエットの素敵な関係をご紹介します。
まず、ワインは種類によってカロリーが異なります。たとえば、赤ワイン1杯(約150mL)のカロリーは約120〜130kcal、白ワインなら約110〜120kcal。スパークリングワインはさらに減って約100kcalと言われています。もちろんつくりによって異なります。
甘口のデザートワインは糖分が多いため、カロリーは少し高くなります。辛口のワインならカロリーを抑えつつ楽しむことができそうです。ちょっと甘いのが好きな方は、グラスの半分量にすることでカロリーをコントロールしながら贅沢なひとときを楽しめますよ。
ワインにはダイエットや健康をサポートする成分もたくさん含まれています。

特に赤ワインに含まれるポリフェノールは抗酸化作用が強く、ほかにも血流を改善したり、心臓を健康に保つ効果があるといわれています。さらにレスベラトロールという成分は代謝を促進し、脂肪燃焼を助ける可能性もあると言われています。
ワイン1杯量では確信的な効果はないかもしれませんが、プラシーボ効果を発揮するには十分なお話でしょう。これらの効果を得るためには適量を守ることが大前提。ワインを一日1杯程度に抑えることで、健康を楽しみながらダイエット中も楽しむことができそうですね。
■血糖値の急激な上昇を抑える効果も
さて、もうひとつのポイントは、何と一緒に飲むかです。ワインの味わいを引き立てる食事は、実はダイエットを邪魔しないどころか上手に選べばサポートしてくれるでしょう。
たとえば赤ワインなら、脂の少ない赤身肉やグリルした魚との相性が抜群。タンパク質を豊富に含むこれらの食材は、筋肉の維持や代謝アップを助けてくれます。

白ワインには蒸し野菜やシーフードがぴったり。特にブロッコリーやほうれん草は栄養満点でヘルシーなおつまみとしておすすめです。
ワインと食事の組み合わせは血糖値の急激な上昇を抑える効果があるとも言われています。ワインには食後血糖値を緩やかにする働きがあり、炭水化物を摂る際でもその影響を和らげてくれる場合があります。
ただし、これはあくまで適量を守った場合の話。飲みすぎはもちろんNGです。ダイエット中でも、ワインを楽しむことを諦める必要なんてありません。無理なく続けるために、ワインを楽しみ、それが心の満足感へとつながり、ダイエットを支えてくれるのです。
心がリラックスしていると、つい食べ過ぎてしまうことも防げますし食事の満足感も高まりますよね。次にグラスを手に取るときは、その一杯が自分の体や心をいたわる素敵な時間だと考えてみてください。
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佐野 敏高(さの・としたか)
ソムリエ
1984年神奈川県横浜市生まれ。幼い頃マレーシアで育ち、高校卒業後ニュージーランドへ留学。ワインのある生活に魅せられイギリスへと拠点を移す。ヨーロッパ各国へ足を運びワインを学ぶ。帰国後は老舗グランメゾンのアピシウスなど、さまざまなフレンチレストランやワインバーで経験を積む。Racines、puhuraなどに勤めたのち、2016年に独立。Wine Bistro calmeとワインのお店 さらさを開業。オーストリアワインアンバサダー。ポルトガルワインコンクールにて最優秀賞受賞。趣味はフルート演奏と日本舞踊。
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(ソムリエ 佐野 敏高)
