鹿島がタワークレーンの自動運転と遠隔操作システムをダム工事に初導入 生産性が約20%向上、安全性アップで実用性を確認
鹿島は、タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo」を初めてダム工事に導入し、タワークレーンの「自動運転システム」および車両運行管理システム「スマートG-Safe」と組み合わせて適用することで、現場作業の生産性と安全性を向上させた。
「TawaRemo」は、オペレータの作業環境の改善と生産性向上を目的に、鹿島、竹中工務店、アクティオらが共同開発したシステムで、2020年から建築工事を中心に導入を進めてきた。
秋田県で施工中の成瀬ダム堤体打設工事において、「TawaRemo」、「自動運転システム」、「スマートG-Safe」の3つのシステムを組み合わせてコンクリート打設を行った結果、従来と比較して、生産性が約20%向上するだけでなく、安全性も向上した。
●開発の背景
ダム工事は施工エリアが広いため、オペレータがタワークレーン上の運転席へ移動するのに多くの時間を要する。また、一度運転席に入ると、そこからの移動が容易ではないため、オペレータは作業開始から終了まで終日運転席で過ごすことになり、作業環境の改善が求められていた。
さらに、タワークレーンで大量のコンクリートを繰り返し長時間連続で運搬するため、オペレータに負荷がかかっていた。また、使用する大型タワークレーンは、吊荷のワイヤーが長く、荷振れの制御が難しいため、コンクリート打設1回あたりのサイクルタイムは、オペレータの技量により変動が生じていた。
近年は、オペレータの高齢化が進んでいることや、技量の高いオペレータを確保することが困難な状況になっていることも課題になっている。
●各システムの概要
●1:タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo」
地上に設置した専用コックピットから、従来のタワークレーンの運転席と同等の作業性で遠隔操作が可能。コックピットには、運転席と同様に操作レバーやフットスイッチを配置しており、タワークレーンに設置された複数台のカメラ映像や、荷重などの動作信号・異常信号を表示する各種モニターが備え付けられている。また、タワークレーン側に設置されたジャイロセンサーにより、従来と同じように風や荷運びで生じるタワークレーンの細かな振動を感じながら操作することができる。
●2:タワークレーンの「自動運転システム」
最適な運搬ルートを記憶させ、それを再現できる「ティーチングプレーバック方式」を用いており、人が運転する場合と比べ、習熟度・身体的疲労度・天候等にも左右されることなく、長時間連続での繰り返し作業が可能となっている。
●3:車両運行管理システム「スマートG-Safe」
GNSS(衛星測位システム)によって得られた位置情報をもとに、工事用車両や通行人の安全管理・運行管理をリアルタイムに行うことができる鹿島が開発した車両運行管理システム。タワークレーンに適用することで、クレーンとその周辺で作業する人が双方で位置関係を確認することができる。
●導入効果
成瀬ダムでは、上記3つを組み合わせたことで、以下のようなタイムロスの削減・サイクルタイムの安定・打設速度の均一化を実現し、生産性が約20%向上するだけでなく、安全性も向上させることができたとしている。
●1:「TawaRemo」
オペレータの移動にかかる時間を一日あたり65分短縮し、移動時間の短縮によりクレーン稼働時間が約16%向上。また、高所に位置する従来の運転席への昇降が不要になり、作業環境も大幅に改善。さらに、従来の運転席での操作と同等の作業能力を発揮できることを確認した。
●2:「自動運転システム」
霧による視界不良などの作業条件に左右されることなく、長時間連続でも自動運転により最適なルートかつ安定したサイクルタイムでコンクリートを打設可能。
一回あたりの作業時間は、従来と比べて平均で約30秒短縮し、コンクリートの平均打設速度が約5%向上。さらに、自動運転中オペレータはクレーン操作から解放されるため、作業状況の監視に集中することができ、安全性も向上している。
●3:「スマートG-Safe」
タワークレーン本体に搭載することで、作業時の吊り荷直下(直径6m)の立ち入り禁止エリアと、タワークレーンのブームや技能者等の位置の干渉状況をオペレータはコックピットに設置した画面で、技能者はスマートフォンで、双方がリアルタイムに確認できるようになり安全性が向上した。
●今後の展開
鹿島は今後、本システムを橋梁工事など、ダム以外の工事にも広く展開できるよう、技術検討を進めるとしており、将来的には、複数台のクレーンを一人のオペレータが遠隔地から運転できるシステムの実現を目指し、さらなる作業効率化と働き方改革を推進していくとしている。
●工事概要
工事名
成瀬ダム堤体打設工事(第2期)
工事場所
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川地内
発注者
国土交通省東北地方整備局
施工者
鹿島・前田・竹中土木特定建設工事共同企業体
工事諸元
台形CSGダム、堤高 114.5m、堤頂長 755m、堤体積 485万㎥、貯水量 7,850万㎥
工期
2023年6月〜2026年12月
「TawaRemo」は、オペレータの作業環境の改善と生産性向上を目的に、鹿島、竹中工務店、アクティオらが共同開発したシステムで、2020年から建築工事を中心に導入を進めてきた。
●開発の背景
ダム工事は施工エリアが広いため、オペレータがタワークレーン上の運転席へ移動するのに多くの時間を要する。また、一度運転席に入ると、そこからの移動が容易ではないため、オペレータは作業開始から終了まで終日運転席で過ごすことになり、作業環境の改善が求められていた。
さらに、タワークレーンで大量のコンクリートを繰り返し長時間連続で運搬するため、オペレータに負荷がかかっていた。また、使用する大型タワークレーンは、吊荷のワイヤーが長く、荷振れの制御が難しいため、コンクリート打設1回あたりのサイクルタイムは、オペレータの技量により変動が生じていた。
近年は、オペレータの高齢化が進んでいることや、技量の高いオペレータを確保することが困難な状況になっていることも課題になっている。
●各システムの概要
●1:タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo」
地上に設置した専用コックピットから、従来のタワークレーンの運転席と同等の作業性で遠隔操作が可能。コックピットには、運転席と同様に操作レバーやフットスイッチを配置しており、タワークレーンに設置された複数台のカメラ映像や、荷重などの動作信号・異常信号を表示する各種モニターが備え付けられている。また、タワークレーン側に設置されたジャイロセンサーにより、従来と同じように風や荷運びで生じるタワークレーンの細かな振動を感じながら操作することができる。
●2:タワークレーンの「自動運転システム」
最適な運搬ルートを記憶させ、それを再現できる「ティーチングプレーバック方式」を用いており、人が運転する場合と比べ、習熟度・身体的疲労度・天候等にも左右されることなく、長時間連続での繰り返し作業が可能となっている。
●3:車両運行管理システム「スマートG-Safe」
GNSS(衛星測位システム)によって得られた位置情報をもとに、工事用車両や通行人の安全管理・運行管理をリアルタイムに行うことができる鹿島が開発した車両運行管理システム。タワークレーンに適用することで、クレーンとその周辺で作業する人が双方で位置関係を確認することができる。
●導入効果
成瀬ダムでは、上記3つを組み合わせたことで、以下のようなタイムロスの削減・サイクルタイムの安定・打設速度の均一化を実現し、生産性が約20%向上するだけでなく、安全性も向上させることができたとしている。
●1:「TawaRemo」
オペレータの移動にかかる時間を一日あたり65分短縮し、移動時間の短縮によりクレーン稼働時間が約16%向上。また、高所に位置する従来の運転席への昇降が不要になり、作業環境も大幅に改善。さらに、従来の運転席での操作と同等の作業能力を発揮できることを確認した。
●2:「自動運転システム」
霧による視界不良などの作業条件に左右されることなく、長時間連続でも自動運転により最適なルートかつ安定したサイクルタイムでコンクリートを打設可能。
一回あたりの作業時間は、従来と比べて平均で約30秒短縮し、コンクリートの平均打設速度が約5%向上。さらに、自動運転中オペレータはクレーン操作から解放されるため、作業状況の監視に集中することができ、安全性も向上している。
●3:「スマートG-Safe」
タワークレーン本体に搭載することで、作業時の吊り荷直下(直径6m)の立ち入り禁止エリアと、タワークレーンのブームや技能者等の位置の干渉状況をオペレータはコックピットに設置した画面で、技能者はスマートフォンで、双方がリアルタイムに確認できるようになり安全性が向上した。
●今後の展開
鹿島は今後、本システムを橋梁工事など、ダム以外の工事にも広く展開できるよう、技術検討を進めるとしており、将来的には、複数台のクレーンを一人のオペレータが遠隔地から運転できるシステムの実現を目指し、さらなる作業効率化と働き方改革を推進していくとしている。
●工事概要
工事名
成瀬ダム堤体打設工事(第2期)
工事場所
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川地内
発注者
国土交通省東北地方整備局
施工者
鹿島・前田・竹中土木特定建設工事共同企業体
工事諸元
台形CSGダム、堤高 114.5m、堤頂長 755m、堤体積 485万㎥、貯水量 7,850万㎥
工期
2023年6月〜2026年12月