「お客様満足度95%」は本当にスゴイのか…ビジネスの数字を正しく読み解ける人が持っている"鋭い視点"
※本稿は、山口拓朗『読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「ファクト」と「個人の意見」を分けて扱う
読解で陥りがちな罠のひとつが「ファクトの抜け落ち」です。
ファクトとは「客観的な事実」を意味する言葉で、個人の価値観や感情に左右されやすい「個人の意見」とは分けて考えられています。物事を正しく理解するためには、まず「ファクト」と「個人の意見」を分けて扱う必要があります。
ファクトの多くは数字で示すことができます。
たとえば、カラオケの採点機能の点数は、歌の「上手・ヘタ」を判断するうえで有効なファクトになり得ます。音程、抑揚、ビブラート、ロングトーンなどの技術的な要素が基準に達していれば、高得点が出るわけです。
一方で、「私は、この人の歌が好き」という認識については、カラオケの得点とイコールとは限りません。
点数が低くても「この人の歌が心に響いて好きだ」と感じることもあるのです。これは、ファクトではなく「個人の意見」です。
このように、「ファクト」と「個人の意見」はどちらが大事ということではなく、まったく次元の違うものだということを知っておく必要があります。
ビジネスシーンでは、とくに「ファクト」が重視されます。逆に、「私は◯◯だと思う」「△△さんの意見は常に正しい」のように、(根拠やファクトなく)個人の意見に依存しすぎている人は注意が必要です。
たとえば、あなたがレストランチェーン店のエリアマネージャーで、新しくオープンした店舗Aに視察に行ったとしましょう。
以下は、あなたが視察現場で収集したデータです。

■レストランチェーン店のエリアマネージャーなら…
・木下店長は「好調ですのでご安心ください」と自信満々に話す
・お昼時、席が半分ほど埋まっていた
・売上を確認したところ、オープン後2週間の売上が300万円、直近の2週間の売上が180万円
もしも木下店長の言葉を鵜呑みにするなら、「好調で問題なし」という視察報告文を書くことになるでしょう。
しかし、これは「個人の意見」に寄りすぎた読解です。
事実、1カ月間を前後半に分けた際、後半の売上は、前半の2/3以下に下降しています。
しかも、視察当日は、かきいれ時の時間帯に席が半分しか埋まっていませんでした(これは「たまたま」の要素も残るため、ファクトとしては弱めですが)。
「売上」のファクトを見る限り、「もしかすると、好調だったのはオープン直後の一過性のものだった可能性がある」という結論も除外できず、懸念点が存在することは間違いありません。
その点を報告しなければ、正しい視察ができたとは言い難い状況です。
一方で、以下のような点も併せてチェックできていれば、より適切にファクトを押さえていると言えるでしょう。
・1カ月間の売上の推移
・1日の来店人数
・お客様1人あたりの平均飲食額(客単価)
・座席の回転数
・お客様のリピート率
・お客様の満足度

■ファクトの分析で本質を読み解く力が磨かれる
さらに言えば、似た環境&店舗規模の他店との比較なども行なうことで、より鮮明な事実が浮かび上がってきます。
このようにファクトを基に深く分析することで、感情や思い込みに惑わされずに、物事の本質を読み解く力が磨かれます。
ファクトに基づく考察や分析は、本質的な課題や機会を明らかにし、より賢明な意思決定を行なう際に不可欠です。
もちろん、ファクトがいつでも「絶対」というわけではありませんが、物事を読み解くうえでも、本質に迫るうえでも、重要な指標であることは間違いありません。
■数字の裏側を見通す力は、本質を見通す力
この流れで「数字」の話をします。
ビジネスシーンでは、多くの場合、数字を読み解く力が求められます。数字を正しく読み解くことで、正しい評価や判断が可能となるからです。
たとえば「売上」の数字だけ見ていれば安心かと言えば、そんなことはありません。食材が高騰し「売上原価」が高くついた結果、売上総利益が低下しているとしたら、いくら売上が高くても評価できません。
数字というのは、ファクトには違いありませんが、多面的・複合的に見ていかなければ、その本質を見落とすリスクも秘めているのです。
「お客様満足度95%!」
こんな数字を見れば、「おっ、スゴイ!」と思うのが人間です。
しかし、このアンケートデータの母数はどれくらいでしょう。母数が20人か、200人か、2000人かで、それぞれ見えてくる世界が異なります。また、アンケートの取り方が作為的で、「満足」や「大満足」にチェックを入れやすい仕組みになっているかもしれません。
数字というのはファクトである一方で、都合よく使うこともできてしまうものです。そのことを理解していると、数字に触れる際に、「この数字はどうやって算出されたのか?」「もう少し多角的に見たらどうなるか?」「つくられた数字という可能性はないか?」――という見方をしていくことができます。
数字を鵜呑みにするのではなく、その数字にまつわる情報を適切に読み解きながら、その数字の正確性や信憑性を判断しましょう。
数字の裏側を見通す力は、取りも直さず、本質を見通す力と言えます。
■事実のように書かれている「推測・憶測・意見」
事実?:サトシは運動が嫌いだ。
事実?:昨日、サトシは運動会を休んだ。
この2つの事実があったときに、サトシの友人のシンイチが「サトシは運動したくないから、昨日の運動会を休んだ」と言ったとしましょう。
このシンイチの発言は正しいのでしょうか? 答えはノーです。
たしかに、事実?と?を見たときに、「サトシは運動したくないから【原因】、昨日の運動会を休んだ【結果】」という可能性もゼロではありません。
しかし、それはあくまでも推測・想像の話であって、事実と言い切れるものではありません。もしかしたら、サトシは運動会当日にたまたま風邪をひいたり、身内に不幸があったりしたのかもしれません。
マスコミやSNS、企業のPRなど、多くのメディアが、あらゆる事実や資料を示して、自説や持論の説得力を高めようとしていますが、事実から推論できるからと言って、それもまた事実であるとは限りません。
一見、事実のように書かれていても、単に推測や臆測、一意見にすぎないことも多いのです。
このような言葉のマジックを見破ることも、読解力が果たす大きな役割です。
読み解き損ねた理解から導き出される「本質」は、もしかしたら、ハリボテのような見かけ倒しの本質、陽炎のような実態のない本質かもしれません。
■意見や主張をする人は「もっともらしく」語る
この文章を読んで納得した人は、少し危険です。
失業率と普通離婚率の低さを根拠に「豊かな国」と言い切ることはできません。そもそも、「豊かさ」の定義とはなんでしょう?
定義を示さず、「日本は豊かな国である」と書いても納得できません。
さらに言えば、普通離婚率が低いことは「いいこと」なのでしょうか?
もし、貧困のために離婚できずに苦しんでいる人がたくさんいたとしたら?

上記の文章は、事実を積み上げて立派にまとめ上げたように見えますが、その実は「綻びだらけの文章」とも言えるのです。
意見や主張をする人は、(当たり前ですが)そのことについてもっともらしく語ります。だからこそ、何が事実で何が事実でないかを見極める目を持つ必要があるのです。
個人の臆測や根拠の薄い意見を漫然と受け取ることは、誤った情報や歪んだ情報を自分に取り入れてしまうことにほかなりません(脳内ネットワークにおかしな「理解の箱」が格納されることになります)。
一つひとつの情報を精査するスキルも、読解力の一部と心得ておきましょう。
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山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長
山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演、研修を通じて「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れる文章&コピーの作り方」など実践的なノウハウを提供。2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。著書に『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける87の法則』(明日香出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)など27冊。中国、台湾、韓国など海外でも20冊以上が翻訳されている。NHK「あさイチ」などのテレビ出演も。
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(伝える力【話す・書く】研究所所長 山口 拓朗)
