ズワイガニ漁の解禁から2日遅れの8日(金)、能登半島地震の被災地・輪島で水揚げされたカニも金沢市で初競りにかけられました。

水産関係者、それぞれの思いを取材しました。

鮮魚店店員:「いらっしゃーい!カニ解禁、カニ解禁!」

近江町の買い物客:「待ってました」「買いに来ました。朝イチで!」

9日、今シーズン初めて水揚げされたズワイガニが、ようやく店頭にお目見えしました。

観光客も楽しみにしてカニを「お買い上げ」

客「地元の香箱ガニを下さい」

観光客「きのう地元の人とお酒を飲んだときにきょう(地物のカニが)出るから朝行きなさいと言われて、言った通り買いなさいと言われ買いました」

元日に発生した地震により漁場への影響などが心配されましたが…

客「おいしいですよね」

荒木専務「味的にはやっぱり日本海の足の長いズワイガニがおいしい」

能登で水揚げされたカニも店頭に並び、店の人もホッと一安心の様子です。

メスの香箱ガニの水揚げは60箱までに

大口水産・荒木優専務「漁場にカニはおらんのじゃないかなと輪島の漁師さんも心配していたと思うけど、行って網引いたら多少なりともおるんで、これからもっともっと増えてきて、いるべきところにいてくれたという安心感が我々にも伝わってきた」

8日(金)午後の輪島港。地震による海底隆起で水揚げ場が6か所と限られるなか、仮の桟橋にベルトコンベアーを設置して水揚げ作業が行われました。

金沢での競りの時間に間に合わせるため、船が1回の漁で網をかける回数のほか、メスの香箱ガニの水揚げを60箱までに制限しました。

被災地・輪島からのカニも到着!

「きょう水揚げされた被災地・輪島からのカニも到着しました」

時を同じくして石川県漁協輪島支所の職員も到着。10か月ぶりに本格的な漁に出られた漁師たちの気持ちを思いやります。

石川県漁協輪島支所・上浜敏彦統括参事「漁師の方が、きょう出られたぶん気持ち的には…胸のつかえが下りているのではないかと思います。初めて漁に出られて、それなりの量もありましたので…通常より少ないですけど、それなりに自分らで決めた数量を獲ってきているので良かったなと思う」

輪島のカニが少しでも高い値段で競り落とされてほしいと願う

漁協の職員らがセリの準備に追われるなか、この日を人一倍気にかけていたのは、震災を機に県漁協輪島支所からかなざわ総合市場へ異動してきた伊吹拓也さんです。

伊吹拓也さん「ちょっと感慨深い感じですね。漁が出ないと思っていたので、出て良かったです」

輪島では経験できない規模の大きな競りの準備作業に追われながらも、輪島のカニが少しでも高い値段で競り落とされてほしいと願います。

最高級ブランド「輝」の認定は?

「9時過ぎになり、輪島港のズワイガニの初競りが始まっています」

県漁協によりますと、この日、競りにかけられたオスの加能ガニは1万6000匹あまり。輪島で水揚げされたものは例年より高めで競り落とされたということです。ただ、最高級ブランド「輝(かがやき)」の認定はお預けに

一方、メスの香箱ガニは初日に運び込まれたおよそ18万匹の中から2匹が最高級ブランドの「輝姫(かがやきひめ)」に認定されました。2匹についた値段はそれぞれ4万円。

2023年の初値の5万円には及ばなかったものの、関係者にとっては、無事に漁を迎えた喜びの方が大きかったようです。

競り落とした山岸さん「もう嬉しいですね、嬉しいの一言です」

競り落とした上島商店・山岸礼さん「最初から落とそうという気持ちだったので。もう嬉しいですね、嬉しいの一言です」

無事に初競りを終え、輪島出身の伊吹さんも地元に思いを寄せます。

伊吹拓也さん「これだけ注目してくれて有り難いです。輪島は…早々に復興はしてほしいですけど…前向きになれれば(気持ちが)上に、だんだん上がってくれればいいと思います」

近江町市場ではカニ汁を格安で提供

近江町市場カニ鍋コーナーの係員「輪島から香箱ガニを用意しております。どうぞお召し上がりください。宜しくお願いします」

初物が店頭に並んだおとといの近江町市場では、カニ汁が格安で提供されました。

客「漁に出られないときがあったと聞いて食べててありがたみをさらに感じます」「まだ復興が進んでいないんですよね。少しでもお力になれればと思います」

元日の地震から10か月あまり。待ちわびた日本海の冬の味覚には、多くの水産関係者のなりわい再生への思いが込められています。