「スタンディングデスク」はそれほど健康に良いわけではないらしい
BUSINESS INSIDER 2024年10月22日掲載の記事より転載
・スタンディングデスク市場は、今後 10 年間で着実に収益を伸ばすと予想されている。
・ある研究によると、スタンディングデスクは心臓病などの心血管疾患のリスクを軽減するのに役立たない可能性があるという。
・1日2時間以上立ちっぱなしでいると、循環器系の病気のリスクが高まる可能性があることが分かっている。
新型コロナウイルスのパンデミックが始まって数カ月後、夫はコンバーチブルのスタンディングデスクを買ってくれた。我々は2人とも自宅で仕事をしていて、毎日一緒にジョギングする以外は、それぞれの仕事場のコーナーで何時間も前かがみになって仕事をしていた。
ある時から、Zoom会議中に背筋が伸びている同僚が増えた。我々は新しいスタンディングデスクが姿勢を改善し、1日中座りっぱなしでいることを防いでくれるかについて、話をしたりしていた。
このトレンドはまだ衰えていない。市場調査会社グローバル・マーケット・インサイツ(Global Market Insights)は、スタンディングデスクの市場規模は、2023年に78億ドル(約1兆1655億円)に達し、今後10年間で毎年5.5%の成長が見込まれるとしている。オートノマス(Autonomous)、フレキシスポット(FlexiSpot)、アップリフト(Uplift)となどの主要販売業者は、毎年数百万ドルの収益を上げている。オートノマスはブランディング資料の中で、「これらのデスクは動きを促進することでアクティブな状態を維持し、痛みを予防するのに役立つ」と提案している。
しかし、しばらくするとコンバーチブルのデスクを高くするボタンを押す代わりに、朝のトレーニングの後は自分が1日中座っていることに気付いた。同僚の中には、 3時間、スタンディングデスクで立って仕事して元気になったという人もいたが、私はそうではなかったのだ。
2024年10月17日に発表された研究が私の疑問に対する答えを出してくれた。結局のところ、スタンディングデスクを使用して、より活動的になり、健康を向上させたいなら、頻繁に立ったり座ったりするなど実際にもっと動くことが大切なのだという。
研究者は、イギリスの成人8万人以上のデータを用いて、単に立っているだけでは必ずしも血液循環を良くするわけではないことを発見した。また1日中、動かないで立ちっぱなしの状態でいると、循環器系の問題のリスクが高まる可能性もあると示唆している。
2時間以上の座りっぱなし、立ちっぱなしは健康に良くない可能性がある
シドニー大学(University of Sydney)の研究者が率いる研究チームは、人々の遺伝、ライフスタイル、健康に関する情報を収めた大規模なデータベースであるUKバイオバンク(UK Biobank)の成人8万3013人のデータを調査した。参加者に1週間、手首に加速度計を装着し、その動きを追跡した。
この研究の著者たちは、1日10時間から12時間座っていることは、心血管疾患や静脈瘤などの起立性循環器疾患のリスク増大と関連していると結論づけている。
一方、1日2時間立っていることは、心不全、脳卒中、心臓病といった心臓疾患のリスクは低下せず、心臓血管の健康にはあまり影響がないようだった。
この研究では、2時間立ちっぱなしでいると、起立性循環器疾患のリスクが高くなり、30分ごとに11%上昇することが分かっている。著者は、毎日長時間立ちっぱなしでいることは、静脈潰瘍や静脈の腫れなど長期的な血液循環の問題につながる可能性があることを示唆している。
1日を通して動くのがベスト
高さ調整機能付きのスタンディングデスクのようにデスクの高さを調節し、立ったり座ったりを切り替えられるものを使えば、1日中同じ姿勢でいなくても仕事をすることができる。また、デスクの下にトレッドミルを置くなどホームオフィスをアップグレードすることで、1日の中で運動を取り入れることが簡単になる。
他の研究者らは、長時間座っていることによる健康リスクを相殺するために1日22分のウォーキングを推奨しており、これは家事や階段の上り下りに組み込むことができる。
また、スタンディングデスクを実際に立って使わないことに(私のように)罪悪感を感じている人は、毎日椅子から離れて歩く時間さえ取れば、大きな健康上のメリットを逃すことはないと信じていいだろう。
Photo: martin-dm/Getty Images